歩行者の横をびゅんびゅん
…ソウル都心で凶器と化した共有キックボード
特にソウル市松波区は、全国でシェアード・モビリティーの普及が最も進んでいる地域とされている。域内の電動キックボードの数は10月を基準に4500台と、ソウル市25区のうち松坡区の1カ所で全体の8分の1を占めている。さらに松坡区は、今年8月にソウル市内の自治区の中では初めてカカオと500台の電動自転車「カカオ・バイク」を区内の全域で使えるとする協約を結んだ。松坡区の歩道の総距離は19万7403メートルだから、40メートルごとにシェア・キックボードやシェアサイクルが配置されるか、走行するようになる計算だ。業界では「松坡区は、シェアード・モビリティー天国を目指すソウルの未来像」との話が持ち上がっている。
しかし、歩行者の多くがシェアード・モビリティーを不快に思い、恐怖を感じている。今月初め、ロッテタワーの前で出会った会社員のパク・チョルソンさん(32)は、歩きながらも周囲を注意深く見渡すくせが付いたという。パクさんは「私の横を猛スピードで掛け抜けるキックボードを見ると『横に一歩でも踏み出そうものなら大変なことになっていたかもしれない』と思うようになり、1日に3、4回驚かされることがある」と話した。実際、今年8月には冠岳区新林洞で、時速25キロで走って来たキックボードが60代の通行人と衝突する事故が起こった。同通行人は頭蓋骨骨折による脳出血で重傷を負った。
シェアード・モビリティーには、ソウル市が運営するシェアサイクル「タルンイ」のような専用駐輪場が設けられていない。利用を終えたら、通路脇に止めておけばいい。利用者にとっては便利だが、その他の人々には不快感を与える。蚕室駅近くにある飲食店のオーナーは「ランチタイムの終了後に、サラリーマンたちが店の前に止めていってしまったキックボードを遠くに移動させるのが日課」と語る。
「風船効果(風船の一部を押すと他の部分が膨らむような、副作用の出る現象)」でキックボードが1カ所に集まったりもする。「ライム」や「ビーム」などキックボードのシェア・アプリには、「駐車禁止区域」が赤で表示されている。「自宅前にはキックボードを立て掛けるな」と苦情があった地域だ。住民からの苦情が増え、住宅街やマンションなど団地周辺に赤色のマークが広がると、キックボードは飲食店街や住宅街への進入路に殺到した。10月10日、石村湖水近くの「ソンリダンギル」の入り口には、ずらりと10台が止められており、歩行者1、2人がかろうじて通ることができた。松坡区の関係者は「解決策を模索中」という。
現政権は、とりわけシェアード・モビリティー産業については、規制を相次いで緩和している。今年12月から施行される改正道路交通法により、電動キックボードの利用年齢制限が現行の「16歳以上」から「13歳以上」へと引き下げられる。現在は必須とされている運転免許証もこれを機に不要となり、自転車専用道路の利用も許容される。
こうした雰囲気の中、メーカーも雨後のたけのこのように誕生している。ソウル市内の事業用シェア・キックボード・サービス業者は、2018年12月の1社から今年8月には16社にまで増えた。同期間、これら業者が運用するキックボードの台数も150台から3万5850台へと増えた。
市場の過熱やメーカーの乱立で、シェアサイクルが都心の凶器と化した中国の二の舞いを演じかねない、と懸念する声も上がっている。中国国内のシェアサイクルは、2016年の200万台から1年間で2300万台へと10倍にまで膨れ上がった。供給過剰になったことで、管理が行き届かなくなった。高速道路沿いや河川、溝などに放置される自転車が増えた。北京市や広州市などが一足遅れで自転車の新規投入に制限を加えたものの、現在でも市の郊外には故障した自転車が「山積み」となっている様子があちらこちらで見受けられる。
朝鮮日報 イ・ヨンビン記者

