<質疑応答>(個人的に気になった内容のみ)


Q.書いた時と今とでは状況が違うと思われるがアベノミクスは予想通りの施策であったか?また、アベノミクスは日本にとって破たんを加速させるものと考えているかあるいは破たんを回避させるものと考えているか?


A.まず、リフレ派が正しいのか正しくないのか?ということに関してはここ数十年に渡り、論争と言うよりも罵り合いに近いような経済学者間のやりとりがあり、これに経済学者でもない自分が何か意見をするつもりはない。


(確かに本屋に行くといろいろな本が出ている。神学論争のようなものだと形容されていたがその通りで三位一体が正しいのかどうか?(神学の世界では答えはまとまるかもしれないが正解はおそらく実験などででないが・・・)経済の世界では実験可能なのだが結果はしてみないとわからない。がこれまでは実験してみないままリフレ政策をしたら大変なことになる。いや、すると現状をいい感じで脱出できると様々な本が出ているし、実際に実験を始めた今も論争本が出続けている)


一方で、今回リフレ政策をとることで論争の結果が明らかになることは間違いなく、その結果はお話しした通りどうなるかはわからない。


個人的にはリフレ政策には懐疑的で中央銀行がお金をすればいい。

それだけすれば良かったのだということが本当に事実なのであれば過去20年間はなんだったのだ?

と言う話になると思っている。

リフレ派のうまくいかなかった理由は自分たちの言うことを聞かないやつらが仕切っていたからでそいつらがバカだったからうまくいかないのだ。

こういう理屈はルサンチマンの裏返しでもあり、こういう人たちには個人的には関わらないようにしているし、好きではない。

アベノミクスにはそういう理由で懐疑的であるのだが、そうは言っても嫌な奴らが政策を実行しているからと言ってよい結果を招いてくれればそれはそれで文句はない。。。


デフレが問題なのだ。

という論調になっているが、90年代前半に今の政策を実行すればよかったのかもしれないが、ここ20年に渡って続いてきたデフレの結果、我々の多くはデフレ経済に最適化するように様々な生活様式を変更してきてしまっているという現実があるのではないかと思う。


こうした現状の中にいる中で、副作用がアベノミクスの結果出てきた時にどうするのか?

そう言ったことを考えるとリスキーな政策なのだろうなと思う。


先の選挙を踏まえると、有権者がこれを望み選んだともいえるわけで今からどうなるかはわからないのでマクシミン戦略ということを選択せざるをえなくなるという結論に自分の中ではなった。


Q.ひたすら価格が下落している商品を買っている人がいるわけであるが(日本国債が下落すると利益が得られる商品等)いったい誰がこれを買っているのでしょうか?


A.個人的には著作などの中で色々と紹介しているわけではあるが、自分で全てを持っているわけではありません。

日本の破たんにかけてひたすらにチャレンジをしている人も多くいるが結果は惨憺たる有様です。

しかし、一発当てれば10倍、100倍、1,000倍の利益が得られるわけで人のお金で勝負しているヘッジファンド、リスクヘッジで買っている本当の金持ち、両建てで持っている人等ではないでしょうか?

Q.金に対してはどうお考えでしょうか?


A.金は所詮ただの石で工業用の用途は限られており、幻想によって価格が支えられている。

コモディティの中では鉄・銀・銅・小麦・米と違って使い道がない。

このため、保有はバフェットやジム・ロジャーズと同様に合理的ではないと考えております。


Q.大変示唆に富んだ本の内容だと思いますが、この書かれていることが国民の多くに知られ、みんながそれに基づいて行動したら大変なことになると思うが・・・


A.残念ながら私が本を書いても影響は限定されている。これは村上春樹さんでさえも100万部といった単位で100名に数名しか読んでいない。

人口的には1~3%ぐらいなもの。そもそも活字の本を読むという知識層は非常に限られており、今日ご来場の皆様も大卒であったり、大企業勤務であったりであろうと想像できます。

リテラシーの問題もあり、私の著作がそんな大きないうねりを生み出すことは残念ながらありません。 等


<所感>


現在の状況と言うのが長引くと人はその状況に最適化するように生きるので急激な変化を起こしうる政策はリスクが高い。

というのは新鮮な見方だった。


確かに、自分をとっても今の生活におそらく最適化するように生きているのだろうし、「今」が変わってしまえばそこで最適化するように生活を変化させるのだろうと思う。


これまで、2,000年代初頭に社会人になって以来、10年以上も社会は停滞というか特に大きくは変わっていない。


アイドルの中心がモーニング娘からAKBに変わったり。

ドコモ最強からiPHONEに主役の座が変わったり。

任天堂最強から携帯端末の高度化でソフト提供企業に主役が変わったり。


パラダイムシフトと呼ばれるような大きな動きは特になかったような気がする。

その中で自分だっておそらく長く続くデフレ時代に適合した生き方をしているのだろう。


この均衡はどう崩れるのか?


神学論争の結果は間違いなく10年以内には出る。

し、おそらくは5年以内に出る。