「おー、オバチャン、金貸してくれよ」
「そーだなー、いーバッグ、持ってんジャン」
「チョットォ、おとーさん、こいつらなんとかしなさいよ!!」
異様なほどしつこい夏がやっと終わり、程よい小春日和になった秋分の連休。
朝遅くにノタクタ起きてきた子どもたちは、外の日差しをみると、大喜びで朝食を食い漁り、息つく暇なくケータイで友達と遊びに行く連絡を取っていたかと思うと、次の瞬間には兄妹揃って煙のように消えてなくなっていた。
後には出不精の我々中年夫婦だけが残っていた。
「ユーエンチでもいってみる?」
「電気・水道・交通機関完備の所ならいつでもつきあうわよ」
珍しく、二人だけで出てきたのがよくなかったのか?園のゲート付近で、早速ニョーボが不良グループに取り囲まれる。
私はキンチョーのあまり唾も出ず、タバコが下唇にくっついて離れず、もちろん足などすくんでしまって動こうわけがない。
「おとーさん!!いつも屁理屈ばかりで!モー!!肝心な時これなんだから。」
ごろつきの一人がすかさず
「だんなさーん、奥さんにきらわれてるみたいだよー」
連中から小馬鹿にしたような笑いがちょっと起こってすぐやんだ。
でも我々の状況に好転は見込めない・・
その時何を思ったのかニョーボが
「ちょっと、あんた、腕離しなさいよ」
「なんだ、奥さん、俺たちとやる気か?」
腕を払われた若者の顔つきが少し険しくなった。
「まさか、少し、化粧直させてよ」
と、バッグから取り出した口紅型の棒状のものをニョーボが青空高く掲げると、身長40mのウルトラマンに変身してしまった。
「ウワッ、今のはベータカプセルだったのか!!!」
ニョーボ、いやウルトラマンは悠々とチンピラどもを蹴散らし、前髪に隠してあった「非常用・麵づ◎りしょうゆ味」を2分半ほどの調理で平らげると、「かたい!」と顔をしかめながら天空高くとびさっていった。
以来、私はニョーボの姿を見ていない。