ある日、SNSのタイムラインに
彼の投稿と写真が流れてきた。

“妻が海外出張から帰ってきました。僕が手料理を作りました”という記事がアップされていて、

そこには手の込んだ、

彩鮮やかなイタリアンの写真が掲載されていた。電車に乗っているときに

偶然、目に入ってしまったのだ。


(なにこれ


私は、いつになく気落ちした。

彼が既婚者であることは

もちろん分かっていたし、

彼のSNSで結婚式の写真や

婚約式の写真を目にしたこと、

友人たちと食事会をした写真なども

何度か目に入った。


その時は、仲よくやっているようでよかった、と姉か母親のような気持ちになったものだ。

 

それなのに今回は、

得も言われぬ悲しさを感じていた。

奥さんに対する嫉妬とかではなく、

彼が私の誘いを断っておきながら、

こんなに素敵な手料理を奥さんに作り、

誰もが見られるSNSに掲載するという

無邪気さ•無神経さが辛かった。


(私が見たらどう思うとか、

何にも気にしてないんだな…)


(こんなに手の込んだ料理を作るには、

買い出しも大変だし、

時間をかけて1品ずつ作ったはず


頭では、生活を共にするのは

奥さんなんだということは重々承知なのに、

胸に重石を置かれたような、ズーンと沈んだ気持ちになった。


気が付くと、逆方向行きの電車に乗っていた。

次の駅で慌ててホームに飛び出した。

そして元の駅まで戻り、

乗り慣れている環状線に乗り換えた。

(こんな真昼間から電車乗り間違えるなんて、

どうかしてる

大事な講習会に遅れてしまうから

急がなきゃ)

 

ホームに到着した電車に慌てて飛び乗って、

彼の手料理のこと、

それを美味しそうに食べたであろう

奥さんのこと、などをぼーっと考えていた。

はっと気づくと、

反対周りの環状線に乗っていた。

再び次の駅で飛び降りる。

(何やってるんだろう。いつも乗っている路線で、2回も逆方向に乗ってしまうなんて。)


今から目的地に行くと、

どんなに急いでも

講習会終了10分前に着けるかどうか、

という状況になってしまっていた。

しかも、どの電車に置いてきたか、お気に入りの雨傘を持っていないに気が付いた。

(だめだ しっかりしなきゃ。)


あんな、料理の写真1枚で、

お気に入りの傘を無くした上に

せっかくの講習会のチャンスも

失うなんて馬鹿げている。