久しぶりのイスラエル留学経験者インタビューです。

 

イスラエルは農業の分野でも最先端の技術を持っていますが、イスラエルのヘブライ大学とベングリオン大学で、学んでこられたK.Tさんへのインタビューです。

 

1) イスラエル留学中、通っていた大学では何を学びましたか?

 

K.Tさん

私はイスラエルのヘブライ大学の農学部で勉強をしました。オリーブについてのみ学ぶ授業やブドウとワインのことだけを学ぶ単位、ユダヤ教の食事規定など、イスラエルにしかないユニークな授業もあります。

 

ヘブライ大学

 

修士課程ではベングリオン大学砂漠研究所という、砂漠の中にあるキャンパスで学びました。ここは、砂漠の農業だけでなく、エネルギー、住宅や都市設計など、砂漠開発に関するあらゆる分野が研究されている場所です。

私はここで、年に100mm程度しか降らない雨水のみで農業を行う技術の研究をしていました。

ベングリオン大学砂漠研究所

 

 

2) なぜイスラエルでそのことを学ぼうと思ったのですか?

 

K.Tさん

私が小学生くらいの頃、環境問題が取り上げられることが多く、耳にする機会が多かったのを覚えています。そのような中で、砂漠化問題に取り組むことをしてみたいと漠然と思っていました。イスラエルに行ったことがある方から、イスラエルは農業が進んでいて、砂漠のど真ん中で農業をしている話をお聞きました。そのような国があるなら行ってみたいなと想像を膨らませていました。

19歳の時にイスラエルに留学して、語学の勉強から始めました。勉強の合間にいろいろな場所を訪ね、砂漠の農場にも行きました。驚いたことに砂漠で農業をしているだけでなく、魚の養殖まで行っていました。

荒野に植樹されたオリーブの木

 

砂漠の中の養魚場

 

全く不可能と思えるようなことに対して、知恵と工夫で道を切り開いていることにとても感動し、私もイスラエルで農業を勉強したいと思いました。

イスラエルの大学生はみんな本気で学びに来ています。授業では活発に質疑応答が行われます。私は最初授業についていくのは大変でしたが、イスラエルの友人が何かわからないことや困っていることはないかと声をかけてくれ、何とか乗り切ることができました。

1年目前期の授業で、授業で話されていることが全く理解できない単位がありました。あとから、最新農業の傾向と農業経済の仕組みという内容だったことがわかりましたが、授業が進むにつれて、絶望感が増していきました。

テスト前になって、7突然ペーパーテストの代わりにレポート提出になり、しかもグループで1つのレポートの提出でもよいことなりました。そして自分自身は何も理解していないにも関わらず96点を取ることができました!

このような奇跡は1度だけでしたが、おかげで落第を免れて修士まで進むことができました。

 

砂漠研究所は砂漠の中にあるため、研究所の敷地の外は360度砂漠です。

イスラエルの初代首相ダビッド・ベングリオンは、国土の60%を占める砂漠を開拓することがイスラエルに絶対必要である、と言って、首相を辞して自ら砂漠の開拓村へ移住しました。

人が何もない砂漠の中でそれなりの生活をしようと思うと、衣食住、電気、水、インフラなどが必要になりますが、砂漠の厳しい条件を資源と捉えて研究が進められています。

厳しい日差しは太陽エネルギーが豊富である、雨が降らない乾燥した空気はカラッと過ごしやすい環境である、栄養源に乏しい土壌は病気も少ないということである、目からうろこがいくつも落ちる思いでした。私と同じ年齢位で、エネルギー関連の研究をしていたイスラエル人の友人も、自分たちの研究はイスラエル国にとっても重要だし、世界に貢献できることだと熱く語ってくれました。

砂漠の研究を通して、困難をチャンスに変え、失敗を恐れず挑戦していくことを肌で感じて学べたことはとても力になりました。

 

 

3) 日本へ帰ってから、現在の仕事をするようになったきっかけは?

 

K.Tさん

日本に帰国してから、大学の研究室に努めたり、花き生産をしている農業法人に努めたりしました。その後、イスラエルのエルアル航空に勤めている知人から今の会社を紹介していただきました。地方の中小企業ですが、イスラエルと直接繋がるビジネスをしています。

 

 

4) イスラエル関係の仕事をしていて、良いこと、大変なことなどのエピソード

 

K.Tさん

仕事では藻類の培養や製品開発に携わっています。仕事の中でイスラエル人と直接話して交渉をしたりすることもあります。大学の学友と違って仕事相手のイスラエル人は、世界中で迫害されながら生き抜いてきた民族性もあってか、クセも主張も強かったりします。

ですが、交渉の合間にヘブライ語で雑談をしていると、相手も心を開いてくれます。交渉の時には見えなかった相手の本音を聞けたりすると、ヘブライ語を勉強していてよかったと思います。

藻類は新品種を手探りで培養することがあります。何もわからなくて失敗することも多くありますが、イスラエルの開拓魂を思い出しては、挑戦を繰り返しています。

ある時、培養していた藻類にどこからか別の藻類が混じってしまい、目的の藻類が全滅してしまったことがありました。しかし、混ざってしまった藻類が別の用途で役に立つことがわかったのです。私にとって困難がチャンスに変わった瞬間でした。

 

日本とイスラエルは今年国交70年の節目を迎えました。今ではハイテク分野やスタートアップ分野などで日本とイスラエルの交流が盛んになってきています。イスラエルで学んだ経験が、日本とイスラエルの関係を民間レベルでも深めることができるよう、貢献していきたいと思います。

 

貴重なお話をありがとうございました。

今後とも日本とイスラエルの関係を深めていただけますよう、お願いいたします。