​彼は、過労だと自分で言っていただけあって

スヤスヤ寝てしまっていた。


外で会うときやセックスの最中の

キリっとした感じや優位に立っている感じとは

また違う、無防備な姿を

ゆっくり見ていられることに

なぜか幸せを感じてしまった。


軽くいびきをかいたり、数秒の間息がとまったり、スースーと寝息をたてたりする彼を見つめながらドキドキしている自分に気が付き、

なんとかもう一度、さっきのようなフワッとした夢をみるくらいの浅い眠りに落ちたいと念じた。


でも、いったん目が冴えてしまったら無理だった。

腕枕の態勢から、肩や胸に頭を乗せてみたり、

彼に背を向けてみたり、肩を掌で抱きしめてみたり。


疲れている彼を休ませてあげたい反面、

一緒にいられる間にくっついていたいと思っていた。

が動くたびに、抱き寄せようとしてくれ、

背中をむけたときには肩に顎をのせて

吐息を頬に吹きかけてくる彼

(もちろん、彼はただ寝ているだけなのだけれど)

えもいわれぬ愛おしさを感じていた。


でも、その感覚には絶対流されないと決めている。

彼とはセックスするだけ。

あとは、なんでもない関係でいる。

だから、好きとか愛してるとかは言わない。

彼はどうせいなくなる人なんだし、

そもそも

こんな関係になってはいけない人なんだから。



しばらくして、彼が目覚めた。


​私は、男性にモノを贈ることは好きではなかった。特に、形が残るものは。

もし関係性が悪くなった場合、

男性がそのモノに執着してずっと手放さずにいられてもこわいし、

逆にせっかく選んだものがゴミのように捨てられることになっても嫌だ。


でも、時節柄バレンタインデーも近かったので

チョコレートを準備してきていた。

ほんの数粒入りの、その場で食べ終えることができる程度の量だ。


帰りがけに渡すと、喜んでくれた。

一緒に食べながら、

「ストイックな感じがするから、甘いものは食べないポリシーだったら迷惑かと思ったけど」

と言うと、

「ストイックというより、むしろ緩いです。ストイックだったら、tefeさんとこういう関係になってないですよ」と笑った。


私は、ランチ後に言いたかったけれど

言えなかったことを言うなら今だと思って言った。


「こうやって会えるのも、もうあんまりないかもしれないから、チョコ渡せてよかったです」


彼は、クールであっさりした返答をするかと

思いきや、

少し寂しそうな表情で「そんな」と言った。

そのことが私を満足させた。