と、聞いて「あれか」とわかる人はどれぐらいいるだろう。

 

 「男はつらいよ」は、戦後の昭和を代表する、山田洋次監督、渥美清主演のテレビおよび映画シリーズ……だが、この話はそれとはあんまり関係ない。いや、あるかな?

 

 ラジオを聞いていたら、1979年に沢田研二が歌った「カサブランカ・ダンディ」(作詞:阿久悠 作曲:大野克夫)が流れた。

 

 歌が始まり、しょっぱなから「あらあら、聞き間違いかしら」とどきどきするフレーズが出てくる。今、こんな歌詞を作ったら各種団体から抗議が殺到しそうだ。ちなみに歌のタイトルは、ズバリ、ハンフリー・ボガード(愛称ボギー)とイングリッド・バーグマンの出た映画「カサブランカ」から。それこそ「あれか」とわかる人はどれぐらいいることか。

 

 まあ、歌詞はこの時点ですでに「あんたの時代はよかった」と懐古しているので、実際は「冒頭の歌詞にあるようなことはできなくなっちゃったんだよ、ボギー」と言う嘆きの歌なのだが。

 

 

 折しも、新聞を読んでいたら男性の婚活についての記事が出ていた。バブルの頃もてはやされた「三高」(知らない人は調べてください)は、もはや死語かと思いきや健在で、ますます厳しくなって男性陣を追いつめているそうだ。

 

 バブルから20年以上経ち、女性の社会進出が進んだ。その結果、高学歴高収入の女性が増えたそうで、彼女たちは結婚相手に「自分と同じかそれ以上」の年収を望む。低収入の男性は、その時点で“除外”される。

 

 高収入なら引く手あまたかといえば、次に出てくるのが「見た目」。ファッションに気を遣い、女性受けする趣味を演出する。だがマッチングアプリは男性を可視化し、強力なフィルターとなる。いやいや、それこそバブル期に盛りに盛ってボディコンで合コンに出陣した女性たちの「企業努力」を彷彿とさせる話である。

 

 

 「君の瞳に乾杯」ボギーのモノクロ映画「カサブランカ」から、沢田研二の「カサブランカ・ダンディー」、そして2024年の男性婚活事情。足かけ80年(!「カサブランカ」が1942年公開なので)の男たちの変化は感慨深い。しかしそのスピードは加速している。10年後は想像もつかない形に変化しているかもしれない。

 

 「男はつらいよ」の形がどんどん変わっていくわけです。はい、きれいにまとまりましたね。