一緒に浴室から出て、バスタオルで身体を拭いて、
そのままベッドに連れて行かれて押し倒された。
ほとんど無言で、ベッドの上でディープキスをされているうちに、もうぐしょぐしょに濡れていた。
最後だと思ったからなのか、恥ずかしいほどの量が出ているのを感じた。
(...彼と10年以上セックスしてきたけど、けっきょく毎回、キスだけで濡れちゃって、前戯ってほとんどしなかったな。。)
彼の手が、太ももの間に滑り込む。
「あぁ、もうこんなになっちゃってたんだね。どうしてほしい?」
「......」
私は無言で彼の下半身に脚を絡めた。
「くっついていたいです...」
「ふふっ、可愛いよ。じゃあいれるね」
「...ううっ...!」
「あぁ、中がすごく熱いよ。僕のをいれてほしかったんだね。嬉しいなぁ。」
彼は、いつも通りに、絶妙な動きで私に快感を与える。
私は、今日は食事の時から、
会うのはこれで最後だと思っていたので、
彼に抱かれて気持ち良いというだけではなく、
最後のセックスだと思う事で
胸に込み上げてくるものがあった。
彼とのセックスはいつも
あれこれ話しながらすることが多かったけれど、
今回は、
言葉を発すると
涙が出てしまいそうだったから、極力こらえていた。自ら動くのも、なるべく控えて抑制していた。
そのうちいつの間にか、どうせいなくなっちゃうんだから、このセックスもさっさと終わって、
こなすべき1つの儀式にすぎなかったような
冷めた印象のものにして
彼の事をキッパリ忘れられればいい。
なぜか、そんな投げやりな気持ちになってきた。
いなくなる人との最後のセックスが
最高に良いなんてことは無いといい。
そうじゃないと、彼がいなくなったあと哀しくなって仕方ない気がした。
それでも、彼の動きに伴って快感が強まってくると、声をこらえきれなくなってきて、どうしても、
我慢を超えた声が漏れた。
「...ぅああっ...!」
「ふふっ、その声いいね。我慢できないって感じ。ほら、ほら、こういうの気持ち良いでしょう?」
「ううっ...」
私の頭の中では、今までの10年の事とか、これから会えなくなる事とか、色々な事が巡っていた。
それなのに彼は、感傷的な様子は全然なくて、
普段通りに私を攻めてくる。
それでも私は、”そもそもわたし達の関係ってそんなもの。もともと身体だけの関係なんだから、感傷的な事を言っても仕方ない”と思って、何も言わなかった。
一方で、言葉を発しない事で逆に快感が高まってきたりして、気持ちと身体が全然連携していなかった。
こんな時くらい、濡れないとか感じないという風になりたいのに、むしろいつも以上に濡れて感じてしまって、そんな自分の身体がイヤだった。