UN GRAIN
アララガマ農園のピーチパイン
UN GRAIN(アン グラン)とは「一粒の種」
「一粒の種から大切に育てられた素材を使って、作り手の想いとともに丁寧に仕上げる一粒のお菓子が、やがて新たな気持ちの種として生まれかわる。お客様それぞれの楽しく幸せなひとときを提案しながら、その一粒の種をゆっくりと大切に育てて行きたい」との想いから付けられた店名
表参道駅の青山通りから骨董通りを六本木通り方面に約10分、南青山6丁目の交差点を右に少し入った場所に忽然と現れます
ここは、ヨックモックさんが展開するミニャルディーズ専門店
オシャレな街とは言え、南青山のはずれ、駅に近くもなく、しかも大通り沿いではない、つまりこのお店を目指した人しか辿り着けないこの立地を敢えて選んだのだとか
《MIGNARDISES》
フランス語で「上品さ、可憐さ」という意味を持ち、主に、フランス料理のコースの締めくくりとして、食後の飲み物と共に提供されるプティデセールを指すミニャルディーズ
モダンでスタイリッシュな店内
左奥のショーケースに並ぶミニャルディーズ
ショーケース手前に3席のイートインスペース
過去のイートインは、こちらをご覧ください
初回訪問、
今回、10ヶ月ぶりのシェフズカウンター参戦
月1回のシェフズカウンター:¥4,500(ドリンク付き・税込)は競争率が高く、メールマガジンで告知されると同時に埋まってしまい、なかなか伺えなかったのですが、今回は、なんとか日曜日の17時の回に潜り込むことができました
今回のご担当は、スーシェフの昆布さん
ご先祖様が福井で昆布を扱う北前船に乗っていたから昆布さん
ご実家は、その福井で江戸時代から続く老舗の和菓子屋さんだそうですが、ご本人は、敷かれたレールの上を走るのは嫌と、オーボンヴュータン、エルメで修行後渡仏、ロブションや南仏エクサン・プロヴァンスのパティスリー“リエデレ”などを経験された若手のホープです
初夏をイメージして、夏を先取りしたフルーツを使った4皿+焼菓子のラインナップ
まずはドリンク
梅とミント
大分県産小梅を梅酒に仕立てて炭酸で割った、爽やかドリンク
そこに、「 ベジタブル コミュニケーション」をコンセプトに、高知市春野町でハーブや野菜を育てるファームベジコさんから届いたイエルバ・ブエナを直前にちぎってトッピング
厳密にはミントとは違う、本場キューバのモヒートに使われ、ヘミングウェイが愛したことでも知られるHierba Buena(イエルバ・ブエナ)
甘く、青く、爽やかな香りは、ミント嫌いなGに衝撃を与える一品
マンゴー/バナナ/ラベンダー
アーモンドとヘーゼルナッツとピスタチオのローストを散らし、ラベンダーティーを合わせたキャラメルにマンゴー果汁の柔らかな味わいを加えたソースを添えて、そこに乾燥したオーガニックラベンダーをねじりながらトッピングすると、ふわぁ〜っと香り立つラベンダー
ラベンダーは、南仏エクサン・プロヴァンスで修行したシェフの思い入れが…
最後に、ほんの少しのレモンで割ったラベンダーの蜂蜜をトッピングして完成です
パリパリ感の残るバナナ、蜜柑の風味を感じる追熟マンゴー、それらを繋ぐフロマージュブランの優しいクリーム、口に含むと苦みの後になんとも言えない香りが襲って来るラベンダー、イエルバブエナのまた違った清涼感あふれる香り
黒胡椒が素晴らしいアクセントとなって、アミューズ感を演出
夏の始まりを感じる一皿です
パイナップル/パッションフルーツ/花柚
ヴェリーヌ仕立ての一品
「アララガマ」とは宮古の方言で、“不屈の精神”という意味
元機械修理工だった池村英勝氏が、親戚の「空いた畑を使わないか?」の一言から始めた農園に得意の機械化を導入し、今や、生産するパイナップルの80%がピーチパインとなっている西表島で初めてピーチパインの栽培を行ったのもここアララガマ農園
