<概要> 本論とこの結果の表について、ここで要述する。
 徒歩や自動車と比較して、自転車乗車の際に坂道を登る時には、その人の心身への影響は著しく大きい。坂道と勾配値との対照を十分に経験している自転車乗りであれば、「勾配〇〇%」という標識や計測器の表示を見て、走り方に注意を払うことができる。また、ロードレース中継を見ている場合でも、選手の苦労の度合いを理解できたりする。しかし、一般的に多くの人は勾配が何%と教えられても、理解に苦しむということが少なくない。
 本論では、この課題を解決すべく、スポーツ系自転車の初心者から中級者が、その坂に挑む際の参考にするため、また、ロードレース観戦をするために参考となるような、勾配感度の理解と共通認識を持てる表の作成を目論みたい。

 

勾配(%) 斜度,角度
(度)
世界のプロ選手
の速度(km/h)
    説明        道路地理と地形の傾向 自転車感度(ママチャリ、シティバイク、初心者) 自転車感度(スポーツ車の中級以上)
MTBやBMXは対象外とする。※5
参考文献
Matt de Neef
@The ClimbingCyclist
左列和訳
0 0 40~60 平坦。 盆地や海沿い、湖沿い、下流の川沿いの道路などでは、勾配0を目指すように作らることが多い。 抵抗が無く純粋に走られる。 抵抗が無く純粋に走られる。 A flat road 平坦な道路
1 0.57 40~60 誤差の範囲で平坦として扱われる坂。 市街地や町の中心部などでよく見られる。
平坦区域から山や峠の麓に向かう際の、緩やかに少々高度を上げるための道路でも見られる。
歩行、自動車においては0%と変わらない感覚。向かい風を受けている、重量が増えた、体調に問題がある、というような感覚がよぎる。 向かい風を受けている、重量が増えた、体調に問題がある、というような感覚が少しよぎる。 Slightly uphill but not particularly challenging. A bit like riding into the wind. やや上り坂ですが、特に難しいことではありません。少々の風を受けて乗るようなものです。
2 1.15 40~60 かなり緩い坂。 市街地や町の中心部などでよく見られる。
平坦区域から山や峠の麓に向かう際の、緩やかに高度を上げるための道路でも見られる。
歩行、自動車においては0%に近い感覚。向かい風を受けている、重量が増えた、体調に問題がある、というような感覚がよぎる。坂であるかもしれないという認識もある。 向かい風を受けている、重量が増えた、体調に問題がある、というような感覚がよぎる。スピードに乗って通り過ぎる場合は坂がある認識は薄い。坂であるかもしれないという認識もある。    
3 1.72 34.00 緩い坂。 市街地や町村の中心部などでもやむを得ない起伏や橋梁に向かう道路といったような短区間で見られる。
河川敷の高水敷から天端へ※2向かう坂でもたまに見られる。
日本の高速道(100km/h以上)の登坂車線は3%以上の勾配から設置推進されている。
緩いが坂であることをはっきりと認識できる。幼い子供でも登り切る者が多い。老人などでは歩行に切り替える者もいる。 緩いが坂であることをはっきりと認識できる。多少の距離や時間があっても、巡航できる。    
4 2.29 33.67 やや緩い坂。 市街地や町村の中心部などでもやむを得ない起伏や橋梁に向かう道路といったような短区間で見られる。
河川敷の高水敷から天端へ※2向かう坂でも見られる。
緩い坂であるが、立ち漕ぎに切り替える者もいる。 緩い坂であるが、微妙なキツさを感じ始める。 A manageable gradient that can cause fatigue over long periods. 長時間にわたって倦怠感を引き起こす可能性のある対処可能な勾配です。
5 2.86 30.25 ややキツさを感じ始める坂。 市街地でも、高所へ向かう際に遭遇する。
河川敷の高水敷から天端へ※2向かう坂の中で、最も多い勾配。
峠、山間部の入り口でも遭遇しやすい。
一般道の登坂車線はこれ以上の勾配から設置推進されている。
少々キツさを感じ始める。自転車から下りて歩く者は少ないが珍しくない。 丁度よい歯応え、キツさのある坂。多くの人が心身への影響が出始める。登坂能力が問われる最初ポイント。極端な速度低下となる者は、まだ小数である。    
6 3.43 28.75 キツさを感じ始める坂。 市街地でも、高所へ向かう際に遭遇する。
河川敷の高水敷から天端へ※2向かう坂の中で、最も多い勾配。
峠、山間部の入り口でも遭遇しやすい。
多くの人がキツさを感じ始める。自転車から下りて歩く者は少なくない。立ち漕ぎをする者が顕著に現れる。 丁度よい歯応え、キツさのある坂。多くの人が心身への影響が出ており、極端な速度低下となる者は上項より少し増える。    
7 4.00 26.60 ややキツい坂。 市街地でも、高所へ向かう際に遭遇する。
河川敷の高水敷から天端へ※2向かう坂の中で、最も多い勾配。
峠、山間部の入り口でも遭遇しやすい。
坂の滑り止めが見られ始める。※3
ほとんどの人がキツいと思っている。特にママチャリにおいて、自転車から下りて歩く者が顕著に現れる。 身体能力の他、スタンディング、ギアチェンジ、速度戦略なども含めた登坂能力が問われ始める。ほぼ全ての人が心身への影響が出ている。 Starting to become uncomfortable for seasoned riders, and very challenging for new climbers. ベテランライダーにとっては不快になり始めるところで、初心者クライマーにとってはとても手強いものです。
8 4.57 25.00 キツい坂。 峠、山間部、坂のある街でよく遭遇する。
車椅子のスロープ勾配最大値(国土交通省)
歩道の最大値※4
体力に自信のある者以外の人はほぼ全てキツいと思っている。特にママチャリにおいては、自転車から下りて歩こうとする。 身体能力の他、スタンディング、ギアチェンジ、速度戦略なども含めた登坂能力が問われ始める。ほぼ全ての人が心身への影響が出ており、極端な速度低下となる者は、少なくない。    
9 5.14 21.88 かなりキツい坂。 峠、山間部、坂のある街でよく遭遇する。 ほとんどの人が自転車走行を断念する。 坂としては、ワンランク上に入る。全ての人が心身への影響が出ている。人によって速度のばらつきが出始める。ギアを最下段にする者も少なくない。    
10 5.71 19.93 やや酷い坂。 峠、山間部、坂のある街でよく遭遇する。 ほぼ全ての人が自転車走行を断念する。 激坂の判定点の一つ。これ以上の勾配が、どれだけ長く出現するかなどにより、激坂と言われる場合が多い。多くの人に対して心身への損傷が始まっている。 A painful gradient, especially if maintained for any length of time 特に長時間維持された場合、苦痛の勾配となります。
11 6.28 17.27 酷い坂。 峠、山間部、坂のある街でよく遭遇する。 ママチャリなどで、これ以上の勾配を登る人達は挑戦者の部類に入ると思われる。      
12 6.84 14.91 かなり酷い坂。 峠、山間部、坂のある街でよく遭遇する。 - 激坂の判定点の一つ。「10%はまだ激坂とは言えない」と考える人達は、12~13%以上を激坂とする考えがある。プロ、セミプロ、上級者においても、巡航速度が顕著に下がり始める。長距離の場合、足着きも少なくない。    
13 7.41 13.67 やや激しい坂。 峠や山の頂上部へと向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
-      
14 7.97 ※1 激しい坂。 峠や山の頂上部へと向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
- ほとんどの人が激坂であると認める。ほぼ全ての人に対して心身への損傷を与えている。    
15 8.53 - かなり激しい坂。 峠や山の頂上部へと向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
-      
16 9.09 - やや凄まじい坂。 峠や山の頂上部へと向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
歩行者の場合、手を付きやすい傾斜とはなるが、四つん這いとまでにはいかない。 ドロップハンドルの”下ハン”を握る感覚が、梯子の”支柱部”を握って登っている感覚と近くなる。蛇行、足着き、停車する者は多いと言える。心身への損傷は明確であるが、世界的な能力の持ち主はまだ余裕がある場合がある。 Very challenging for riders of all abilities. Maintaining this sort of incline for any length of time is very painful. ライダーの全能力に対して、とても手強いものになります。この種の勾配を長時間維持することは非常に苦痛です。
17 9.65 - 凄まじい坂。 峠や山の頂上部に向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
立体駐車場スロープの制限値。
       
