眼下に広がるのは人、人と大勢の人。直線的な蟻の行列を見るより交錯していて汚い。
ラウンジで吹き抜けから見下ろす、見えるのはそんなぶつかる事のない軌跡。人の心さえ垣間見える描写。
天井を見ると高層建築物たちは真っ赤を反射して見えない日が暮れようとする刻。
俺は綾と2人でショッピングモールに来ていた。別にデートって訳じゃない、その辺りは色々と訳ありなんだ深く詮索しないで欲しい。
時刻は18時41分。今日は晩ご飯いらないよと拓也にメールを打っていると綾が途切れた話題に栄養を注すように思い出し口調で話しかけてくる。
「そう言えば濱部ってさ、桜野さんと良く分からん女と暮らしたやんな?」
今日の晩ご飯はシチューだと!?な、なタイミングが悪すぎる。どうせ暴食女ユズリハに全部食べられるだろうな……。
と、綾はまた青酸カリと言うなの栄養を注いでくるので、軽快なフットワークでスルーする。どうせユズリハの事を聞いてくるに違いない。もう何度問われた事か耳にタコが出来たぜ。
「なー? なーっ?」
明日の学校の予定は全部、実習かよー。ダルいな。なんて携帯電話で明後日の学校の予定を調べたりしておく。解説者も黙り込む突進してくる相手をも弄ぶかのようなテクニック。
「ムカっ」
ムカっなんて女の子らしくてプププと心の中でにやけ、綾で遊ぶ。
今日は休日だから人が多いなーと周りに向けていた視線を携帯電話に戻すと液晶の中心から放射状に広がるブラックホールと化していた。
「ん?……ぇえええ!!!!」
まぁ画面をタッチするとミリミリと鳴ると言う新たな効果音も追加されていた訳で綾は超笑顔でした。
その笑顔は真のホワイトホール。俺の携帯電話が吸い取ったすべてを吐き出していました。はい。
「ちょっと、タッチパネル式の携帯に興味があって、触ったらそんなんになるねんな。かっこ笑い」
ドスのきいた『かっこ笑い』は全ての悪の根元が詰められてる。
なんて女だ。悪魔だ。ただのビッチだ。
そんな言葉は言えるはずがない。自分の身体をタッチパネル感覚で綾にタッチされたら終わりだからな。