「貸してあげなさい、二人で遊べばいいじゃない」
そういう私に息子は、キッと顔をあげて声をあげた。やだ!僕のトミカビル!
「そんなこと言わなくてもいいじゃん…」
言いながら、頭の中にぼんやり景色が浮かんだ。
私が子供だったとき。母親に貸してあげなさいといわれて、ぜったいヤダ!とリカちゃん人形を抱きしめる私。
すごくイヤだった感情が溢れて、ため息をついた。
「まあ、イヤだなわ。うん、娘っこ、諦めなさい」
ふぎゃあああんと娘が泣いた。
正直これが面倒なだけなのだ。娘が泣くのが。仲裁するのが。だから「仲良くしなさい」という。私が面倒じゃないように。全く子供の考えなどどーでもいい、私が楽できる、一般常識を置いてる。
私のオモチャなのに、なんで貸さなきゃいけないの? ぜったいヤダ。
そう思った感情を明確に覚えてる。それによって何か歪んだ覚えがないのは、結局貸さなかったからだと思う。
私は自分が楽したくて、家事したくて、二人で仲良くしてほしいと思ってる。小さな子供が二人で仲良く遊ぶなんて無理に決まってる。
「よし。息子くんには机の上を開放します。これから邪魔されたくないときは、ここに全部上げな」
いつもは畳んである大きなテーブルを広げた。
わああい!息子は嬉しそうに机の上にオモチャを広げ始めた。
「ねえママ、ここ息子くんの場所だね」
そうそう。私は机の下に娘と転がった。まあ結局楽したいんですけど。
二児の母なんてそんなもんだ。
どうして忘れていたのだろう、私も昔は子供だった。
私がイヤだったことから守ろう。そして君を見よう。