祥鈴庵圓珠です。
天台宗は伝教大師最澄さまが開かれた宗派。
現在では真言宗と並び立つ密教の宗派と思われているのですが、
もともとは法華経を根本経典とし
全ての衆生が仏になれると説く法華一乗の教え。
中国の天台智顗の説かれた天台宗を日本に持ち込むと共に、
密教、禅、念仏、戒律なども併せて学ぶことを重視した
四宗兼学の伝統を持っています。
最澄さまが開いた比叡山で学んだ著名な僧侶は多く、
法然、親鸞、栄西、道元、日蓮などの各宗派の開祖も
このお山で得度や修行をされました。
当時の仏教では非常に戒律が重視されていました。
日本に伝来した６世紀当初、日本には戒律を授けられる僧侶がおらず
戒律を授ける場所である戒壇もありませんでした。
その状況を憂いて唐から鑑真和上をお招きし、
天平勝宝６（754）年に東大寺に戒壇を築きましたが
それ以来、授戒を行うことのできる場としての戒壇は
南都仏教に独占されていました。
最澄さまは大乗菩薩戒を授けることのできる戒壇を
比叡山に開く勅許を何度も重ねて天皇に求め、
大変に尽力されましたが生前にはついに
戒壇を築くことはできませんでした。
比叡山に戒壇院が建立されたのは入滅の5年後。
今回公開の戒壇院と法華総持院はその教えに関する
重要な二つの施設です。
戒壇院は比叡山に学ぶ天台宗僧侶の授戒の場。
生涯に一度ここで戒を授かり、正式な僧侶になります。
ほとんどの方がその時だけしか入ったことのない戒壇院。
ここを拝観できる滅多にない機会です。
現在のご本尊釈迦牟尼仏は1987年に造立されたものですが、
伝教大師当時の様式によって新調されたということです。
僧侶にとって授戒は大変重要な儀式です。
以前にも少し書いたことがあるかと思いますが
戒律は仏教の修行者として守るべきルール。
戒律に従って生活を整えることで仏教の教えを身につけていくための
基礎を養います。
僧侶の序列は、僧階によるものや役職によるものとは別に
﨟次（らっし）というものに従います。
これは出家してからの年数のことですが、
得度授戒してから安居という集団修行の夏を何度過ごしたかを
数えます。
この起点となるのが授戒した時。
それくらい重要なタイミングなのですね。
その重要な時を迎える大切な場を他宗の者でありながら
拝観させていただけるのは実に感動的です。
僧侶でなくてもその荘厳な様子には身が引き締まるように
感じられると思います。
そして法華総持院。
これは最澄さまが全国の要所６ヶ所に国家鎮護のために
経典を納めて建立された六所宝塔のうち、
比叡山にあった東塔を1980年に再建したものです。
法華総持院東塔から見た琵琶湖。最澄さまもご覧になった風景かもしれません。
法華は久遠の釈迦牟尼仏の説く大乗仏教の教え、
総持は密教の教え。
この二つを融合した円密一致の思想がこの名に表されています。
最澄さまにとってとても大切な二つの建造物。
新しいものではありますが、天台宗の教えのエッセンスを
凝縮した重要スポットです。
そこに立つことで、時を超えて過去のたくさんのたくさんの僧侶が
見て、学び、感じたものをうかがうことができるかもしれません。
拝観期間は残り少ないですが、紅葉や琵琶湖の景色とともに
伝教大師最澄さまや比叡山で学ばれた綺羅星の如き先賢の方々が
ご覧になっていただろう同じ景色をぜひ見に行ってください。
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