「ねぇ、耳をかんで...?」
彼は舌先を細くして耳の中に入れて
小刻みに舐めてきた。
舐める音が、いやらしく耳の中に響く。
「ううっ...いやっ、音がいやらしい… 」
「普段はおすまししてるのに、こんなことされて気持ちよがる姿のギャップが堪らない。この姿を見てるといじめたくなっちゃうんだよね」
彼は、くっついたまま、
おもむろに私の太腿を左右に大きく開くと、
急に乱暴に突き上げてきた。
「ううっ… 本当に無理矢理されてるみたい…」
私は、何度も何度も、快感に身体をくねらせた。
「...本当に悪い人ですよね。ちょっと変態的っていうか。豹変ぶりを見れてなんか嬉しいけど...」
「えっ…?」
「だって普段は紳士っぽいし、すごく良い人っぽいのに。実はドSで…。」
「ふふっ、そうだよ。」
「わたしたち、お互いさまなんじゃないですか...」
私は、珍しく自分から挑発的な事を言って
彼の顔に手のひらを当てた。
「ねぇ、耳を噛んで、もっと痛くして…?私、痛くされるの好きなの。でもね、相手は誰でもいいってわけではないんです...」
いらやしい水音をたてながら耳を舐め、
ときどきギュッと噛んでくる彼。
鋭い痛みなのに、すごく感じてしまう。
「...っは〜ん...!気持ち良いっ...」
「痛くないの?」
「痛いけど気持ち良いの...もっと痛くして...」
くっついたままの下半身と耳の両方から
いやらしい音が溢れてきて私の気持ちが高まった。
「他の人に、もしこういう事されたら、は?何するの?って思っちゃうと思うんだけど...なぜか今は
何されてもいいっていうか、むしろ痛い事とか酷い事されたいって思っちゃう…」
快感のあまり意識朦朧としていた私は、
本当にその時に思っている事をただ口にした。
「嬉しいな。僕の事を好きなんだね。」
「え…?」
「それ、言う主体が間違ってませんか?私が言うならわかるけど。自分でそんなこと言います…?」
「だって、僕にだったら何されてもいいって
思うんでしょ?それって、僕の事が好きって事なんだよ。」
「 …よく分からないです…」
そういう気持ちに近い感情は、
ここ10年の間に何度も感じた事があったけれど、
お互いの事や将来の事を考えて封印したのだ。
好きとかそういう感情を持ってしまうと
この関係はやるせなさすぎる。
私は彼から顔を逸らして、右上の何もない宙を見た。