夏休みに入るホンノ少し前だったかしら・・・とÅ子は振り返る・・・
ここは有数の大学進学率を誇る予備校の食堂。
・・・聞くともなしに、女子学生2人の会話を聞いていた・・・
「ねー、今度の<日曜補講>のやり方変わってるね?」
「え?、それ本気で<補講>って思っているワケ?」
会話の口火を切った女性の少しムッとした口調が伝わってくる・・・
「だって」
そのムッとした彼女は<日曜補講>のパンフレットをひらひらさせながら、
「予備校だって夏期講習の間でも、さすがに日曜日は休み!
でももったいないと思いませんか?
と題する”型どおりの”見出しの講習へのおさそい広告。
やる気のあるものは、本校舎に集まって<日曜補講>に参加しませんか?
でも、独り占めはご法度。場所も、われわれ教授陣も、部屋も限られているからね。
午前2科目、午後3科目程度しかできません。1教科の定員は8人まで。
●●セミナー室で行います。一回2時間。ごめんね!!
申し込みは、一人2教科までの早い者勝ち!
時間割と教授陣は下の表を見てね!!
最後に確認のため20分程度の簡単な模試もやります。
教授陣の一覧表には各々の形の印鑑が押してあった。
受講料は1回1教科2万円。すると、1人では1日4万円、4週あるとすると(今年は5週ある曜日もありますが、その辺はおまけして下さい)最高で16万の受講料」
「これって、よく考えられていると思うわ。セミナー室は10人用で、荷物置くのに8人はちょうどいいし・・・
値段も・・・少し高いかなー・・・」
「私が言っているのは、そーゆーことじゃないの。いい?ひとりの教師が貴方の苦手な単元をたった8時間ですべて教えますって言っているのよ?
古典の長文、物理の坂道の物体の摩擦係数、微分してから求める関数の接線の方程式の出し方、中近東の第二次世界大戦後の国境線の策定の東西問題・・・
ある程度基礎ができている人ならできると思うわ。でも私は自信ないなー。」
「でも、先生方の印鑑だって押してあったじゃない」
「あー、こんなの意外と簡単にできるらしいわよ。始めに本物をスキャナに取り込んで、似た感じの印鑑を探してきて、朱肉の色合いや彫り具合の厚さを調節するんですって。商売としてもなりたっているらしいわよ。」
「でも、私達の校舎内で、ビラを配っていた」
「それこそ簡単じゃない。10分くらいもいて、1-2人捕まればいーんだもの。ウチの学校、ID書けば銀行口座までわかるでしょ。10分座っているだけで16-32万儲かるんだから楽なもんよ。
でもここまでわかっているってことは内部犯だと思うけどね」
隣で聞いていたA子は次第に自分の顔色が変わっていくのがわかったと言う。
「トニカクえらいことになってしまった。自分はIDを書く欄にサインをしてしまった」。
幸いなことに、犯人はA子が詐欺に会った翌々日つかまった。
A子の隣にいた子の読みどおり、以前本予備校の職員であった。