ビンテージ。
 
ギブソンであれば、オリジナルバーストだと、都心の一等地でタワマンくらいなら買えそうな。
 
品物の良し悪しで見た場合。
ギブソンは、オリジナルバーストなんぞ全く縁がなくわからんが、グレコやTOKAIのレスポールタイプ、と仮定する。
 
1970年代、国産ギターの最初期のコピーモデルは試行錯誤で、市場でもそうだが、極端なビンテージ価値は生まれない。
 
だが、改良を重ねた1980年代後半に掛けて完成度が高まり、現在のビンテージ市場での価格でも、明確にその傾向が見て取れる。
 
特に、現行でもレスポールタイプの市場のシェアが高いTOKAIの場合、1980年代のモデルは異様に高い値段がついている。
 
当然に、その時の製品の方が、良いものであり、かつ、それは新しいモノでは代替できない、から、と市場が判断しているからだろう。
 
評価は人それぞれ。
 
特に80年代の、TOKAIは、超大物のビリー・ギボンズ(ZZ TOP)が絶賛したのをきっかけに、火が点いた感じ。
 
一方で、現代の、TOKAIが、これに劣るのか?と言われたとして・・・それぞれ見解があるだろうが、個人的には全くない、と思っている。
 
優っているものが、あるとすれば、単純に枯渇している材、と、経年による安定と、良い意味での劣化だろう。
 
ないモノは、金を積んでも手に入らない。
 
さて、長く歴史の続く製品は、こんな感じで、昔の方が良かった、とか、最近のはアカンわ、は良くある話し。
 
特にギブソンは、当方の記憶する限り、毎年、毎年、昔の方が良かったと言われ続け。
今年あたりは、ゴミにでもなってそうな勢いだが。
 
まあ、実際にはそんな事はなく、、、。
 
毎年、毎年、と言えば、よう考えたら、ゴルフクラブのドライバーなんて、計算上は、
 
今頃1000ヤードくらいは飛んでないとおかしい。
 
 
毎年、毎年、去年のモデルより、まっすぐ、良く飛ぶ、らしいからねえ。
 
ちょいと脱線。
まあ、たとえば、それが職人の、技による製品であれば、昔みたいに熟練の職人がいない、と、明らかな理由があげる事はできる。
それと、原料のあるもの。例えば、ギターであれば、上記のように、木材が枯渇して昔みたいに作れない、みたく、ああなるほど、な理由なら納得性が高い。
 
一方、原料も変わらず、設計も変わらず、職人が介在しない製品の場合はどうなのか?
 
今どき、なんだが、当方は喫煙者。
ジミー・ペイジや、ジミヘン、クラプトンの咥えたばこ。ヴァン・ヘイレンのストラトのヘッドには、たばこを刺した焦げ跡。
なんかに、憧れた。
 
大昔に持っていた、FENDER JAPANの1950ストラトには、クラプトンを真似して、ヘッドにタバコの焦げ跡を付けていたっけ・・・・。
友人に、「なんか、汚れとるで」と言われただけ、だったが。
 
で、喫煙の友は、ライターだ。
 
ここに、2つの、ライターがある。
MADE IN USA。
オイルライターのZIPPOの、一番スタンダードなモデル。
いずれも、#200、だ。
 
この2つ、見た目、全く、おんなじなんだが、実は40年の開きがある。
 
見た目は同じだが、ZIPPOの場合、ケースの、ボトム、すなわちライターの底を見ると違いがわかる。
ZIPPOでは、ケースのボトムのシリアルの刻印で生産年月が分かるようになっている。
 
左のZIPPOは2005年の2月生産。
ロゴの左のBが生産月。Aが1月、Bが2月、Cが3月・・・・・・と言う具合。
ロゴの右の05は生産年。
05だから2005年。
こちらは、まさに今から14年前に買って使っている。
これも、そういう意味では既に、古い、のだが、仕様も雰囲気も、現行のZIPPOとほぼ同じ。
 
右のZIPPOは1967年の生産。
右のボトムの刻印は、今のシリアルとは異なるルールで、ZIPPOのロゴの右にI I I、左にI I I I。これで1967年生産を表している。
ZIPPOは、生産年が分かるので、ビンテージ市場が賑やかだ。
 
しかも、デザイン、機構が全く変わらず、なんで部品の交換や修理も簡単。
だが、ギターと同じで発売状態オリジナルの方が、ビンテージでの価値は高い。
 
ちなみに、ZIPPOは、外側から見えるケースと、火を付ける中身の、インナーユニットに分かれているが、インナーユニットにも生産年月の刻印が打たれている。
左が、2005年。
右が、1967年。
 
