大学礼拝金属弦アイリッシュ・ハープとハイランドパイプ終了 | アイリッシュ・ハープ研究家、奏者、制作者、音楽教育者 寺本圭佑

アイリッシュ・ハープ研究家、奏者、制作者、音楽教育者 寺本圭佑

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本日2013年5月27日(月)明治学院白金チャペルの大学礼拝での演奏が無事終了いたしました。

今回はゲストにハイランドパイプ奏者の中村明博さんをお招きしました。
パイプともゆかりの深い曲を演奏しました。

少し時間が余ってしまったので、追加でチャンター~ロードメーヨーを演奏し、中村さんにも何曲か演奏していただきました。音量の差がとても大きかったのですが、思ったよりもよく調和していた気がします。

参考までに本日のプログラムを転載します。

【金属弦アイリッシュ・ハープ】
● ワイグトン伯のラメント Earl of Wigton’s lament 
スコットランド、パースシャーのフィドル奏者ダニエル・ダウ編纂の曲集 (1775) に収録。このラメントは1619年にスコットランドの貴族、初代ワイグトン伯のジョン・フレミング (1567-1619) のために書かれたのではないかといわれる。この曲はバグパイプで奏されるピブロッホの形式によって書かれているが、元来はハープで演奏されていたと考えられている。

● 老バグパイプ奏者の歌 Caniad y Gwyn Bibydd
 1613年にウェールズのハープ奏者ロバート・アプ・ヒューによって編纂された楽譜に収録。その音楽形式も、バグパイプで演奏されるピブロッホに類似する点もあり、古い時代にハープとバグパイプが似たようなレパートリーを共有していたことを示す貴重な資料となっている。

【バグパイプ】
●ハイランドカテドラル Highland Cathedral
 ハイランドパイプで演奏されるもっとも有名な曲。この曲が作られたのは意外と新しく、1982年にUlrich Roever と Michael Korb によって作曲された。婚礼の際にもよく演奏される。

●アメージンググレイス Amazing Grace
 イギリスの奴隷商人ジョン・ニュートン(1725-1807) が1772年に作詞した讃美歌。
 
 金属弦が張られたアイリッシュ・ハープは今から約千年前の11世紀からアイルランドで演奏されていました。この楽器はいつしかアイルランドを象徴する紋章にまでなりました。現在でもアイルランドのユーロ効果には、ハープの絵が描かれています。この楽器はアイルランドだけではなく、同じ文化を共有していたスコットランドでも好んで演奏されていました。
 スコットランドではハイランドパイプと呼ばれるバグパイプが好んで演奏されるようになり、一方でアイルランドではイリアン・パイプという小型のバグパイプが演奏されるようになりました。
 アイリッシュ・ハープとバグパイプは同時に演奏されていたという記録も残っており、同じレパートリーを共有していたと考えられています。シュウグリーのグラントやウィリアム・マクマーヒーらは、18世紀スコットランドのハープ奏者であり、同時にバグパイプ奏者でした。このような人物によってハープとバグパイプのレパートリーが共有化されていった可能性が考えられます。
 ≪ワイグトン伯のラメント≫という曲は、「ピブロッホ(バグパイプ音楽)」あるいは「キョールモール(大音楽)」と呼ばれる種類の音楽ですが、元々は金属弦ハープのための音楽だと考えられています。
 スコットランドスカイ島のダンヴェガン城にはロドリック・モリソンという有名なハープ奏者が雇われていました。同時にここではマクリモンズという高名なバグパイプ奏者の一族も雇われていました。おそらく、宮廷の中で音楽的な交流が行われていたものと考えられます。
 ハープ奏者とバグパイプ奏者は必ずしも仲が良かったわけではありませんでした。たとえば、アイルランド南部ケリー州のオドノー家にはサディ・オコナーという盲目のバグパイプ奏者が雇われていました。ここにはハープ奏者も雇われていましたが、彼はオコナーに嫉妬してバグパイプを破壊してしまったという逸話が残されています。
 ≪老バグパイプ奏者の歌≫という曲はその名の示す通り、バグパイプ音楽との関連を示唆しています。この曲は1613年にウェールズのハープ奏者ロバート・アプ・ヒューが編纂した『ロバート・アプ・ヒュー手稿譜』という楽譜に記録されています。この楽譜は、通常の五線譜ではなくアルファベットを用いたタブラチュア(奏法譜)で記譜されており、現在でも完全に解読されていません。今年はこの楽譜が作られてからちょうど450年の年にあたります。
 金属弦ハープは19世紀にその伝統が途絶えてしまいましたが、バグパイプに残されている音楽から、在りし日のハープ音楽を部分的に復元しようとする試みが行われています。

アイリッシュ・ハープ奏者、研究者 寺本圭佑
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