原色虫歯図鑑


虫歯はとります。確実にとります。これは当然です。でも、例外があります。それがこのようなケースです。


神経に近い部分の虫歯を完全にとりきろうと頑張ると、まだ細菌感染していないであろう神経が露出する事(露髄)があります。一度露出してしまった神経は感染のリスクが高く、その後の予知性が低い為、大体において神経治療となります。


しかし、この3-MIX(写真の黄色い薬)は虫歯の菌を殺菌してくれる優れものなのです!


そこで、虫歯の染めだし液を使い、露髄させる事の無いよう慎重に且つ確実に周囲の虫歯をとり、一番深い部位に3-MIXを置きます。この後3-MIXを押し出さないよう注意しながらセメントで固め、完全にこれを封入します。


当然麻酔はします。


健全な象牙質を出さないと水分が邪魔をしてセメントも接着しません。

象牙質には目に見えない穴がたくさん開いているため、その中に潜んだ虫歯菌をも殺菌する為、仮に虫歯が完全にとりきれても、ある程度深い場合は予防的に3-MIXを入れる事が多いです。


まれに一日か二日、薬の浸透する刺激で痛むことがあります。


ちなみに黒い筋が残っていますが、これは完全に単なる着色なのでこのままです。


3-MIXは歯を削らないとか麻酔しないとか言いますが、はっきり言って全く削らない治療などありえません。

また、一部の人では可能であっても、全ての人で痛みなく、麻酔無しで健全な象牙質を露出させるのは不可能です。

痛くないとしたら、それはその人が痛みに強い人か、必要な部分を触らずにフタをしたかのどちらかでしょう。


もし自分が受けるなら、全く削らない治療など嫌ですね。理論的に成り立ちませんから。


全く削らない歯科治療、食べてエクササイズもなしでやせるダイエット、つけているだけで人気者になれるネックレス、…。これらは全て並列である事を理解して下さい。


知り合いの歯科医師で、自分が治療を受ける側に回った時、削らずに薬を入れてくれ、なんて言う人は一人もいません。確かに3-MIXには浸透性があり、置いた場所からいくらか広がるのですが、実際に周囲の虫歯を削らずに残置した場合、薬に触れていない場所から再発しているのをよく見かけるのが現実です。


だから僕の3-MIXの使い方は、虫歯は基本的に除去した上でなるべく予防的に用い、再発防止と神経の保存を最大限に考慮した方法です。

さあ、治療を進めましょう矢印1





原色虫歯図鑑


古いレジンを全てとりました。なかなか深い虫歯ですね。


でも神経はほぼ100%残せます。


何もしてなくてもズキズキする場合、虫歯の菌が神経まで到達している可能性大ですが、今回は恐らくそこまでは至っていないでしょう。


ちなみに奥に半分写ってる歯の溝の黒いものは、樹脂が固まる時に収縮してできた隙間に着色してるものと思われ、経過観察です。初期虫歯かもしれませんが、それは誰にも分かりませんし、全く大した問題ではありません。

要は削りとる程のものではない、という事です。

ダイアグノデントという虫歯の深さを測る機械がありますが、勿論こんなのわかりませんしレントゲンにも映りません。だから経過観察なのです。


「穴があいていて噛むと痛いです」


原色虫歯図鑑


大きい虫歯だ。


噛む力の大きくかかる奥歯の噛む面に、直接樹脂(レジン)をつめても割れるのは当然である。恐らく今回の虫歯は樹脂と歯の境目から虫歯になり、樹脂の下で歯に穴が開き、ついには樹脂が割れたのだろう。

直接樹脂を詰める方法は、わかりやすく言えばプラスチックを接着剤で歯に張り付ける方法である。


眺めるだけのアートなら良いが、噛む機能を考えると、ケースを選ばないと割れたり周りからまた虫歯になる。


でも患者さんは喜ぶ治療法。一回で終わるから…。

なぜだろうか、盲目的なまでに樹脂(レジン)を直接詰める方法を希望する患者さんは最近非常に多い。


もちろん直接樹脂を詰める方法が有効なケースは非常に多く、個人的に好きな治療法ではある。

なぜならすぐに結果が出て患者さんは喜んで下さるし、何より腕の見せ所!


でも当然のように割れたり、周囲から2次カリエス(詰め物の中でできる虫歯)になり、神経をとって冠をかぶせる以外なくなった歯を診るたびにものすごく悲しくなる。


ちなみに僕の奥歯は同じ部位に金属の詰め物が入っています!

もし歯医者さんが治療を受ける側であれば、奥歯の噛む面の大きな虫歯は型をとって詰め物(金属・樹脂・セラミック)を入れてもらうでしょう。


型をとって作った詰め物は、同じ樹脂でも収縮が補正されており、さらに間にセメントを介することで直接詰める場合よりもはるかに2次カリエスになりにくい。



①樹脂は固まるときに大きいものほど収縮する。


②直接詰める樹脂は、プラスチックを歯に接着剤でとめただけ。型をとって作った詰め物はセメントでとめる為、より強固である


③虫歯の部分は水分を多く含み、樹脂は接着しない。当然ながら虫歯は完全にとりきる必要がある。


④樹脂は水を吸い込んで劣化する


⑤元は石油である。金属よりも生体親和性が悪い。


⑥溝を詰める程度なら収縮はあまり問題にならない。しかし奥歯で面を作る場合は型をとっての詰め物にすべきである。




これらをふまえ、直接樹脂を歯に詰める場合、その適応に慎重にならねばならない。

白い歯がいいのは百も承知である。なるべく白くしてあげて喜んでもらいたい。

治療を長引かせるつもりもさらさらない。

でもだからと言ってベストではない事を知った上で、直接樹脂を詰めて「ハイ終わり」とする訳にはいかない場面が多々ある。

例えなかなか患者さんに解ってもらえなくても、それを説明するのが我々歯科医師の義務である。


さあ、治療をはじめよう矢印右