ただ、古いZIPPOの場合、インナーユニットには刻印がない場合もあるのだが、研究(?)が進んでおり、刻印の特徴とかで、生産年間が絞れるようになっている。
 
ありがち、だが、ケースとインナーユニットの、製造年マッチングは、ビンテージの市場価値において重要。
 
と言うのは、例えば、1967年のZIPPOを、今、ZIPPO社に修理に出しても対応してくれる。
が、この場合、パーツが今のモデルに交換されて帰ってくる。
 
仕様変更がなく、互換性が保たれているからこそ可能なこと、なんだが、ビンテージ市場ではこれで価値が大きく変わる。
これは、蓋を開いた状態。
上が、2005年。
下が、1967年。
流石に、100年近い歴史のあるライターだけに、微妙な違いは色々とある。
どちらも、発売当初のオリジナル状態。
 
この2つ、微妙な違いがあるものの、見た目、材質、金属の厚みや構造に違いは見えない。
 
もちろん、こまごまとした違いはあるが、大きくは、火をつける芯の部分、オイルを受けるインナーユニットの底のフェルトの部分くらい。
 
写真では、全く違いが出ない、と言うか、外観だとまったく違いがわからない。
 
たかが、2000円するかしないか、の装置産業製品で非付加価値工業製品。
 
ところが・・・・・・
 
もの凄く不思議なのだが
 
この2つを、(実際には、どちらも本物なんだが)人に渡して「どっちかが、ZIPPOの偽物けど、わかる?」と尋ねると、
 
100%、間違いなく全員が2005年の方を偽物、と言う。
 
それぞれ単品で使うと、何ら違和感ない。
どちらも、蓋を開けると、キン!と音がする、普通に、ZIPPOらしいZIPPOだ。
ところが、2つを手にして、同時に比較すると、明らかに違いがわかるのだ。
 
1967年のZIPPOの方が、カチッと感、節度感、キチッと感と言うのか、大変に表現が難しいのだが・・・・
明らかに、良い、のだ。
 
なにか、定量的な違いがあるのかも知れないが、全くわからない。
にも関わらず、定性的、感覚的な違いは明らか。
 
使用によって生じる、蓋のヒンジのグラつきは、当方が長年使っているので、むしろ1967年の方がガタガタしているのに、だ。
 
上記の通り、単価の安い工業製品であり、見た目に違いは全くない。
また、違いが入る余地も少ない。
 
古いから良い、との潜入感が、あるワケではないし、当方は、ビンテージ信者でもない。
 
が、それでも、
 
昔のZIPPOの方が、誰でも、触れば絶対分かるレベルで、良いのだ。
 
不思議。
 
おそらく、なんだが、、、。
 
古いZIPPOの方が鍍金が厚い。多分、コスト削減努力と言うより技術進歩によって、意図せず重厚感が最近は失われたのだろう。
 
古いZIPPOの方が金属がミクロ単位で厚い、とか。これもプレスの技術的進歩が原因か。
 
なかなか、古いZIPPOを手にする機会はないかもしれない。
が、生産年月が分かるので、生誕年月のZIPPOをプレゼントする、みたいな市場はあるみたいなので、入手は比較的簡単だろう。
 
古いモノになると、当然市場があるので価格も安くはないが、まあ、ビンテージのギターなんかに比べれば、全然安い。
 
ちなみに、この1967年のZIPPOは、デッドストック、MIB(ミント・イン・ボックス)の状態で入手。
経年で、膨張、粉砕されるフリント(火打ち石)のメンテで、一旦全部バラして手入する必要があったが、1万2千円くらいで入手したかなあ・・・・
 
グレコやトーカイのビンテージみたいな話だが、1990年代頭までのZIPPOは、「今のより、良い感」が強い。それ以降、現行の品質感に近づいて行く。
 
もちろん、現行のZIPPOに何らの問題があるワケではなく、相変わらず安定の製品ではある。
 
コストダウンにより部材がケチられている、とか、製造品質が下がった、とか、そういう事は全くないと思う。
 
むしろ、均一性や製品の耐久性を含む、生産品質は、昔よりも向上しているだろう。
合理的に、今の製品になっていると思われる。
 
が、古いZIPPOには、高級感、しっかり感があるのも事実なのだ。
不思議なものだが、ZIPPOについては、ビンテージモノの方が「良い感」あるのだ。
しかも誰が見ても、いや触ってみたら、分かるレベルである。
 
不思議、、、、。