本日の読書感想文


 

 







貧困と脳

鈴木大介


あらすじ 


著者はもともと「最貧困女子」「家のない少年たち」など、貧困にあえぐ方々の取材を通して「貧困は個人の自己責任ではない」ことを世間に訴え続けてきたルポライターです。

「最貧困女子」発行後、著者は脳梗塞を発症し、後遺症として高次脳機能障害が残りました。この著書は自身の高次脳機能障害と向き合う中で、今まで取材してきた方々のことをさらに解像度をあげて、なぜ貧困に陥った(陥ざるを得なかった)のかを解説しています。

さらには、そのような「脳」を持っている人に対するアドバイス・励ましや、そのような脳をもつ人へどのような支援が必要か、自身の経験から具体的に提案してくれています。



グッときたポイント 


私は生まれたときから遺伝子に組み込まれた脳みそで生きてきました。なのでこの脳みそ以外で生きてきたことがありません。私が他者と違うなぁ、と漠然と感じることはできても、「どこが」「どう」違うのか、わからないのです。なので「私は人付き合いが苦手」としか説明ができません。難しいのは程度の問題です。私は挨拶や簡単な雑談ならできますし、仲のよい職場の人と食事にいくこともできます。ただ、どうしてもその後は消耗してしまいます。ちょっとしたこと(自分でも嫌になりますが)で消耗し半日寝込むなんてザラです。

ひとりの時間がないとやっていけません。


後にわかるのですが、どうやら「擬態」をしている場合にこのように必要以上に疲れてしまうそうです。この事を知っているといないのとでは雲泥の差です。分かっていない場合自分の身に何が起こったのかわからず、混乱し、あまりの体力のなさに落ち込んでしまいます。知っていれば「あー、昨日私がんばったもんなー、寝て回復しよ」と開き直って回復に全力を尽くすことができます。


鈴木大介さんは健常な脳から高次脳機能障害を患い、さらにその状態を「明確に言語化」した稀有な方です。私は脳神経外科病棟で働いた経験のある看護師ですが、自身の高次脳機能障害を患者さん自身が説明した文献はかつて読んだことがありません。医療者や介護者からみた患者の様子から「右空間無視がある」「言語障害がある」「注意障害がある」と判断し記録をしていました。そのときの視点は「その症状がひどくなっていっていないか、生活上どのように環境を整えていくか」といったことでした。

なので、高次脳機能障害を発症した方がどれほど不安と苛立ちに苛まれているか考えたこともありませんでした。

この本を読んで、周りと「何かが違うと思い続けてきた私」と高次脳機能障害を発祥し「何が起こっているのかわからなかった著者」は同質のものだったのではないかと思います。著者はしかし健常な脳を持っていた記憶とルポライターとして培ってきた経験から見事に「なにがおこっているのか」を言語化し、対策を講じています。さらに私(あえて私としますが)に対し「あなたのせいではない」とおっしゃってくれました。

こんな人におすすめ 


これは全人類読んだら良いのでは?と思います。

人間は結構似たカテゴリーの人間とつるむので、貧困のヒの字もない人はそのような方と出会いません。これがどういう結果を生むのかというと、貧困にあえぐ方への解像度が下がります。結果として「貧困者は怠けているのでは」「貧困は自己責任なのだから援助する必要はないのでは」となります。


働けない脳はどの人間もなる可能性があります。

それは自己責任などではありません。


著者はこの著書のなかで繰り返し訴えています。

「自分とは関係ない」そんな人こそ、手に取っていただきたいです。