ポールの転調センスの良さ(My Valentineを例に) | 音楽研究者 藤野純也のブログ:てるむじか

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ポール・マッカートニーが今の奥さんのナンシーに捧げたMy Valentine、この曲は途中で転調しているのですが、その転調の仕方が実に素晴らしい。

これのどこがすごいのかを説明するまえに、My Valentineのコード進行を載せるので、ピアノを弾ける人はまずはじっくりそのサウンドを味わって欲しい。

[A]
Cm  |Eb   |F  Fm |Cm/Eb  |D7  |Gsus4 G  |Cm  F/C  |C     ||

[B]
F   |C   |F  |Am .....

[A]がKey of Cm なことはコード進行を見ればすぐにわかるとおもう。

 

面白いのはマイナーキーなのにIVがメジャーコード、Fになっていること。

まぁこの和音自体はメロディックマイナースケール上のダイアトニックコードと捉えれば説明できないことはないんだけど、その使い方がとても興味深い。

[A]の3小節目、Key of CmのIVであるFmの前にあえてメジャーのFを鳴らすことで、マイナーキーにとってはなんてことのない、IVのサウンドがとても切なく響くんですね。

 

また、このメジャーのFのサウンドが、Key of Cに転調する[B]の展開の予告として機能していることは見逃せない。

イントロでは Cm  F/C Cm と弾いていたのが、[A}の最後ではCm F/C C にポールは変えて弾いている。

[A]の最後に出てくるCは転調先の主和音なんだけど、利き手はそこまでずっとKey of Cmの世界にいたから主和音が出てきたとは感じないんですね。事実このCのコードはIVに進むセカンダリドミナントとして響きます。

 

普通転調を仕掛けるときってドミナントを経由して転調先のトニックに解決させることが多いんだけど、My Valentineではセカンダリドミナントを経由して転調先にIVに進んでるんですね。

だから、ドミナント経由の強引さがなく、転調独特の強引さがなく、暗い部屋の窓から光が差し込むかのような、ある種神秘的な音響効果が得られているんですよね。

このあたりの和声に対する感性の素晴らしさはさすがポール、天才ですね。