中国はドルペッグのために、人民元を刷って米国債を買っている。 そのため、マネタリーベース、マネーストックが大きくなる。




teleius225のブログ

日本も、同じように金融緩和すれば、好景気になるだろうか。


実は、これは全く成り立たない。 つまり、中国が金融緩和をしてインフレになっているが、それほど急激なインフレにならないのには、理由がある。 つまり、中国は生産性の上昇の余地が大きく、生産性の上昇で物価を抑制することが可能である。 潜在成長率が大きいのだ。 


マネーを溢れさせても、国内の生産力が大きくなることで、物価上昇がマネーの膨張の割りには小さい。


しかし、日本の場合は、経済が成熟し、潜在成長率は1%前後だろう。 過去20年の実質経済成長率は年0.8%平均である。 つまり日本で同じように金融緩和を行った場合、生産性の上昇で物価を抑制することは難しい。 従って、中国と同じようにマネーを溢れさせた場合には、インフレーションがより大きい。 


経済の体質が全く異なる国と同じことをやっても、同じ効果は得られない。 中国のような新興国と、日本のような成熟経済の国家では、状況が全く異なる。 



しかし、それでも中国経済はバブルに悩んでいる。 住宅市場は過熱し、いずれ調整が避けられない。やがては、バブルが崩壊するだろう。 しかし、日本のバブル崩壊のような深刻な事態になるのかは、不透明だ。つまり、中国経済には、大きな成長力がまだある。 だから、バブルも大きな問題にならないのかも知れない。



それと世界経済の本当の問題は米国が大量の貨幣を増刷していることであり、それが世界中にドルが溢れさせている。中国人民銀行がどのように行動しようと、米国の中央銀行の方がはるかに規模は大きく、資金量も多いので世界経済への影響力という意味では中国の行動はアメリカの行動の影響とは比べ物にならない。 その上、中国、インドといった新興国が工業化した影響で、実需の面からも資源価格は上昇せざるを得ない。 気候変動による食糧価格の上昇も大きな問題になりつつある。


世界中の中央銀行は石油、食糧、鉱物資源などの商品相場の高騰という事態に直面しており、たとえ自ら貨幣を増刷しなくても物価は大幅な上昇を続けることにならざるを得ない。このため当面は貨幣の増刷とは無関係に、インフレは進む構造になっている。それでも米国が火に油を注ぐかたちで量的緩和を実施していることが各国のインフレ抑制を一段と困難にしている。 


世界経済の問題点は、既にインフレ抑制に移っている。 日本が中国の真似をしてより一層の金融緩和をすることは、流れを見誤った行動である。