藤江さんのチャンネルより

 

臨床薬学博士

堀内有加里先生の講演動画

 

 

 

令和5年10月22日 北秋田市文化会館にて

 

 

■薬やワクチン開発の基本的な流れ

 

一つの薬やワクチンを開発するのに昔は30年40年かかっていたが、今は技術が進んで20年くらいに少し縮小された。

薬やワクチンの開発には動物実験と臨床試験だけで通常約20年かかる。

 

動物実験を実施する前に探究研究(薬やワクチンの候補となる化合物を発見したり合成したりするような研究)だけで10年以上かけている研究者もいる。

 

抗生物質は土の中や空気の中から見つけるが、抗生物質を作るための微生物を探すために一生を捧げている研究者もいる。

 

臨床試験だけでも通常6~10年かかる。

承認審査が終了し市販された後の市販後も研究や試験、調査が実施される。

 

製薬会社で開発中の薬やワクチンの候補を健康な成人や患者を対象にして有効性・安全性を確認する目的で実施される臨床試験のことを特に「治験」という。

治験で使われる薬やワクチンのことを「治験薬」よ呼ぶ。

 

第1相試験では、ヒトにおける安全性と治験薬における体内動態が確認される。

動物実験が終わってヒトに対して初めて薬を投与することになるので、どんなに動物実験で安全性が確認されたとしてもヒトに対して使う時どうなるかわからないので、第1相試験では健康な成人男性を対象とする。

ここで安全性が確認されたら第2相試験に移る。

 

第2相試験では、初めて治験薬の対象となる患者さんに試験が実施される。

有効性・安全性が確認された後、通常の治療をしている状態、実際の治療に近いような状態で最後に患者さんを対象に有効性・安全性の確認の試験が実施される。

 

治験の患者さんは限られている。

基本的に高齢者、腎機能不全患者、肝機能不全患者、妊婦や授乳婦、子どもは対象者に含まれない。

 

治験薬を飲んでいる間は、定期的な通院、検査、他の医薬品等の服薬禁止、お酒、だばこ等の嗜好品の禁止などいろんな制約が課される。

とても厳しい条件で臨床試験が実施される。

臨床試験の結果だけでは、薬やワクチンの安全性を完全に把握することはできない。

臨床試験を6~10年かけてやったとしても実際のリアルワールドで使った時どうなるかわからない。

 

30年前の論文

下矢印

承認前の臨床試験のみでは医薬品等の安全性を完全に把握できない(Five Too)

 

主に5つの限界がある

1)Too Few

臨床試験の対象者は少なすぎる

 

1万人に1件の副作用を検出するためには3万人以上の被験者が必要

通常の臨床試験では3万人だとかなり時間がかかるのでもっと少ない人数でやっている。

 

2)Too simple

実際に使われるときの患者の状況は臨床試験と比べるとずっと複雑

 

治験では実社会と異なっていて、複雑な病態の患者に使われるので他に飲んでる薬の影響を受ける場合があるので、臨床試験の場合とリアルワールドで使った場合は違う。

 

3)Too median-aged

臨床試験では子どもや高齢者、妊婦や授乳婦における結果はわからない

 

臨床試験では平均して中年くらいの人に使うことが多いが、リアルワールドでは幅広い年齢層に使うのでわからない

 

4)Too narrow

臨床試験では条件に合った対象者のみが参加する

 

5)Too brief

臨床試験の期間は短すぎる

 

たとえ6~10年かけたとしても実際には一生飲み続ける薬かもしれないし、10年20年飲み続ける薬かもしれないしわからない

 

新薬や新しいワクチンは承認されても仮免許の状態である

 

 

 

 

■薬とワクチンの承認時に必要な試験項目の違い

 ●新型コロナワクチンの開発から承認までの流れの確認

 

非臨床試験(動物実験)では医薬品に関しては必ずやらないといけない試験項目(安全性を確認するための非臨床試験項目)がある。

 

実はワクチンと医薬品の承認時に求められる試験項目には違いがある。

例えば、生殖発生毒性試験、遺伝毒性試験、がん原性試験は、ワクチンの動物実験ではやらないくてもいいことになっている。必要ないとされている。

なぜかというと、従来のワクチンはウイルスや細菌の病原体、病原体全部あるいはその一部を無毒化、弱毒化してウイルスそのものを投与している。

疑似感染させている形なので感染したのと同じ状況を作っている。

薬を投与してるわけではないし、年に1~2回しか投与しなかったので、こういう試験はいらないとなっていた。

薬事法的には必要ではないとなっていた。

従来のワクチンならそれでいいのかもしれない。

 

