昨日、お世話になっているマスコミ業界の新年会がありました。
宴は日付が変わっても続き、深夜の帰宅となったわけですが、
初めて出会った若者の一人と話しました。
彼は31歳。
横浜出身。
有名私立中高一貫校を出て、関東の国立大学。
そして、某有名広告代理店に入社しました。
激務で知られ、社員の過労が問題になったあの会社です。
そこで、あるスポーツ関係のネット配信番組の制作に携わるようになりますが、
あまりの過酷さに、26歳で体調を崩し、退職します。
そこから2年間はメンタルも病んで引きこもりになったそうです。
その間、何をしていたかというと、
ずっとテレビの画面をカメラで撮っていたそうです。
と、いうのも、
彼の仕事は番組のADのようなものでしたが、
そのスポーツ関係の現場に訪れるカメラマンの姿に憧れのようなものを抱いていました。
一眼レフカメラを構える姿がかっこいいな〜っと。
そこで、一眼レフカメラを買って、
大好きなテレビ番組を観ながらずっとそこに出ているタレントや俳優を撮っていたそうです。
28歳になって、ようやく街に出て人を撮りたいと思うようになり、
スポーツ観戦に行くようになり、
かつてはいやでいやで仕方がなかったスポーツの現場で写真を撮ることが楽しくて仕方なくなります。
「あんなに嫌だった場所なのに、やることが違うだけでこんなに楽しいんだ」
そのことに彼は気づいたそうです。
そこで撮った写真を自分の名前は名乗らないまま、
マスコミ関係各所に送り続けたそうです。
そのうち、
こちらの社内で、写真のクオリティの高さが評判となり、
「この写真を撮っている人物は本当に実在するのか?」
と、いうことが噂になり、
会社側は何度も彼に接触を試みますが、
彼は人と話をするのが苦手なので、
ずっと接触を拒んでいたそうです。
しかし、会社も諦めず、
ようやく接触。
そして、
晴れてこの会社に社員カメラマンとして採用されることになったそうです。
今でも、人と話をするのは苦手で、目を見ながら話せないと彼は言います。
しかし、
「一眼レフのレンズを通してだったら、しっかりその人の顔が見れる。そのことがまず驚きでした。そして、カメラを構えていたらどんどん前に出ていけるんです。こんな自分にもできることがある。人に求められることがあったんだって思いました」
彼に、
「出身校はどこ?」
と、いう質問は全く意味がありません。
「あの頃の自分と、今の自分は全くの別人なので」
そう彼は言います。
どんちゃん騒ぎする大勢の人間の中で、大きな身体の肩を小さく窄めて、存在感を消すように座っていた彼ですが、
顔は終始、ニコニコ笑っていました。
31歳の新社会人の姿に刺激を受けた52歳でありました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
<a href="https://www.photo-ac.com/profile/682445">medetai</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真