仕事で評や文書、あるいは文章を作ったあと、見直しをしたことがある人ならわかるだろう。誤字脱字は比較的気づきやすい。だが、ウルトラC級にに気づくのが難しいものがある。

 

 私の知り合いの会社がまだ自前の手帳を刷っていた頃の話だ(今は経費削減で、手帳はおろか販促品は一切作ってもいないそうな)。手帳の一番最後に全社の住所一覧があった。担当だったその人は原稿と照合してゴーサインを出した。

 

 だが、刷り上がってしばらくして、大変なことがわかった。

 本社の情報が抜けていたのだ。

 

 そんな手帳、会社的には何のPRにもなりません! というか、はっきり言って恥ずかしい。

 見落としか! と原稿をめくってみたら…………

 

 原稿時点からありませんでしたとさ!

 

 そう、「ないもの」に気づくのは大変難しいのだ。

 

 ◆

 

 だが、人間は自分が持っているものには気づかない。

 

 例えば、何もないときに健康であることのありがたさに気づかない。なくさないと気づかない、それが人間であるらしい。