しばらく彼とは距離を置こうと思い、
あっという間に1か月近くが過ぎた。
親密なやり取りもしなくなって、
だいぶ気持ちが穏やかになっていた。
いい感じに離れていけそうな気がしていた。
そんな時に彼から突然メッセージが来て、
久しぶりに会うことになった。
”◯◯庭園で会いましょう“
そんなメッセージにドキドキが止まらなくなる。
”花のきれいな季節になったから、
庭園のお散歩でもしましょう。久しぶりだから
話したいこともあるし”とも書かれていた。
(庭園っていうことは、爽やかにお散歩でもするのかな?
前みたいにセックスするわけではないってことだよね。これでやっと
穏やかな関係になれる。それなら後ろめたさを
感じることなく彼と交流していけるから良かった)
健全な関係の始まりに爽やかな期待をして、
胸を高鳴らせて地下鉄構内から地上に出た。
ひんやりした風が吹いていた。
待ち合わせ場所は交差点だった。右に曲がったら庭園が見える。合流したらこの道を歩いていくのね。と見当をつけた。
彼は交差点の、ななめ向かいのブロックいた。
思わず手を振る。
庭園に行くなら、彼がこちら側に渡ってくるはず。どうしてこちら側に渡ってこないのだろう?と不思議だったが、
こちらに渡ってくる様子がないので
私が彼のいる側に渡った。
路上で顔を向かい合せるや否や、
彼は一気に言った。
「今日は、僕、言わなければならないことがあるんです。家にいらしていただいてもいいんですが、実は彼女ができました。結婚も考えています。」
「えっ?」
突然の報告に、とても驚いた。
でも、純粋に良かったと思えた。
これで彼も、
既婚者の私と時間を無駄にするのではなく
まっとうな結婚生活に入るのだ。
祝福の気持ちが自然に湧いた。
「おめでとうございます...。それをはっきり言うところが面白いですね。でも、らしいですね。それに、はっきり言ってくれて嬉しいです。」
「彼女のものが色々置いてあるのが気にならなかったら、ですが、うちにいらっしゃいますか?」
「…はい、そうですね。」
そして、彼のマンションに向かって歩き始めた。
道々、嫌がらせメールはまだ来るか、とか、いつ来たかなどに関して色々きかれた。なんとなく、疲れていて参っているような雰囲気と口調だった。
「本当にごめんなさい。tefeさんに嫌な思いをさせてしまって。tefeさんの生活を壊すようなことは絶対に避けなければいけないと思っています。」
「はい。そうですね。そうしてもらえると助かります。」
そして、今後は別の連絡手段を検討しましょうという提案があり、これまで使ってきた方法ではなく、新しいSNSサービスでセキュリティがしっかりしているというアプリを勧められた。
そのことに関して混乱した。
(え、ちょっと待って、結婚するんでしょ?
新しい連絡手段を提示するって、いったいどういうこと?? もう連絡しないって言ったら私が悲しむと思って気をつかってるの??)
でも、彼は結婚するんだから、
もうこの関係は終わりだ。
彼自身が前にそう言っていたではないか。
だから、彼の提案は適当に流した。