遠方への転勤が決まった彼⑥

一緒に浴室から出て、バスタオルで身体を拭いて、

そのままベッドに連れて行かれて押し倒された。


ほとんど無言で、ベッドの上でディープキスをされているうちに、もうぐしょぐしょに濡れていた。

最後だと思ったからなのか、恥ずかしいほどの量が出ているのを感じた。


(...彼と10年以上セックスしてきたけど、けっきょく毎回、キスだけで濡れちゃって、前戯ってほとんどしなかったな。。)


彼の手が、太ももの間に滑り込む。

「あぁ、もうこんなになっちゃってたんだね。どうしてほしい?」

......

私は無言で彼の下半身に脚を絡めた。

「くっついていたいです...

「ふふっ、可愛いよ。じゃあいれるね」


...ううっ...!」

「あぁ、中がすごく熱いよ。僕のをいれてほしかったんだね。嬉しいなぁ。」

彼は、いつも通りに、絶妙な動きで私に快感を与える。


私は、今日は食事の時から、

会うのはこれで最後だと思っていたので、

彼に抱かれて気持ち良いというだけではなく、

最後のセックスだと思う事で

胸に込み上げてくるものがあった。


彼とのセックスはいつも

あれこれ話しながらすることが多かったけれど、

今回は、

言葉を発すると

涙が出てしまいそうだったから、極力こらえていた。自ら動くのも、なるべく控えて抑制していた。


そのうちいつの間にか、どうせいなくなっちゃうんだから、このセックスもさっさと終わって、

こなすべき1つの儀式にすぎなかったような

冷めた印象のものにして

彼の事をキッパリ忘れられればいい。


なぜか、そんな投げやりな気持ちになってきた。


いなくなる人との最後のセックスが

最高に良いなんてことは無いといい。

そうじゃないと、彼がいなくなったあと哀しくなって仕方ない気がした。


それでも、彼の動きに伴って快感が強まってくると、声をこらえきれなくなってきて、どうしても、

我慢を超えた声が漏れた。


...ぅああっ...!」

「ふふっ、その声いいね。我慢できないって感じ。ほら、ほら、こういうの気持ち良いでしょう?」

「ううっ...

私の頭の中では、今までの10年の事とか、これから会えなくなる事とか、色々な事が巡っていた。

それなのに彼は、感傷的な様子は全然なくて、

普段通りに私を攻めてくる。


それでも私は、そもそもわたし達の関係ってそんなもの。もともと身体だけの関係なんだから、感傷的な事を言っても仕方ない”と思って、何も言わなかった。


一方で、言葉を発しない事で逆に快感が高まってきたりして、気持ちと身体が全然連携していなかった。

こんな時くらい、濡れないとか感じないという風になりたいのに、むしろいつも以上に濡れて感じてしまって、そんな自分の身体がイヤだった。