初夏の朝のオフィス街。前を行く人々の背中を見るともなく歩いていた。道行く人々は上着を脱ぎ、シャツ一枚という人がほとんどだ。
ん?
何かが私の目を捕らえた。いや、私の目は何かを捕らえた、か。ともかく私の視線はある後ろ姿に吸い寄せられた。
30歳半ば、まだまだオレは若いぜ! 最近飲み過ぎると次の日の午前中はちょっとつらいけどな……(想像です)という、ちょっと体育会系の残り香のする、推定身長178センチの男性だ。
そのたくましい首を包むシャツの首の後ろ襟に、遠目からもはっきり分かる「M」の文字が。
……ワンポイント?
だが、シャツ自体は白で、模様などはない。デザインであろうか?
アッ! わかった!
サイズシールを貼ったままなのだ! どうやらシャツはおろしたてらしい。
声をかけてあげるべきだろうか……と2秒ほど悩んだが、やめた。
おもしろい方に3000点!
あの男性はしばらく会社の話題を独占し、これからも事あるごとに周囲の人々を温かい気持ちにする……かもしれない。そういう雰囲気の会社であれば。
私は襟に「M」をくっつけたままと遠ざかっていく(足が速かった)後ろ姿にエールを送ったのであった。