ワクチンの臨床試験においても、やらないといけない試験項目が医薬品と違いがある。

従来のワクチンは、病原体を弱毒化、無毒化したものなので、ウイルスや細菌が身体の中でどう動いているか、薬物動態試験というのは厳密にできないのでやらなくていいということになっている。

感染予防効果とかウイルスがどうやって人にうつっていくかという試験もやろうと思えばできなくはないが、誰から誰にうつったかというのを厳密に試験することはとても難しい実証困難なので、やるのであれば発症予防効果をエンドポイントとしてやるのが妥当といわれている。

それどうやってみるかというと実際に発症したかどうかというのを見るというやり方もあるが・・・

ワクチンは、あるウイルスや細菌が発見されてから作り始める、ものすごく時間がかかるのでワクチンがで出来上がった頃は感染症の流行が終わっているので実際に試験できない。

だから抗体価でみてもいいよということになっている。

ただ、ウイルスに暴露された時、抗体を作らなくても自然免疫で排除してる場合もあるかもしれないし、抗体ができてても発症する人もいるかもしれない。

抗体価だけで判断してもいいかは疑問。

 

 

●特例承認・緊急承認とは?

 

今回のmRNAワクチンは、特例承認された。

 

適用条件として

緊急性があること

他に薬がないこと

他にどうしようもないこと

ワクチンしか対処方法がないこと

の条件がある場合しか緊急承認、特例承認は適用されない。

 

特例承認は、承認時点で海外での実績があれば必ずしも日本人でのデータがなくても承認できるというものである。

 

GMP(製造所で遵守するべき製造管理・品質管理の基準)調査も承認時で未実施でもかまわないとなっている。

 

 

 

 

■健康被害救済制度

●医薬品副作用被害救済制度(副作用救済制度)(薬事法に基づく)

 →申請窓口はPMDA(医薬品医療機器総合機構)

処方されたあるいは薬局等で購入した医薬品等を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による健康被害を受けた場合

正しい使い方をした場合に限る

 

 

●予防接種健康被害救済制度  (予防接種法に基づく)

 →申請窓口は居住地の自治体 (市町村)

予防接種法に基づく予防接種を受けた方に健康被害が生じた場合

 

 

副作用健康被害救済制度の認知度についてPMDAが調査をしている。

一般国民、わずか1割しか知らない。

どうやって申請していいかもほとんどの人は知らない。

 

医療従事者の認知度は6割(R元年、2年、3年)

この制度を患者に勧めたいかと聞いたら、4割が勧めたくない、どちらともいえない

その理由は、自分が制度のことをよく理解していないから(45%)、診断書など必要書類の作成が複雑、面倒そうだから(31.3%)、不支給の場合、責任を問われそうだから(20%)

 

 

 

 

■薬害とは

四角グリーン薬害という言葉に明確な定義はないが

「医薬品等の使用に伴う健康被害と不確定な社会的要因が絡んで、被害が社会的に拡大した健康被害」

のことを薬害と言える

 

四角グリーン過去の薬害事件の共通点

・医薬品等の製造管理・品質管理・チェックに欠陥があった

・行政・製薬企業・マスコミ等による効果のみを強調した偏った情報発信がなされた

・行政による適切なデータ収集と解析が実施されなかった

・被害が拡大していく過程で情報の隠蔽、改竄や無視が行われた

・行政や医療関係者が適切な措置を取らなかった

・人々の医療機関や医薬品等に対する過信

・(被害を受けなかった)人々の無関心

 

 

薬害は人災のひとつ

 

 

四角グリーン国内で発生した主な薬害

 

丸レッドサリドマイド(1962年)

妊婦でも安心して服用できる鎮静・催眠薬・胃腸薬として薬局で販売。

手・足、耳、内臓等に障害(催奇形性)を持った子どもが多数生まれた。

 

一旦製造中止になったが、多発性骨髄腫、ハンセン病に伴うらい性結節性紅斑等に有効だということがわかって実は今使われている。

 

丸レッドクロロキン(1969年)

抗マラリア、腎炎、慢性関節リウマチ、気管支喘息、てんかんなどに用いられ、視力障害(網膜症)が多発した。

 

丸レッド薬害スモン(1970年)

整腸剤として販売され、スモンという末梢神経・視神経の障害が多発した。

 

丸レッド薬害エイズ(1983年)

主に血友病の治療に用いられる血液凝固因子製剤がエイズウイルス(HIV)に汚染され、血友病患者の多くがHIVに感染した。

 

丸レッド薬害C型肝炎(1987年)

出産時や手術時の止血等に用いられた血液凝固因子製剤がC型肝炎ウイルス(HCV)に汚染され、多数がHCVに感染した。

 

丸レッドソリブジン(1993年)

帯状疱疹の治療薬であるソリブジンがフロオロウラシル系抗がん剤と併用され、血液障害により15人が死亡した。

 

