NHKプロフェッショナル仕事の流儀 ライバルスペシャル 名人戦を戦う羽生善治と森内俊之 | 考える道具を考える

考える道具を考える

The instrument which I think

脳科学者茂木健一郎さんがキャスターをつとめるNHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」。
7月15日の第93回目は、ライバルスペシャルと称した特別番組だった。

今期の将棋名人戦を戦う宿命のライバル二人を追う。小学校4年生から27年間ライバルとしてしのぎを削ってきた天才羽生善治2冠と森内俊之名人。今期は羽生が森内に挑戦する。

将棋の名人戦は、プロ棋戦の中でも最高峰の戦いである。一年間の順位戦を戦い抜いた只一人の挑戦者が、名人との七番勝負に挑む。A級からC2級まで五段階に分かれたこの順位戦は、棋士の「位」を決定する重要な棋戦でもある。

羽生と森内。宿命のライバルの戦い。

20代前半の羽生は凄かった。若くして将棋のタイトル7つを全制覇した天才羽生に対し、遅咲きの森内は、30歳を過ぎてから頭角を現す。あと一つ勝てば永世名人の称号を手に入れる直前の羽生を破って名人位について以後、森内は5期連続名人位を保持し、羽生より先に永世名人の称号を得る。この二人のライバルの戦いは運命的でもあるでしょう。今期は結果として羽生が名人位を奪還し、ようやく永世名人の称号を手に入れた。

全6局の戦いの模様を描いたこの番組は面白かった。
30代を迎えて天才羽生の指し回しは、淡白になった。勝利への執念が消えた。7つのタイトルを次々失っていく。しかし羽生はある日将棋会館を訪れた時、還暦を迎えた先輩棋士たちの将棋に向かうその姿勢を見て改めて何かを感じる。

    ‥‥勝つか、負けるかではなく、自分の将棋を極める

その瞬間から天才羽生善治は蘇る。10代の頃の執念が復活する。森内は第3局目の戦いを振り返って言った。劣勢になってからの羽生の粘り。「羽生さんは勝ちたいんだな‥」。羽生の変化にいち早く気がついたのは、ライバルであった‥というわけだ。この心理が、森内の戦いを鈍らせたことは事実だろう。

目標と達成。心の昇華への新たな戦い。森内は永世名人を獲得して一つの目標を達成した。羽生はまだ達成していなかった。この気概の差が今期の名人戦の勝敗を左右したように思えた。

名人羽生善治は、天才から超人に向かい始めたように思えた。今、王将戦、棋王戦など立て続けにタイトル戦を戦っている羽生。群雄割拠の将棋界が、新たな時代を迎えようとしているのかもしれない。