84【バック・トゥ・ザ・フューチャー】NHKで特番をやっててそれを観てたらとても観たくなったのでNetflixにて。このシリーズは円盤持ってないのよ。
'85年の作品。名作オブ名作。ベスト映画に選んでる人も多いですよね。ぼくもベストととまでは言わないけど(アクション作品が好きな上位を占めるから)すごく好きな作品。何回観たかわかんない。放映されるたびに観てるから。
色褪せないですね。
ロバート・ゼメキス監督の世界観と脚本とプロットが完璧に近い完成度やから。何回観ても普通におもしろい。特番の中でも言われてたけど、本シリーズは色んな作品をオマージュしてるけど結果的にそれ以降のたくさんの映画とかにオマージュされるほどの作品になった。ホンマそうやと思う。
この映画の1番好きで凄いと思うポイントは、シリーズを通して天丼を繰り返すネタ振りがたくさん盛り込まれてるし結果的にその振りが続編で回収されててそれがちゃんと成立してておもしろい事。ただのギャグパートに終わらずにちゃんとストーリーに溶け込んでる。
タイムスリップして変な形で母親に会って父親がダメダメでビフに上からドヤられて結果ビフにお約束の罰が下る。
毎回同じ事してるやん。でもそれがちゃんと成立してる。作ってる側が楽しんで作ってる感じ。早送りするシーンがほとんどないのも凄いと思う。全てが振りになってたり何かが仕込んであったりほとんどが魅せ場になってる。観た事あって結果知ってて観てもちゃんとおもしろい。アラン・シルヴェストリの音楽もいいし。
個人的にはPART2の終わり方が芸術の域にいってるくらい凄いと思う。PART1のエンディングをこれ以上ないくらい上手く利用してちゃんと風呂敷をキレイに結べたのに、それに足しても流れやシナリオも抜群にスムーズで一切破綻してない。ホント凄い。誰が観ても続きを観たくなる終わり方。3部作でPART3に繋げるPART2は数多くあるけど飛び抜けてキレイな繋げ方やと思う。
字幕版で観たけど吹替版でも十分楽しめる。今回のNetflix版ではマーティの声は山寺宏一さんやけど個人的にはテレ朝版の三ツ矢雄二さんバージョンの方が馴染みが深い気がする(山寺さんでも違和感はない。馴染みの問題)。でもドクの声はこの吹替版の青野武さんの声が聞き馴染みある。このドクの声で日本で愛着が湧いてヒットしたってのもあるんじゃないかな。
過去の映像や音楽が使われる番組やコーナーでは必ずと言っていいくらいテーマ曲が使われますよね。日本人のほぼ全員が聴いたことあるんじゃないかな。ぼくは毎週日曜日にとあるラジオ番組のコーナーテーマとして流れるのを聴いてるから古臭さとか一切感じないけど。あと、細かすぎて伝わらないモノマネのテーマ曲でもある。
◎
85【バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2】続けてNetflixにて。個人的にはシリーズ通してこの②が1番好き。作品の完成度は①の方が完璧と言えるくらい断トツですごい。ただ、プロットとかは②が1番凝ってると思う。例のNIKEのクツとかホバーボードとか。未来を描いてるから発想の自由度が高いですよね。その未来(2015年)も今となっては過ぎた過去になるけど2023年より未来っぽいし今観てもワクワクする。あと、ただでさえカッコイイ〈デロリアン〉が飛行形態になったらもっとカッコイイ〈デロリアン〉になってる。内容的には1作目よりもタイムパラドックス感はグッと増してる気がする(本人同士がハチ合わせするシーンはしれっとギャグシーンになっちゃってるけど)。
何度もドクが『デロリアンを壊す』て言ってた懸念が具現化されてるストーリー。大筋の軸が一切ブレてない。ホントによく考えて練られてる。
