1. ファニー・パワー、レディ・ジェシン
Fanny Power, Lady Gethin (Turlough O’Carolan), Kilcoy
18世紀アイルランドのハープ奏者カロラン Turlough O'Carolan (1670-1738) の作品から。
ファニー(フランセス)・パワーはアイルランド西部ゴールウェイ、ラフリー Loughrea のパワー家の人物。1732年にリチャード・トレンチと結婚した。
この曲は18世紀アイルランドのハープ奏者、チャールズ・バーン Charles Byrne (c.1712-aft.1810) とアーサー・オニール Arthur O’Neill (1734?-1816) のレパートリーでもあった。
レディ・ジェシンはアイルランドの歴史家、民謡収集家パトリック・ジョイス Patrick Weston Joyce (1827-1914) の手稿譜に見られる。この曲には直接カロランのアトリビュートが与えられていないが、音楽学者オサリヴァン Donal O'Sullivan (1893-1973) が、その作品の音楽的様式からカロランの作品であると推定している。彼はこの曲が贈られた人物をスライゴー州の長官 リチャード・ジェシン Richard Gethin (1698-before 1774) の妻マーガレット (1725年に結婚) であると推測している。
2. ジョン・ジョーンズ
John Jones (Turlough O’Carolan) 2:46, Rose
これもカロランの作品。
ハープ奏者デニス・ヘンプソン Denis Hempson (1695-1807) のレパートリーだった。
曲が贈られたジョン・ジョーンズについては諸説ある。
一説によると、仕立屋でカロランのためにスーツを仕立てた返礼にこの曲を作ってもらったと言われる。手稿譜には「メヌエットのテンポで」と書かれている。
3. ロード・ダンディーのラメント
Lord Dundee's Lamentation killed at the Battle of Killikrankie (Scottish) 1:29, Rose
1689年7月27日にジェームズ2世を支持するスコットランド軍(ジャコバイト)と英国のウィリアム3世軍の間でキリクランキーで戦闘が起こった。このとき、ダンディーの貴族ジョン・グレアム John Graham of Claverhouse,(c.1648-1689) はジャコバイトの反乱軍について戦っていたが、
流れ弾に当たって死んでしまった。彼のために書かれたラメント。
"A Collection of Ancient Scots Music for the Violin, Harpsichord or German Flute, Edinburgh: c. 1775" compiled by Daniel Dow.から。
ちなみに、スライゴーのハープ奏者コネランが「キリクランキーの戦い」という曲を書いている。
4. 森の花
Flower O' the Forest (Scottish) 0:58
5. 恋人を亡くしたアイルランド娘のラメントのストラススペイ
An Irish girl's lamentation for the loss of her lover; Strathspey (Scottish) 1:17, Rose
映画≪ピアノレッスン≫(1993) のサウンドトラック(マイケル・ナイマン編曲)で使われていたスコットランド音楽。森の花は1630年頃に編纂されたマンドーラのためのタブラチュア『スキーン手稿譜 Skene MS.』に見られる。ストラススペイは、『マクリーン=クレファン手稿譜 MacLean=Clephane MS』(1816)に見られる。
6. 白い岩のダヴィデ
Dafydd y Garreg Wen (David Owen) 1:48, Rose
ウェールズ、カーナーヴォンの盲目のハープ奏者オウェン David Owen (1712-1741) が死の床で作曲したといわれている曲。彼は29歳で亡くなった。ペダルハープでもよく演奏される。
7. 若者の夢, ダニーボーイ
Youngman's Dream, Danny Boy (Irish) 4:02, Rose
「若者の夢」はハープ奏者デニス・ヘンプソンが演奏していた曲。
「ダニー・ボーイ」あるいは「ロンドンデリーのエア」は、ジェーン・ロスが老フィドル奏者から書きとった曲が元となっている。老フィドル奏者の父は老ハープ奏者からこの曲を学んだとされる。このハープ奏者はデニス・ヘンプソンだと考えられている。
8. イニシア
Inis Oirr (Thomas Walsh) 3:43, Rose
イニシアはアイルランド西部のアラン諸島の中の島で「東の島」の意。
よく演奏される伝統音楽。
9. チャンター, ロード・メーヨー
Chanter, Lord Mayo (Irish) 3:27, Kilcoy
チャンターはアイルランドで演奏されるイリアンパイプ(バグパイプの一種)のメロディーを演奏する管のこと。エドワード・バンティング Edward Buntin (1773-1843) の曲集(1840)に見られる。
ロード・メーヨーは1724年にダブリンで出版された Neal, John/William (1724). A collection of the most celebrated Irish tunes. Dublin, に見られる。作者については、サディ・キーナン、ディヴィド・マーフィー、カロランなど諸説ある。ハーディマンによるとこの曲が書かれた相手は第6代メーヨー子爵のシオボルド・バーク Theobald Burke (1681-1741) だという。
10. あの晩を覚えている?