19 10.76 - かなり凄まじい坂。 峠や山の頂上部へと向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
- プロ選手でもレース中には、速度を落とすというだけでなく、蛇行や足着きが見られる。超短距離である場合、挑戦する中級者はしばしば見かけられる。ロードレースのコース上にある場合、世界的な能力の持ち主でも難なくクリアするものは少ない。    
21 11.86 - とんでもない坂。 峠や山の頂上部へと向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
-      
23 12.95 - かなりとんでもない坂。 峠や山の頂上部へと向かう道路で見られる。
街の中でも特殊な地形で見られることがある。
-      
25 14.04 - 猛烈な坂 ロス・マチュコスの最大勾配 -      
27 15.11 - 苛烈な坂。 モンテ・ゾンコランの最大勾配 -      
29 16.17 - 激烈な坂。 ミラドール・デ・エサロの最大勾配 -      
35 19.29 - 酷烈な坂。 ニュージーランド_ボールドウィン通り - -    
? - - 考えられない坂。 この世のどこかに存在する35%より上の坂 - -    

 

※1 これ以上の勾配については、アタック合戦が始まったり、プロトンも崩れやすくなる勾配である。
選手によって差が出やすいため省略とする。"
※2 ”天端”は上の道、”高水敷”は下の道
※3 グルーピングやO(オー)リングなどの滑り止めの指示は、自治体による。7~12%以上
※4 国土交通省より、原則は5%。なので、これ以上の坂での歩道は殆ど存在しない。車椅子を考慮してのこと。車椅子の自力登坂限界は8.5%と考えられている。
※5 中級者や上級者の定義は曖昧にした。どことなくわかってくれれば良い