ここまでハッキリと前作を素材にしてなんの歪みもなく成立させてるのがすごい。こんなに続編の強みを遺憾なく発揮できてるのも珍しい。なにより、あの完成度の①を素材やフリに使っちゃう贅沢さよ。①を観てなくても楽しめるけど①を観たら何倍も楽しめるように観た人にたくさんのギフトが込められてる。②を観たら改めて①をまた観たくなる。
マイケル・J・フォックスが何役も演じたりする遊び心が当時の勢いを感じさせる気もしますね。まぁ①のジョージ(お父さん)役のクリスピン・ヘリオン・グローヴァーが続投せずに離脱したってのもその理由なのかもしれないけど。
街灯の手前までホバーで飛んでて街灯を通過するタイミングで走行に切り替わる撮影トリックが今でこそチープに見えるかもしれないけどとても上手く使われてる。
『HELLO! ANYBODY HOME?』のビフ家伝統の台詞のファンなのでちゃんと出てきた時は嬉しかった。『I'LL BE BACK』(ターミネーター)、『Yippee-ki-yay, motherfucker』(ダイハード)、『MAY THE FORCE BE WITH YOU』(SW)とかに匹敵するくらい好きな台詞。
このシリーズは一度は観ておいた方がいいと思う。いや、マジで。ジャンルの好き嫌いはあると思うし感想の良き悪きもあるでしょうが。ただ、観ておく事で必ず観た人の財産になる。ぼくの好きな映画(ダイハード、プロジェクトA、その他)でこんな言い方するシリーズはあまりない。まぁ、好評で続編が作られたシリーズと最初から〈3部作〉として制作されたシリーズとの違いはあるけど。ただ単に『おもしろい』だけじゃない。単作で薦めたい作品はいくつかあるけど《シリーズを通しての完成度》が素晴らしい。ズバ抜けてる。3作で1つの作品になってる(③はちょっとダレるけど)。SWのepⅣ〜Ⅵとかトップガン〜マーヴェリックに匹敵するトータルでの完成度。観た後で『あんまりやった』『(そんなに)おもしろくなかった』と思ってもいいので観ておくべき。大袈裟な言い方になるけど、観た人の知識・教養・財産にきっとなる。
もちろん①②③の順番で観た方が当然何倍もおもしろい。ぼくが何度も言ってる天丼とシリーズならではのフリが活きる。
ずっと笑って観てられる①に比べるとちょっとストーリーが暗いけどね。時代を行ったり来たりしちゃうからちょっと複雑やし。それでもちゃんとおもしろい。
○
86【バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3】
個人的にはちょっと蛇足感を感じなくもない作品。まぁ①と②が飛び抜けてるからなんですけどね。今作もちゃんとおもしろいんですよ。本来は②と③は1本の作品だったけどあまりにも長過ぎるから2本に分けたのは有名な話。つまりは③に当たる今作はシリーズとしてのクライマックスが描かれてるパートなわけなんですよね。でもなんかどこか刺さらないのはたぶん今作の主役がマーティじゃなくてドクになっちゃってる事かな。コレは完璧に個人の好き嫌いの問題です。作品に落ち度や罪はない。最後の最後(現代に戻ってから)はキレイにまとまってて気持ちいい。良いエンディングの大円団やと思う。
ぼくは西部劇も好きなのでまだおもしろさのバロメーターがキープできてると思うけど西部劇を観ない人とかでもちゃんとついてきてるのかしら。西部劇で言えば、②でビフが風呂で観てた[荒野の用心棒]の伏線回収(イーストウッドの名前も含めて)がキレイ過ぎるし、祭りのシークエンスでマーティが銃の腕前を披露して練習したのは『セブンイレブン』て答えるというくだりの前振りも②のカフェのゲームコーナーでちゃんと振られてるのがすごい(まぁ、②と③で分けるのと②③でくっついてるのではすごさの印象が違うけど)。
クライマックスの機関車を落とす撮影トリックのエピソードは有名ですよね。「大事な機関車を破壊すな!」っていう界隈からのクレームに対して『そんなコアなファンの目を騙せた!』ってスタッフが喜んだという。ウィットですよね。
