ホテルに来た時よりもだいぶ歩いた気がするが、

なかなか駅に着かない。


「道、合ってますか?」

「うん、こっちに向かえば着くよ」

「なんか来る時よりもけっこう時間かかってるから」

ちょうど、街の中を流れる川の川べりを歩いていた。

夕暮れが近くて、周りにひとけもなかった。


彼は、その川にかかっている小さな橋のたもと、

コンクリートの柱の所に私をつれていった。

大きな木が植えてあって、

ちょうど物陰になっている。


「なに?」

「キスしよう?」

「え、ここで?どうして?」

「もうすぐ子どもが産まれるから、しばらく会えなくなると思うから。だから今も遠回りして歩いたんだ。」


私は、嬉しい気持ちと寂しい気持ちと、

あぁやっぱりその話をされたかという

諦めの気持ちが織り混ざった気分になった。


でも、そういう風に、ちゃんと私に言った彼は

ある意味きちんとしてるなと思った。

彼は私にそう言うべきだ、そう思っていた。

そして、彼はそうした。


私は、なにも言わずに、彼がキスしやすいように

身体を寄せて顔を近づけた。

さっきまでのホテルでのディープキスとは違う

さらっとした軽いキスをされた。


(お別れって感じ)


(彼と路上でキスするのは、初めて彼の家に行く直前のあの時以来だ。あの時は、キスだけですごくドキドキしたけど)


(このキスは、ドキドキもしない、

けじめのキスって感じ)


ーーーーー


▶︎(プロフィール画面の、フォロー中•フォロワーの数字の近く)→「すべての記事」→「テーマ別」に進むと、分類がありますトランプハートトランプクローバートランプダイヤトランプスペードトランプジョーカー虫めがね



このブログの構成についてはこちらをご覧ください。

↓↓