診察室を出るときに、
声をだして挨拶ができなかった。涙声になってしまいそうだったから。
トイレに直行して、泣いた。
目の周りが赤くなり、鼻水が出た。
この気持ちを、
妹や友人にぶちまけたいと思った。
でも、言えることではない。
不倫相手と避妊せずセックスをして、
その翌日が排卵日で、
妊娠したもしれないけれど
アフターピルを飲むのが辛くて泣いているなんて、一生軽蔑されるかもしれない。
医学の進歩や、簡単に薬が手に入る時代に
感謝しながら、何食わぬ顔で生活するのだ、と
自分に言い聞かせて、待合室に戻った。
色んな年齢の女性が、
数十分前の自分のように問診票を書いている。
この中にも、自分と同じくアフターピルの処方をお願いするために受診した人がいるかもしれない。
自分だけだと思って泣くのはやめよう。
感傷にひたるのもやめよう。
こんな気持ちに
ひとりで耐えなければいけないのは、
許されない関係を続けている
当然の代償なんだから。