クライマックスの余韻に浸りながら'85年に戻ってくるくらいから『あぁもうすぐ終わっちゃう』とちょっとセンチメンタルになるし、ラストで木端微塵になるデロリアンを観ると『ああぁぁぁ』てなっちゃう。なんか寂しい。ジオングにやられていくガンダムを見てる感覚(イヤ、ソウジャナイヨ)。
たぶんですけど、西部開拓時代のストーリーはアメリカ人が見ればめちゃくちゃウケるのかもしれない。でも、ぼくら日本人は(主語が勝手にデカい)あくまでも〈スクリーンの中の世界〉として認識してる感覚が強いのでそこまでテンションがアガるポイントではないんですよ(たぶん)。恐竜がいた時代とさほど変わらないというか。もし仮にこれが江戸時代や幕末なんかで侍とかが出てくればもっとタイムスリップした実感が沸くんでしょうね(たぶん)。それがおもしろいかどうかは別にして(イヤ、オモロナイヤロ)。あ、[戦国自衛隊]とか題材にしてる作品はいくつかありますね(その作品を否定してるわけじゃないです)(たぶん)。
いくつも時代を行き来する複雑な②に対して西武開拓時代一択にしてシンプルな活劇に仕上がって観やすい③になってるから、これぞ《THE 完結編》というこれ以上ない完結編。3部作になってた壮大な時空旅行がキレイに終着した感。風呂敷の結び方もとても美しい。
ただ、ドクの墓をドクが見るというのには違和感がなくはない。過去や未来から来たドクが見るのならわかる。でも見てるのはその時代のオリジナルのドク。もし過去にドクが死んでるタイムラインならあのドクが存在してるのはおかしくなる。一度タイムスリップしてまた戻ってきたドクが見るのなら辻褄が合うと思うけど。まぁそんなん気にならないくらいおもしろいけどね。
○
87【メカニック:ワールドミッション】(初)/BS日テレで字幕版が放送してたから。ジェイソン・ステイサムの'16年の作品。'11年の[メカニック]の続編。今回は凄腕の殺し屋。もうどんな役でも驚かないよ。
トミー・リー・ジョーンズ(日本ではBOSSおじさんとしてイヂられてるけどすごい人なんやぞ)やジェシカ・アルバが脇を固めてて初見で観てたら『お!』てなった。どっちもスクリーンでは久し振りにお見かけした。
シンプルな映画。よく言えば。気楽に観れるというか。98分という手頃な長さもいいですね。なんとなく導入から振りから展開からクライマックスまでがテンポとかも含めて少し浅く感じちゃう。シンプルゆえに。まぁ、これくらいサクサク進む方が気軽に観れるのかもしれないけど。嫌いではないですけどね。ただどうしても前半は退屈な感じはしちゃう。あと、この人の映画にはロマンスは別に要らなくないか?って思っちゃう。迫られても軽くあしらうくらいの方が合ってると思う。
仕事をするにあたっての準備や迎え撃つための罠の工作をしてるシーンはいいですね。こーゆープロフェッショナルを描写するシーンは好き。ド派手なアクションや特撮シーンと同じくらい好き。あと、最後の脱出の種明かしのやり方が取ってつけたエピローグにするんじゃなくてちゃんとキャストを活かしてるのがなんかセンスがあっていい。
高層プールのシークエンスはよかったですね。すげぇプロっぽくて。この場面が1番よかった。任務を終わらせて戻ってきた地上(道路)にターゲットの憐れな掉尾がうっすら見えるのもよかった。[ゴーストプロトコル]のブルジュ・ハリーファのシーンよりスマートで観応えがあるかも。イーサンたちは後先のこと度外視して窓ガラスを切り取ってたし戻る時もガラスブチ割ってたけどこちらのビショップはちゃんと修復して去り際もキレイ(さすがに窓のふちのパッキンまで戻す余裕はないとは思うけど)。ただ、あの高さであのガラスの開け方したら気密性の問題で空気の入ってくる勢いはハンパないと思うけど。
今回は元飛び込み選手という経歴がこれでもかというくらいに活かされてますね。とてもキレイなフォームでした(本人かスタントダブルなのかは知らんけど)。泳ぎもさすがに達者。泳ぎを知ってる人の泳ぎ方。