 

四角グリーンサリドマイドの催奇形性被害

 

妊娠初期3ヶ月間(特に最終月経後30~60日)に服用した妊婦から産まれた子どもに起こった奇形

 

1回1錠の服用でも起きる障害だった

 

ダイヤオレンジ経緯

1957年 鎮静・催眠剤としてドイツで開発

 

1958年 大日本製薬より鎮静・睡眠薬「イソミン」として販売開始

 

1960年 サリドマイドを配合した胃腸薬「プロバンM」が販売開始。ドラッグストアで買えた。

 

1961年 ドイツのレンツ博士(小児科医)が疫学調査をした結果、サリドマイドを飲んでる妊婦から産まれた子どもに奇形児が多いことがわかった。

レンツ警告新生児の奇形に因果関係があるとした疫学報告

→ドイツのマスコミで報道され、欧州などで直ちに販売中止・回収された。

 

日本では厚労省が疫学調査であるから「科学的根拠はない」として新たに別の製薬企業に製造販売を許可

 

1962年5月 製薬企業5社が厚労省に出荷停止を申請するが、回収されず販売継続

1962年7月 日本でサリドマイド児が生まれていることがLancetに報告される

1962年8月 国内学会で発表されマスコミにより報道される

1962年9月 大日本製薬が販売中止・回収を発表するも回収が不十分

 

1963年 被害者が、製薬企業と国を相手に被害者の生涯の補償を求めて提訴を起こす。これでようやく販売が中止になった。

 

1974年 製薬企業と国が因果関係と責任を認め、和解

約1000~1200名の胎児が被害を受けたと推定されるも認定数は309名

 

裁判から10年後に和解が成立。

最初、厚労省は「科学的根拠がない」とつっぱねたが、詳細なメカニズムがわかったのはつい最近、レンツ警告から50年以上たってからである。

 

メカニズムがわからないから因果関係はないとは言えない

メカニズムは後からわかる

目の前の現象が大事

 

サリドマイド被害が拡大した経緯

 

サリドマイド承認前の動物実験では催奇形性が認められなかった。

使った動物はラットやマウスだったが、ラットとマウスにはサリドマイドを投与しても催奇形性が起こらなかった。

被害が明らかになった後、ウサギやサルに投与したら催奇形性が起こった。

 

今回のmRNAワクチンもマウスやラットを使った実験しかやっていないので、他の動物でやった時にどうなるかはわからない。

 

海外で使われているから、海外で実績があるからといって簡単に承認した。

でも実はその海外で使われているっていうことがだった。

 

製薬企業が嘘をついて「海外ではもう使われていますよ。だから承認して。」と言ったが、実は使われていなかった。

申請・審査の時点では、海外では販売前であったにもかかわらず、製薬企業は「既知の医薬品」として申請

→製薬企業の虚偽の情報に関して行政が調査を怠った。

 

新聞広告等で「毒性、副作用はほとんどない」「小児や妊産婦も使用可能」と宣伝

不確実な情報、効果に偏った情報の流布

 

レンツ警告にも関わらず、厚労省は「科学的根拠はない」として対策を怠った。

 

レンツ警告以降も胃腸薬「プロパンM」の広告が増加し薬局で販売

→妊婦がつわり止めとして使用する機会が増えた

 

レンツ警告後、すぐに対策が実施されず、回収も不十分であった

 

 

四角グリーン薬害を起こさないために

 

〈国や製薬企業が行うこと〉

 

丸ブルー医薬品の使用に関する規制、モニタリング制度の強化

 右矢印副作用報告制度

 

丸ブルー人材育成と薬害教育

 

丸ブルー医薬品安全性監視の徹底

 右矢印「医薬品等行政評価・監視委員会」の設置(2020年9月設置)

 右矢印製造販売後調査制度(2001年施行)

 右矢印再審査制度

 

丸ブルー国民に対する医薬品等に関する情報を公正公平な周知

 

 

〈医療関係者/研究者が行うこと〉

 

丸ブルー専門知識を活かして適切な情報を収集し、適切で丁寧な情報を発信すること

 

 

〈国民(消費者)が行うこと〉

 

丸ブルー医薬品やワクチン(特に新しいもの)、医療に過信しないこと

丸ブルー様々な情報から目をそらさず、冷静に考える事が大事

 

 

誓いの碑

 

1999年8月24日に厚労省の敷地内に建てられた。

『命の尊さを心に刻みサリドマイド、スモン、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する

千数百人もの感染者を出した「薬害エイズ」事件

このような事件の発生を反省しこの碑を県立した

平成11年8月 厚労省』

 

 

厚労省はコロナワクチンで今もこれだけ被害を出しているのに本当に反省しているのか!!

 

 

 

 

 

 

 

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