Do you remember that night? (Irish) 1:43, Rose
アイルランドのイリアンパイプス奏者トマス・オカナン Tomas O Canainn が編纂したTraditional Slow Airs of Ireland (1995) から。
ジョイスの Ancient Irish Music (1872) にも An cumhain leatsa an óidhche úd? というタイトルで見られる。ジョイスはこの曲をコークとリムリックの州境のCoolfree の農夫 Michael Dinneen がアイルランド語で歌った歌から採譜した。
この悲しい歌は若い寡婦によって作られたものである。彼女の夫は婚礼の後、親戚を見送るために船でシャノン川を渡っていたときにおぼれ死んでしまった。
11. ニール・ガウの2人目の妻の死を悼むラメント
Niel Gow's 'Lament for the Death of his Second Wife (Niel Gow) 3:17, Rose
スコットランドのフィドル奏者ニール・ガウ (1727-1807) の作品。彼はスコットランドでもっとも有名なフィドル奏者。最初の妻マーガレットの間には、ナサニエルなど後にフィドル奏者として大成する子どもが生まれた。妻が亡くなった後、ガウは別のマーガレットという名の女性と再婚する。1805年に彼女が亡くなった時に書いた曲。
12. 流れよ、わが涙
Flow My Tears (John Dowland) 3:24, Rose
英国のリュート奏者ジョン・ダウランド John Dowland (1563-1626) の代表作。
彼が活躍していた16世紀後半から17世紀前半は金属弦アイリッシュ・ハープの黄金時代であり、
当時流行していたダウランドの作品が、アイリッシュ・ハープで演奏されていたと考えても不自然ではない。彼が仕えていたジェームズ1世の宮廷には、コーマック・マクダーモット Cormack MacDermott (d.1618) というアイルランド人ハープ奏者が雇われており、彼らは互いに面識があった可能性がある。
13. バリーシャノンの鷹
Hawk of Ballyshannon (Rory Dall O’Cathain/Turlough O’Carolan) 1:49, Kilcoy
ダウランドと同時代に活躍していたアイルランド北部のハープ奏者ローリー・ダル・オカハンの作品という説もあるが、おそらくカロランの作品であろう。
別名 Katherine O'More としても知られる。カロランが彼女とメーヨーのチャールズ・オドネルとの婚礼の際に作曲したともいわれる。
14. ワイルド・ギース, リムリック・ラメンテーション
Wild Geese, Limerick Lamentation (Myles O’Reilly) 6:22, Rose
1689年から1691年にかけて、アイルランドを戦場として「ウィリアマイト戦争」が起こった。ジェームズ1世を支持していたアイルランドは、英国のウィリアム3世に敗北する。
アイルランド軍は、ジェームズ2世がフランスに亡命したのちにも、パトリック・サースフィールド Patrick Sarsfield (c.1660-1693) の指揮下、アイルランド南西部の町リムリックで最後まで抵抗を行っていた。ついに彼らは降伏するが、サースフィールドは1万2千の兵士を連れてフランスに亡命した。彼らは「ワイルドギース」と呼ばれる傭兵となり、フランス王ルイ14世やマリア・テレジアの軍隊に加わった。
リムリック・ラメンテーションは、キャヴァンのマイルス・オライリー Myles O'Reilly の作とされるが、スライゴーのハープ奏者トマス・コネラン Thomas Connellan もよく演奏しており、「コネランが盗んだ曲」と呼ばれていた。
Neal, John/William (1724). A collection of the most celebrated Irish tunes. Dublin, に記録されており、18世紀の盲目のハープ奏者エクリン・オカハン Echlin O'Cathian (1729-aft. 1791) やパトリック・クイン Patrick Quinn (c.1745-aft. 1810) のレパートリーでもあった。