[メカニック]っつぅタイトルの由来がよくわからなくてもっとメカメカしたトリックを使うとかそんなんかと思ってた。調べたら前作がチャールズ・ブロンソン主演の'72年の作品でそのリメイクだとか。
あと、英語で整備士、整備兵、熟練工、職人って意味で、英俗語で殺し屋って意味がちゃんとあるらしい(Wikiより)。なるほどね。取り敢えずちょっと前作を観たくなった。
△(あともう少しなんかあれば十分○になる。ステイサムニキの作品てこんなん多いよね)
89【ゲッタウェイ】BSPで字幕版やってたので。スティーブ・マックイーン主演の'72年のサム・ペキンパー([ワイルド・バンチ][わらの犬][ガルシアの首])監督作品。
脚本をウォルター・ヒル([48時間][ダブルボーダー][レッドブル]の監督)なのは今回初めて知った(ちなみに[ダブルボーダー]はめっさカッコイイ映画です。銃撃戦が痺れる)。オープニングのクレジットの出方とかがペキンパー風味全開というか。いちいちストップする撮り方とか。
マックイーンのこの作品と[ブリット]はとても好き。[タワーリング・インフェルノ]もいい。マックイーンの演技が上手いかどうかは正直なところわかってないかもしれない。台詞が棒読みかどうかとかはあんまわかんないし。でもカリスマ性はある。リバー・フェニックスや幅を広げたら尾崎豊や本田美奈子も。怒られる言い方になるかもしれないけど亡くなった事で(更に)伝説になったというか。ジョン・レノン的な。もっと観てみたかった人たちですけどね。円熟味が加わった違う伝説とかワクワクしかない。
なんか〈男が惚れる男〉みたいなとこある。最近の俳優さんであんまいない感覚。ただのアウトローじゃない。なんかこう、色気じゃないけど引き寄せるオーラみたいなのを纏ってる。あと、銃の扱い方が抜群にカッコイイ。バイクの乗り方も(今作ではバイク乗らないけど)。個人的にブルース・ウィリスの銃の扱い方も同じくらいカッコよかったと思う。この2人は飛び抜けてカッコイイ。他でそれに近いのはキアヌ・リーブス。
銀行を襲った後でルディーを撃つ時に反動を殺すように手を引きながら撃ってる(たぶん)のや、もし防弾ベストとかを着てた場合を考えてトドメを頭に入れようとする(結果的に頭には当たらず首?肩口?に当たっておまけに案の定ベスト着てたから仕止めきれなかったけど)のや、撃ち終わった後に(おそらく)撃鉄を戻してセーフティーをかける仕草とかいちいち細かいところがカッコイイ。中盤で無造作にショットガンの弾をジャケットのポケットを入れるとか痺れるくらいカッコイイ。紙に包まれたショットガンとかカッコイイにも程がある(その後のジャケットや白い布?カーテン?で雑に隠されてるのもたまんない)。リロードする時にショットガンを裏返して装填口を上にしてのリロードがこれまたカッコイイ。クライマックスでショットガンの弾を撃ち尽くしてハンドガン(コルト・ガバメント?)に持ち替えた時にさりげなくスライドさせて装填するアクションがあまりにも流れるように自然で何回でも繰り返し観れる。
犯行前の準備や打ち合わせの雰囲気とかはすごく手練れのプロ感を出してるのに犯行後のあたふたドタバタがちょっとお粗末な感じ。乱暴な車の運転といい自分から目立ってないか?という。ニュースとかで自分達の顔が指名手配として知れ渡ってるのを知ってるのに普通に顔を晒す不用心さもどうかと。
〈アメリカン・ニューシネマ〉にカテゴライズされるのかどうかはわからないけど、ペキンパー版[俺たちに明日はない]という感じ。ただ、ラストがラストなのでどっちが好きなのかは好みは分かれるところ。ぼくは個人的にはボニーとクライドが迎えた運命の方が好きかもしれない。
久し振りに観たけどこの年代の映画はたまに観るとすごくいい。まぁ今作はNTRとかあるし明るく観れる作品ではないけどね。
○
