大阪の天満橋司法書士・行政書士事務所のブログ

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こんにちは。司法書士・行政書士の中谷です。


またまた,ご無沙汰をしてしまいました。

気がつけば,お彼岸も過ぎ,秋風が吹く季節となってしまいました。


最近は,特に面白い事件や失敗(?)もなく,ブログネタに困っておりましたところ,先日,こんな登記事件に当たりましたのでご報告申し上げます。


通常,不動産を単独で所有している人が,当該不動産を売却した場合,登記の目的は『所有権移転』と記載されます。

一方,不動産を複数人で共有している状態で,その内の一人が持分を売却した場合,登記の目的は『何某持分全部移転』となり,共有者全員が一度に持分を売却した場合には,登記の目的は『共有者全員持分全部移転』となります。


「へぇ~,そんなん,どうでもええんちゃうん。」との声が聞こえてきそうですが,大昔は,『共有者全員持分全部移転』と記載すべきところを『所有権移転』と記載しただけで事前補正,つまり法務局まで出向いて申請書を補正するまで登記がストップしたりしていました。


ところで,今から10年ほど前,ちょうど登記が簿冊からコンピュータ化に移行していたころのことですが,単独所有の不動産を売却し,登記の目的を『所有権移転』と記載して登記申請をしたところ,法務局から電話が入りました。


法務局職員:「実は…,所有者の方が,持分を2回に分けて取得されているんですが…。」

私:「ええ,知ってますよ。それが何か?」

法務局職員:「実は…,1回目と2回目で登記した時の権利者の字体が違うんですよねぇ。」

私:「えっ?ホンマですか?」
(しまった!所有権登記名義人の更正登記を飛ばした!えらいこっちゃ!)

法務局職員:「ええ。同一文字扱いなので,更正登記とかは必要ないんですが…。実は,コンピュータ上は,先に持分を取得したときと,後で持分を取得したときで権利者の字体が異なるので,別人扱いになってしまうんですよ。」

私:「ん?ん?と言いますと?」

法務局職員:「登記の目的が『所有権移転』ではなくて『共有者全員持分全部移転』になるんですよ。で,申し訳ないんですが,補正に来ていただけますか?」

私:「わ,分かりました。」


例えば,上の事案で言うと,1回目に持分2分の1を取得したときの権利者の名前が『田中恵子』(仮称)で2回目に残りの持分2分の1を取得したときの権利者の名前が『田中惠子』(仮称)となっていた場合です。

分かりますか?『恵』と『惠』。このように僅かに字体が異なるだけですが,コンピュータは融通が利きませんので,別人として扱われると言うことです。

すなわち,コンピューターは,『田中恵子』と『田中惠子』の2人の共有状態と認識しているため,登記の目的を『所有権移転』した場合には弾かれてしまうのです。

ちなみに,このとき,前面道路持分も2度に分けて取得されていたので,そちらの登記の目的も『田中恵子及び田中惠子持分全部移転』となりました。ややこしい。


昔は,どの司法書士事務所にも「誤字俗字・正字一覧表」置いてあり,登記簿の字体とにらめっこしたものです。

これ↓
中身はこんな感じ。

大阪の天満橋司法書士・行政書士事務所のブログ-誤字俗字・正字一覧表②


同一文字扱いなら,問題ないのですが,別字扱いの場合は,所有権移転登記の前に所有権登記名義人表示更正登記を申請しなければなりません。


そして,今回も同じような事案に当たりましたが,あれから10年も経っているのだから,コンピューターも少しは進化したかと思い,法務局に問い合わせてみたところ,変わりはないとのこと。

でも,今回は,法務局の職員さんが「登記の目的は,別に『所有権移転』で構いませんよ。」と優しく言ってくれました。

10年経って,コンピューターは変わってなくても,法務局の職員の対応は変わりました。



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