シンデレラは今日もお父様のお家でお掃除と洗濯、玄関に飾られた一輪のバラを眺めては、ため息をつき、「いつか王子様が」と、舞踏会を夢見ています。
ある夜、一日の仕事を終えたシンデレラは鏡に向かって言いました。
「鏡よ鏡、鏡さん、私のまだ見ぬ王子様はいったい今どこで、どうしているのかを教えてちょうだい。そもそも、私には王子様なんているのかしら?」
すると鏡には一人の青年が映りました。
目は青く透き通り、輝く金色の髪がゆれています。
どこか、はにかんだ愛らしい笑顔。
真っ赤な柔らかい唇からは優しい歌声が。
「ああ、私の王子様、なんとお美しいのでしょう!」
シンデレラは一目で恋に落ちました。
すると魔法使いが現れました。
カボチャの馬車と鼠の馬に乗って、ガラスの靴を履いたシンデレラはついに舞踏会に来たのです!
そこには、あの王子様が。
二人はワルツを踊り夢のような時間が流れました。
「ああ、もう12時。行かなくては・・・」
慌てて家にたどり着いたシンデレラはガラスの靴が片方、無いことに気づきました。
その日以来、シンデレラはいつか王子様が靴を持って迎えに来ると信じて、毎日を過ごしました。
そして3ヶ月が経ち、半年が経ち、遂に1年が経ちました。
シンデレラは毎日ドアを眺めては、ため息ばかり。
王子様は一向に現れません。
「なぜ?」
ある夜、シンデレラは決意しました。
「そうだわ、王子様に会いに行こう!」
森に入り、地図も無く、カボチャの馬車に乗って走った道を、記憶をたよりに歩きました。
「お城はどこ? 確かこの道だったかしら?」
そして途方に暮れたシンデレラは、鏡を取り出し問いかけました。
「鏡よ鏡、鏡さん、私の王子様はいったい今どこでどうしているのかを教えてちょうだい。なぜ、迎えに来てくれないの?」
鏡には王子様が映りました。
「ああ、私の王子様。」
そして、隣にはバラ色の頬を輝かせた美しい娘が、
シンデレラは目を凝らして良く見ました。
「え、白雪姫・・・?」
白雪姫は片足だけ、ガラスの靴を履いていました。
そして背後では七人の小人達が愉快に歌っています。
「え? あああああ!ガラスの靴。あれは私の物?それとも別の靴なの?」
シンデレラは困惑し、そして泣き叫びました。
「ああああ、王子様。王子様には白雪姫という心に決めたお方がいらしたのね。」
そして二人の姿は消え、鏡を見つめるシンデレラの姿だけが映りました。
顔には皺が、頭には白髪が、背中は丸まり、胸は痩せ落ち。
「あああああ・・・」 シンデレラは嘆きました。
そう、シンデレラはもう魔女と呼ばれるにふさわしい年齢なのです。
「ああ、なんと運命とは残酷な。私は、私だけの王子様を待ち続けていた。ただ、それだけなのに。」
悲しみにくれたシンデレラは一口、リンゴを齧るとそのまま倒れてしまいました。
それからというものシンデレラは何日も何日も眠り続けました。
もう、目覚めることはないのではないかと思われるくらいの長い眠り。
そして、シンデレラは夢を見ました。
長い長い夢を・・・
シンデレラは王子様のそばに行きました。そして言いました。
「私はここにいます。どうか王子様、あなたのお気持ちを私にお聞かせ下さい。」
でも、声は出ません。
「ああ、私はこのまま叶わぬ恋を儚かなみながら、海の泡となって消えて行くの? 王子様、なぜ何も言ってくれないの?」
シンデレラは遠い昔、船の上に見た王子様のことが忘れられません。
確かにあの時、王子様はシンデレラを見つめ返えしたのです。
心が通った瞬間でした。
「ああ、今ならまだ間に合うわ。王子様への思いが叶わぬのなら、もう諦めて、もう一度、人魚の世界に戻り人魚として誰かと添い遂げれば、泡にならずにすむわ。それとも、例え泡となっても王子様への思いを貫いた方が幸せなの? ああ、神様。私はどうすればいいの?」
王子様は荒海の中、シンデレラに救われたことを覚えています。
いつの日か恩返しをしたいと思っていました。
でも、まさか人魚のシンデレラが自分の為に、声と引き換えに人間の足を手に入れたとは知る由もありません。
「ああ、王子様、王子様・・・ どんなに叫んでも聞こえないのね。」
シンデレラは海へ帰ろうと渚へと歩いて行きました。
でも、決心はつきません。
シンデレラは砂浜で座り込むと疲れた体を横たえ、そのまま眠りについてしまいました。
・・・それからどれくらい時間が経ったでしょうか?
何かが唇に触れました。
目を覚ますと目の前には王子様が、心配そうに見つめています。
「ああ、シンデレラ。僕の、僕だけのたった一人のお姫様。」
王子様の背後には白雪姫が、暖かくシンデレラに微笑み、そして言いました。
「シンデレラ、あの日の舞踏会の日からずっと王子様はいつもあなたのことばかり喋っていたわ。だから、これは、あなたに返さなくては・・・」
そして、差し出されたガラスの靴。
シンデレラは受け取ると白雪姫を見つめました。
そしてうつむいて涙をこぼすと、王子様と二人で白馬にまたがりシンデレラのお父様の家に行きました。
玄関に飾られた一輪のバラ、残ったたった一枚の花びらが風で揺れています。
シンデレラは下駄箱から、もう片方のガラスの靴をとり、左右両方履くと教会へ。
二人はなんと、ついに結ばれたのです。
七人の小人は祝福の歌を歌い、式を終えたシンデレラは鏡に話しかけました。
「鏡よ鏡、鏡さん。もう私は大丈夫、ありがとう。」
すると、玄関に飾られている一輪のバラ、
最後の一枚の花びらがゆっくりと散って落ちてゆく様子が鏡に映し出されました。
シンデレラは鏡を胸に抱き、そっと目を閉じました。
後から後から涙が溢れて止まりません。
そして、王子様が優しく鏡を覗き込みました。
すると、そこには二人のどちらにも良く似た赤子がスヤスヤと眠っている姿が映し出されています。
「鏡よ鏡、鏡さん。どうか二人が末永くいつまでも幸せにくらせますように。」
ジャンジャン
(おとぎ話をパロディーしました。)