90【トレイン・ミッション】(初)/BSテレ東で吹替版やってたけど日本語字幕に切り替えて。吹替版でもいいんやけどリーアムさんの声はオリジナルの方が渋くてカッコイイ。原題は[The Commuter]。意味は「通勤者」。
リーアム・ニーソン主演の'18年の列車内でのサスペンスアクション。この人の映画は結構好きです。[シンドラーのリスト]やSWepⅠ[ファントム・メナス]のクワイ=ガン・ジン役が有名ですね。[96時間]シリーズも円盤持ってるし好き。ちょっと推理の仕方が似てるかな。頭が切れる人の推理を少しづつわかる展開は引き込まれますね。少し前にアマプラかNetflixで見かけた[アイス・ロード]って作品もおもしろそうなので近々観たいと思ってます。
〈通勤電車〉ってのが一見地味な設定に感じるけどイイ意味で活きてくる。前半の顔馴染みに協力を求めれる事や後半の〈普通→疑う→疑いが晴れる〉の一致団結してく流れがスムーズ。これが旅先の豪華列車とか豪華客船やと舞台はぱっと見派手になるけど同じように流れをスムーズにするにはそれぞれエピソードを付け足さなければならないから間延びしちゃう。それが〈顔馴染み〉で省略できてテンポが良くなるから〈通勤〉電車というアイデアでアドバンテージがある。
この監督の映画([アンノウン]とか[フライト・ゲーム]とかもリーアムさんとタッグを組んでておもしろそう)は初めて観たけど、パンチした切符の穴からのカメラワークとかヘッドフォンの音漏れの使い方とか撮影のセンスがイイね。犯人を明かすきっかけをあーゆー〈台詞〉というポイントにしたのもGOOD。
イイ役で[ジェラシックパーク]シリーズのグラント博士(サム・ニール)がいてちょっと美味しいトコロを持ってく。他の脇役さんたちもちゃんとキャラが立っててイイ感じで観れた。最後にジャクソンが見せた漢気にみんなが続くトコ、鳥肌立つくらい良かったしなんか泣きそうになった。
観てる途中までは全然初見のつもりやったけど、クライマックスで濡らした新聞を貼り付けるあたりからなんか既視感が。途中から観たことあるな。
スケールをもう少し大きくアレンジしたらシナリオやプロットは良いのでダイハードみたいな映画になってたと思う(褒め言葉です)。
あんま期待せずに観たけど十分おもしろかった。
○
91【007 カジノ・ロワイヤル】(Casino Royale)(初)/BS日テレで字幕版を。恥ずかしながらはじめまして。'06年のダニエル・クレイグの初ボンド作品。
007はあんま観ずに育ってきたんですよね。ティモシー・ダルトン・ボンドとピアーズ・ブロスナン・ボンドを何作か観た事があるかな…くらい。地上波でたまたま放映してたのをチラッと観た事があったりなんかと同時上映やったのを観た気がする程度やと思うのでクレイグ・ボンドは実質はじめまして。どっちかっつぅとスパイ=イーサン・ハントの印象が強い。
'67年の作品のリメイク。でも前作は007のパロディー映画らしい。
マッツ・ミケルセンという最高のカードの切り方が若干勿体なくないかなと思う部分もある。まだまだもっと使えるくらいのいいキャラやと思うから。敵役にはもってこいのキャスティングですね。〈血の涙を流す〉という設定はマッツっぽくて気持ち悪くて(いい意味で)とても良かったしあの拷問の仕方もめっさ変態でものすごくマッツ。
暗証番号を知ったヴェスパーが罪の意識に苛まれるかの様な表情になるのが根っからの悪人ではない事と彼女の最期にも繋がるのは上手く描写されてる。でもまぁ仕事は仕事でやっちゃうんやけど。
とても暴力的でワイルドな野性味に溢れまくってる今回のクレイグ・ボンド。ボンドってもっとスマートでエレガントなちょっと憎たらしいスケベ顔のスパイのイメージ。このボンドは007というよりジェイソン・ボーンとかに近い感じ。すぐパワープレーしちゃう。でも、前半のオーシャンクラブに侵入する時に騒ぎ起こして紛れながらも女の人が通る時にさりげなくドアを押さえてる仕草は英国紳士のボンドっぽかったけど。
