※この話の続きです。
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職場の近くに現れた彼(11)
彼が遠くの赴任先に行く日にちは具体的には聞いていなかったけれど、もうすぐだ。
それに向けてスッキリお別れしたはずなのに、
またこうやって抱かれている。
そもそも人に言えない関係で、おまけに彼の結婚を機に1度はキッパリ別れたはずだ。今回も彼の海外赴任を樹にキッパリ別れたはず。
それなのに、結局こうなっている。
結婚の時も海外赴任の時も、彼の方から
「けじめをつけましょう」「距離をおきましょう」と
言ってきたのだ。
私はそれに従った。
それなのに、彼の方から「また会いたくなった」と言ってくる。
私も、会わなければいいのに
結局会ってしまった。
元々、あってはならない関係で始まった。
そして、別れても会ってしまう。
そして、セックスが最高に気持ち良い。
ただでさえ“適切な関係”じゃないからこそ
常に別れなきゃと思い続けてきて、
何度キチンと別れ話をして線引きしても
結局この快楽に抗えないことを悟った。
もはや、自分たちの関係性については、
考える事を放棄した。
彼がはいっていて気持ち良いのと、嬉しいのと、
あれこれ考えるのを放棄した開放感とで、
快感も高まり、身体じゅうから色々な液体が溢れた。
気持ち良いし嬉しいのに、
なぜか抱かれていて涙が出てきたり、
彼の唾液がいつにも増して甘く美味しく感じたりした。
五感と感情がバグを起こしているようだったけれど、全ての働きが、『快』に向かっていた。
抱かれながら、“仕事帰りにいきなり職場近くに来た彼と、食事してドライブしてラブホテルにはいってセックスをするって、もしお互いが好き同士だったらすごく嬉しい事なんじゃない??”と思った。でも、それを彼には言わなかった。
私は、彼に対しての気持ちを
殺さなきゃいけなかったし、
10年以上ずっとそうしてきて、
それに慣れてしまった。
なので、もはや自分の気持ちが分からない。
だから、これまで彼に『好き』とか言った事はない。
彼にとって私は、単なる性欲解消の相手と思った方が気楽だったから、それで良かった。
私にとっても、彼は身体だけの相手だと思った方が
気楽だったから、
それ以上は考えないし求めなかった。
この10年あまりの間、私が彼に言う言葉は、
『好き』じゃなくて『気持ち良い』とか、
彼のセックスの上手さを褒める言葉だけだった。
自分で確実に本当だと思えることしか言いたくなかったから。