〜初めての潮吹き⑥の続き〜

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「ねぇ… お願い…なかにだして?」


彼の耳元でそう囁くやいなや、

彼は私に密着して動きやすい体勢になり、

おもむろに激しく下半身をうごかし始めた。


そして、数回前後した所で、あぁっ気持ちいい!と、大きな声を出し、そして動きがおさまった。


彼がそんな無防備な姿を見せるのは

今までで初めてだったかもしれない。


彼が放出しきるまでの短い間、

抱きしめられていることに

私は高揚し満たされるのだった。


右肩に、脱力した状態の彼の頭が乗っていたので、

小さな声で、大好きと囁いた

彼はふふっ、と微笑んだ。


セックス中だし、すごく気持ち良かったから

うっかり口から出てしまっただけ(?)だと思うが、

そんなことを口走ってしまった。


彼がわたしのなかに放出したあと

お互い汗だくのままで

彼の力強い拍動を感じながら

抱き合って密着している時間は

なんとも言えない高揚感と幸福感(?)と充足感に

満たされる。


しばし抱き合ったあと、

彼ははいっていた部分をずるっと抜いた。

それと同時に、

液体がドロッ、、とあふれでたことが、

私の太ももやお尻の皮膚を介して伝わってきた。


ずっと身体の上にいて抱きしめていて欲しかったが、

彼はスッと身体を離して、私の隣に仰向けになった。


私は、気持ちよさと

潮を吹いてしまった恥ずかしさとで、

布団で顔を隠していた。


はぁ、、またこうなっちゃいましたね。

本当に、いつまでこんな事を続けるんでしょうね。」


「ふふっ、僕たちは一生続くんだよ?」


聞かなかったことにして続けた。


「よく、ドラマとか小説だと、あり得ない関係の男女がそうなっちゃったり、同じ相手と何度も別れたりくっついたり繰り返すのあるじゃないですか? 私そういうのって全部フィクションだと思ってました。でも、本当にあるのかもしれないですね。」


「そうだね、いつまでもそういうの続ける人は続けるんじゃない?歳をとっても色恋にうつつを抜かしていられるのは、ある意味で幸せなんじゃないのかな」


そうなのかもしれませんね」


(色恋?恋?わたしたちの関係は身体だけでしょう)


“私たちは、色恋じゃなくて身体だけの関係でしょ?"と、口に出して確かめてみたいのをグッと呑み込んだ。


“そうだよ?"も、“違うよ!”も聞きたくない。


“そうだよ”は悲しくなるし


“違うよ”は困る。


その中間の、曖昧な答えを聞くのもイヤだ。


『どうせ彼とは刹那的な関係』と

思い込むと決めたんだから、それを貫く。

だから、余計な事は言わないし聞かないんだ…。


私がそんなことを思ってるなんて知りもせず、

彼は相変わらず、欧米人が熱心に筋トレする理由や、自分も筋トレを始めた事、お気に入りのジョギングコースなどを話していた。


いつまでも話は尽きない感じだったが、きりのいいところでシャワーを浴びに行った。



シャワーを浴びて出てくると、

彼は私がバッグに入れていた本を熱心に読んでいた。オペラがテーマの、少し堅苦しい本だ。


「あれ?それ読んでるの?面白いですか?」


「うん、僕こういう本は結構好きだよ。それにしても、最初の10ページくらいが全部モーツアルトに対する愛情の表現で埋め尽くされてるの。よっぽど好きなんだね。」


「そうですね、熱烈ですよね。偏愛というか。

ずっとその調子でテンション高いの。」


「僕もこの本買って読んでみるよ。」


「そういう本、好きなんですね。なんだか意外です」


「ねぇねぇ、またランチしよう?」


「え?」


「今回みたいに2日に分けて会うと色々話せていいなと思って。」


そうですね」


ホテルの部屋を出る直前、ドアを開けようとしていた彼を引き止めてキスを迫った。


「キスしよ?」


彼は振り返りざまに、悪戯ぽい目をして、マスクをしたままキスしてきた。


なんかマスク越しのキスって新鮮で良いですね」


「僕も初めてしたよ」



帰路につく電車の中から彼にメッセージを送った。


【潮吹いちゃうって、ああいう感じなんですね

初めて知りました。変なスイッチを付けられちゃった感じです】


【気持ち良かったでしょ?】


【はいすごく。でも、おもらししてるみたいで相当恥ずかしかったです。】


【また恥ずかしい所を僕に見られちゃったね。】


【だから、記憶から消してリセットしないと】


【ふふ、リセットできるかな?身体の記憶を消すのは難しいよ。】


そんなことは無いはず、、もうあまり会わないようにしていけば大丈夫、、。

そんな事を思って、メッセージのやり取りはそこで終わらせた。


※でもその後、彼が言っていたように

身体に刻まれた記憶の強力さを実感することに

なりました。