[ダイハード]のジョン・マクレーンしかり[リーサルウェポン]のマーティン・リッグスしかり、スマートさとは程遠いアクションヒーローが好きなので(それで育ってきたので)すましたスタイリッシュなボンドはちょっと好みとは毛色が違うという偏見を持ってました(今でも多少持ってます)。これはこれで良さもあるしさすがにもう変なこだわりもなく観れるんやけど、心が躍るのは前者のぶきっちょなゴリゴリの武闘派ヒーローなんですよ。スーツ姿やキレイなお召し物で闘うスパイの主人公よりタンクトップやジーンズでボロボロになりながら闘う警官の方が好みのドストライクなんですよね。ただ、そーゆー意味ではクレイグ・ボンドは過去のボンドに比べたらちょっと近い気もする。
ダニエル・クレイグがボンドに選ばれた候補の中にクリスチャン・ベールの名前もあったとか。そっちのボンドも観たかった気もしないでもない。
○(ちょっと△よりの○かな)
92【007 慰めの報酬】(Quantum of Solace)(初)/quantum=量、額、分け前。solace=慰め、安堵。'08の作品で前作[カジノ・ロワイヤル」の続編というか前作のエンディングから繋がったオープニング。[カジノ・ロワイヤル]を観た勢いで続けてアマプラで字幕版を。公開の間隔が2年しかないって事も[続編]としての鮮度を活かす意図があるのかな。
なんか[カジノ・ロワイヤル]と今作でまとめて1本の映画にしても(作品時間の長さは別にして)成立するような感じ。逆に前作を観てないとちょっとついていくのが難儀な内容かも。そのかわり続けて観てる人は導入部分がゴッソリ前作に当たるのですぐに本題に入れるし、引き続き出てるキャラもいてスムーズに観れる。〈車のトランク〉のくだりとか『そのキャラでその展開ですか?』と前作との繋がりもある。組織がいくつか絡んできたり復讐のターゲットが複数人だったりと若干ですが複雑さは感じますけど。
陥没孔から待ちまでの距離を裸足で歩き通すカミーユ(歩かせるボンド)にちょっとびっくり。タフね。クライマックスの燃え盛るホテルがカミーユの過去のトラウマのエピソードに繋がってて上手い。ドレスを着て惑わすボンドガール(グリーンに対してその武器も使った事を表す台詞はあったけど)というより泥だらけでボロボロになりながら銃を持って闘うパートナーみたいに描かれてるのは好印象。フェードアウトの仕方もいい。
途中まではフィールズがヒロイン的なポジション(所謂「ボンドガール」)なのかとも思ってたのであの展開は『は?』てなりました(一応2人ともボンドガールなんですね)。
グリーンの最初のイメージがゲイリー・オールドマンっぽくてものすごく期待値が上がった。こりゃあ憎たらしい敵やな、と。でももう少し極悪のエピソード(カミーユの過去を知りつついとも簡単にメドラーノ将軍に渡すあたりはなかなかの鬼畜っぷりでしたが)が欲しかったなと欲は出ましたけど。最後にオイル缶を渡されるオチはフィールズの仇としてシャレてました(スッキリするしないや甘いかどうかは別にして)。
今回のボンドはインポッシブルなミッション遂行(この書き方すると作品名がブレる)よりも前作からの復讐や仇討ちに加えて自分が巻き込んだ人たちへの弔いという私的な行動理念(結果的にそれでもミッションコンプリートしちゃうんですけど)。ただ、観てて下手な正義感や任務遂行よりずっと感情移入しやすいです。
106分という尺に加えてものすごくテンポ良く進む展開であっと言う間にエンディング。逆にテンポ良過ぎて、観劇の際に袋を渡すトリックやグリーンから組織を聞き出す取り引きのくだりや最後にネックレスを捨てるシーンとかもう少し丁寧に見せてくれてもよかったのではないかという気持ちはありますが。でも、核兵器や大量殺戮兵器や致死ウイルスという若干ファンタジーなモノではなくて狙いが[水]というのもシンプルでありリアルでいい。
