「だれかいる?」
そういえば、仕事から帰ってきて、あんまり疲れてベッドに直行したんだっけ。
みんな気を遣って暗くしてくれているんだろう。
念のためもう一回、
「おーーーい」
やっぱりだれも気がつかないか。ま、いーっか。
でも、部屋に虫のような羽音がずーっと聞こえているから、あとで殺虫剤撒いとこ・・・。
「御住職様、どうかなさいましたか?」
突然、枕経(通夜などで納棺前にあげる短めの読経)を中断した御坊に
この家の御内儀が恐る恐る声をかけた。
「一度、こちらの世界まで戻ってこられた気配がしたもので、確認をいたしました。
仏様は、まだご自分がなくなったことに気づいておられないようです。
少し、長く経を上げておきましょう。」
「是非お願いいたします。」
深々と頭を下げる遺族一同の姿があった。
ま、よくある話です。
気付かないで・・・ 了