びんのふたどうした | てくてく @ the world

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太短い足でてくてくと、たくましくあるいはなさけなくも、世界を渡り歩いた記録です。

あれはたしか、ダラス・フォートワース行きの

アメリカン航空でのことでした。


ギャレーでもらってきた赤ワインの

ボトルを持ち、スクリューキャップを軽く捻ります


開かない。


もう少し、力を入れてみます。


開かない。


私としたことが、ワインの蓋も捻れないなんて、

なんということでしょう。


持ち方を変えて、強く捻ってみます。

開かない。


おう、なんてこったい。はっはっは。

もしかして、捻りが逆だったかな。

いやはや。

そういうこともあるかもな。


…違ったな。


ワインひとつ開けられないなんて、

まったくどんなお嬢ちゃんだい。


更に力強くさあ、ぎゅっと。


おっと、どうしたことだろう。これは、あれかな。

呪文を唱えたほうがいいのかな。


「開け、セサミとふた!」


ぎゅっ。


スクリューキャップ、

何をそんなに抵抗しているんだい。

ストライキか?

中味を飲まさないことで、待遇の改善を求めているのか?


便利に閉まったり開いたりしてこそ、

蓋は値打ちがあるんだろう。

確かに主役はワインだが、

ボトルとキャップはそれを保存して、

飲みどきに備えるという大事な役目があるじゃあないか。


なのに、いざそのときになってストライキ。

いや、大事なときだからこそ、

ストライキして自らの存在の重要性を示したり、

人を困らせたりするのかい。


キャップが重要なことは、

主張されなくてもわかっているんだ。


誰がどう見ても、キャップがなければ

運んでいる間にだぼだぼと、ワインが零れてしまうだろう?


「あら、今日はけっこう中味が残っているわ」

なんてときや、

「やられた。今日は全然ない」、

そんなスリルを提供するのも一興だけれど、

中味が酸化するまえに飲み手に運ばなければならない。


これは大変なミッションになる。

オペレーション・コードBか。


バケツリレー。


コストがかかる。

物珍しく視覚に訴え、広告にはなるが、毎日はどうだ。

スタインブレナー、試算はどうだ?


いや待て。バケツは開口面が広く、

ここはアメリカン航空、そっとと指示しても

リレーは次第に大雑把になり、

ばしゃんばしゃんとワインが空気に触れすぎだ。


台無しだよ。


なに?ワインベースのカクテルを出す

「カクテル・フライト」で売り出せ?

オペレーション・コードCだな。


従業員がバーテンダー手当を要求してくる。

シェイカーの振りすぎでどうのと、

弁護士が連絡してくることになるかもしれん。


スタインブレナー、試算はかまわん。


とにかく、キャップが重要で大切な存在なことは、

みんなわかっている。

頼りにしているんだ。

どうか協力してくれないか。


なにしろ、信頼が必要な仕事なんだ。

急に開いても、捻って開かなくても、

どちらも良い仕事とはいえない。

正直言って、今回のことは残念だよ


しかたない。

ナプキンを取ってボトルを包み、

お手ふきをキャップに被せ、

ポイントに両手に強く力を入れて

それぞれ逆方向にぎゅっっ、と。


ふう。


はっはっは。


たいてい強情な蓋もこれで開くんだがね。

まあ、なんてことはないさ。


ギュッッ!


…。


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