ただ、観終わった後に真っ先に出たのは『Mr.ホワイトわい!』でした。
○(今作単体で捉えるとカジノ・ロワイヤルよりも△寄りかも。でもセットで判断すると十分○)
93【007 スカイフォール】(Skyfall)(初)/クレイグ・ボンドを続けて。アマプラで字幕版。'12年のクレイグ・ボンドの3作目。改めてこのシリーズを観てみると、ここまでしっかりと〈オープニング〉を作ってる作品って最近では珍しいですよね(前作はいきなりカーチェイスでオープニングにあたる部分はなかったけど)。[スパイ大作戦]系のあっちもオープニングは作ってるけど、永くシリーズとしてやってるとやっぱ必要というか成立するというか『さて、始まりますよ!』みたいな役割のパートなんですかね。
冒頭の観応えあるアクションでのあの状況から助かったボンドが次に出てくるシーンでいきなり女の人とイチャコラしててなんかシーンをスキップしてしまったのかと『?』てなった。そんでその療養してるビーチがなんか既視感あるなと思ったらちょっと前に観た[メカニック・ワールドミッション]でビショップが訪れたメイのコテージとごっちゃになってた。
敵役のシルヴァ(ハビエル・バルデム)を調べたらWikiに既視感があって『?』と思ったら、少し前に金ローでちょっとだけ観た[パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊]でサラザール役やってたから調べた形跡があっただけでした。
いいキャラですね。シルヴァ。怖い。見た目や威圧感や凄味とかではなく気味の悪い怖さ(見た目アレな描写はあるけどそーゆー事での怖さではなく)。何をするかわからない怖さ。読めない怖さ。[M:i:Ⅲ]のディヴィアンぽいというか。金髪やもんで余計に。
007シリーズに愛着があまり湧かないのはボンドの愛用銃がワルサーな事。これは極めて個人的な好みなんで仕方ないんですけどね。ベレッタやその前ならコルト・ガバメントとかで育ってきた世代で最近でこそやっとSigとかに慣れてきたもんですからワルサーにはあんま馴染みがない。どーして変装得意なももみあげ怪盗のp38が浮かんじゃうし。
本来はイヴやセヴリンがボンドガール的なポジションなのかもしれないけど観た後ではホントの今作のボンドガールは[M]なのかな、と。ヒロインでしたね。
最後まで観てみると、公聴会でMがテニソンの詩を語ってる時にボンドの姿がオーバーラップしたりしてあの内容がMからボンドへの矜持みたいなメッセージなのかと。加えてこの公聴会では、大胆且つ用意周到なシルヴァ、銃を向けられて覚悟を決める強い意志のM、反発してても身体を張ってMを救うマロリー、現場での機転は一枚上手のボンド、無理をせずに引き際もわきまえてるシルヴァ、それぞれのキャラを端的に上手く描写してるシーンがいっぱい詰まっててとても良いシークエンスやと思うし、なかなかこんな綺麗な構成はお目にかからないと思う。この公聴会の一連のシーンはなんならクライマックスよりデキは良かったと思う。
乗り換えたアストンマーチンが[カジノ・ロワイヤル]で賭けで奪った例の車かと思ったけど違った。クライマックスで敵を迎え撃つのに罠を拵えて家で待つスタイルというのはランボーのラスト作と同じプロット。まぁ当然こっちの方が先ですけどね(向こうは'19年)([ホームアローン]みたいとかまでは言いません)。あと、もう少し〈シルヴァにだけわかるパン屑〉をわかりやすくして欲しかったかな。
ボンド「準備はいいか?」
キンケイド『お前が生まれる前からできてるよ』
の会話で平子隊長の『お前が母ちゃんの子宮の中におるときからや』の返しを思い出した(BLEACHの話です)。
タイトルの[スカイフォール]の由来、『そこ?』ってちょっと思いましたけどね。でも今まで描かれてなかったクレイグ・ボンドの過去の一端を描写してたりいい設定じゃないですかね。
○
※文字数の問題で入りきらなかったのでちょっと続きます