ホテルに来た時よりもだいぶ歩いた気がするが、
なかなか駅に着かない。
「道、合ってますか?」
「うん、こっちに向かえば着くよ」
「なんか来る時よりもけっこう時間かかってるから」
ちょうど、街の中を流れる川の川べりを歩いていた。
夕暮れが近くて、周りにひとけもなかった。
彼は、その川にかかっている小さな橋のたもと、
コンクリートの柱の所に私をつれていった。
大きな木が植えてあって、
ちょうど物陰になっている。
「なに?」
「キスしよう?」
「え、ここで?どうして?」
「もうすぐ子どもが産まれるから、しばらく会えなくなると思うから。だから今も遠回りして歩いたんだ。」
私は、嬉しい気持ちと寂しい気持ちと、
あぁやっぱりその話をされたか…という
諦めの気持ちが織り混ざった気分になった。
でも、そういう風に、ちゃんと私に言った彼は
ある意味きちんとしてるな…と思った。
彼は私にそう言うべきだ、そう思っていた。
そして、彼はそうした。
私は、なにも言わずに、彼がキスしやすいように
身体を寄せて顔を近づけた。
さっきまでのホテルでのディープキスとは違う
さらっとした軽いキスをされた。
(お別れって感じ)
(彼と路上でキスするのは、初めて彼の家に行く直前のあの時以来だ。あの時は、キスだけですごくドキドキしたけど)
(このキスは、ドキドキもしない、
けじめのキスって感じ)
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