最近、この本を購入しました。

 

 

Ann Llewellyn Evans さんによる、祝詞の英語解説書です。

神さまのことを gods ではなく、kami と表記されているところが好印象。

これまで神道を宗教学的に解説・研究してきた英語書籍はありますが、

実際にその practice を practice する人が書いた本はこの本が初めて、とのこと。

 

ある人が、「神道の教義は何ぞ」と問われたときに答えたという、

"We don't have theology. We dance" (XXII)

という言葉。

ここに神道のエッセンスが凝縮されているように感じます。

ぼくは思わずはっとしました。目の前に巫女舞の幻視が立ち上がったようで。

 

この Shinto Norito ですが、日本人から英語圏の方にプレゼントされても喜ばれるかと。

神道の大まかな概要、言霊の説明などが Introduction で展開され、

そのあとは日本語(文字)の祝詞が左ページに、英訳とローマ字読みが右ページに、

というふうに記されてゆき、最後は禊の作法でしめられています。

日本語のフォントは日本人のぼくから見ても自然で、

ローマ字読みもほぼ完ぺきになされています。

 

特筆すべきはこの英訳。

言霊を有する日本語の祝詞はどうがんばっても英訳できません。

しかし Ann さんは徹底的に神社で研修を積み、勉強し、作法を学び、

神社に任命されるという実績の上に本書を書きたいと思われたようで、

word-to-word というよりも(それは学術的になりすぎるきらいがあるので)、

あくまで poetic (詩的) な、今風に言うと 「超訳」 をされてるんです。

 

たとえば、

 

「祓へ給ひ 清め給へ」

 

は、

 

"Sweep impurities from my being and purify my spirit" (89)

 

とされています。

 

「穢れを私という存在から祓ってください、我が魂を清めてください」

 

 

という訳に戻るわけですが、

「祝詞の意味を英語で説明した資料が欲しい」なら、この本一択です。

 

好ましい例はほかにもあります。神棚拝詞という祝詞のはじめに、

 

「此の神床に坐す 掛けまくも畏き」

 

とあり、この祝詞、神社に頻繁に参拝されない方にとっては

何じゃこれという音節に聞こえるでしょうが、英語をたどると何となくわかります。

 

"On this shelf dwell esteemed kami,

 Humbly I approach in prayer" (99)

 

とにかくありがたい本です。

神道の、ではありませんが、神道の祝詞にとっての、英語版のバイブルと呼んでもいいでしょう。

 

祝詞のラインナップも見事、豪華と言うしかありません。

 

・身そぎの大祓

・大祓詞

・敬神生活の網領

・敬神生活の信条

・五種の神歌

・十種祓詞

・ひふみ祓詞

・三種祓詞

・十種神寶大御名

・神拝詞

・六根清浄の勤行

・稲荷祝詞

・天神地祇祈念祝詞

・祓詞

・天地一切清浄祓

・一切成就祓

・九字法

・略拝詞

・日拝詞
・略日拝詞
・神棚拝詞
・祖霊拝詞
 
これだけ入ってます。膨大な量で、実用性もきわめて高いですね。
 
あと最後に豆知識を。
Ann さんのこだわりでもあるのか、本書では猿田彦大神様が推されてます。^^

 

とにかく、祝詞をさらに勉強したい人にとっては最良の友となることは間違いありません。