初めは全く売れなかったピーチパインを“不屈の精神”で西表島のブランド作物にまで育てあげました
器に、クレームパティシエール(カスタードクリーム)とクレームシャンティイ(生クリーム)を合わせたクレーム・レジェールを敷いて、パイナップルだけだとぼやけるので、味の輪郭を出すために焼いたココナッツを乗せ、エキゾチック感、南国感をライチのジュレで醸し出します
そこに、ピーチパインで作ったパイナップルソルベ、ピーチパインのマリネを重ね、香りが逃げないように直前に削った花柚を散らし、ホワイトラムで輪郭をはっきりさせたパッションのソース(残念ながら下戸のGはホワイトラムなしバージョン)を掛け、ヨーグルトのメレンゲをトッピングし、パイナップルのチュイルで蓋をして、ハーフカットの花柚をのせて完成
チュイルをパリパリ割って、下まで掬っていただきます
途中で花柚を絞って味変
黄金の梅/小桃/赤紫蘇
シェフのご出身地福井の、樹上で完熟させて自然落下まで収穫しない、桃の香りがする“黄金の梅”を熊本県産の小桃のピュレと杏のピュレと合わせて軽く火を通し、梅と相性の良いシソ科のタイムで香り付けしたコンポートをマスカルポーネのしっかりしたクリームにのせた、さっぱりしたアシェットデセール
桃と相性の良いアーモンドで食感にアクセント
トッピングの小桃のコンポートにもタイム
フレッシュな香りを活かすため、火入れは最低限です
さらにシソ科の花穂紫蘇を添えて、ホワイトペッパーを散らします
樹液を使うイメージの強いメープル実を粗く砕いた粒をトッピング
添える牛乳の泡にもタイムで香り付け
鮮やかなピンクの赤紫蘇のグラニテをのせて完成です
添えられた花穂紫蘇を散らしていただきます
酸味をさんざん愉しんだら、その後、牛乳の泡で酸味を優しく包んだ状態も味わいます
最後の皿盛りデザートの前にコーヒー
ゲイシャ
代官山にロースターアトリエを構え、厳選したコーヒー豆を自家焙煎している中目黒の "CAFE FACON" のコーヒー
パナマ・コトワ・ダンカン・ゲイシャというパナマ産の希少品種のコーヒーをいただきます
4分で抽出完了
普通のコーヒーとは一線を画す、フローラルフレーバーに柑橘系の甘い香りとプラムを思わせる酸味の絶妙なバランス
格別のフルーティーさに、コーヒーが、紛れもなく果実なんだということを思い出させてくれます
アメリカンチェリー/トンカ豆/ショコラ
このお皿のメインは、グリオットのジュレを作る過程で超高速で冷やしながら固めたら(偶然)出来た、不思議な食感のハンペン状の冷菓
その上にグリオットのソルベ
フォレノワールを意識して、竹墨のチュイルとカカオ83%の薄いチョコレートの板を屋根状に飾り付け
手前はフレークやパウダー4種
①紅茶風味のしっとりしたチョコレート生地を焼いて-40℃に急速に冷やして砕いたパウダー
夏に美味しく食べられるチョコレートをと考えたらこの形に行き着いたのだとか…
②フレーク状にした、83%ハイカカオのチョコレート
③砕いた竹墨のメレンゲ
④フランボワーズのパウダー
ハーフカットのアメリカンチェリーは、トンカ豆の香りをつけて濃いめに煮出したミルクティーのような紅茶でコンポート
フレッシュ感を損ねないように最低限の火入れという拘り
トンカ豆
桜餅と同じ香り成分、クマリンを持つ、3年に一度しか結実しない希少豆
トンカ豆の香りが特徴的なアクセントのアシェットデセール
先ほどのアメリカンチェリーのコンポートを作る時の煮汁を使用したソースを注いで完成です
ちなみに、備え付けの白いお皿では雰囲気が出ないからとヨックモック本店から、ストーン柄のお皿持ち込みです
同じグリオットのアイスでも全く食感が異なる“ハンペン”とソルベの食べ比べ、さらに“ハンペン”の時間による変化、チャイを思わす煮出し紅茶のソースの甘い香りとグリオットの酸味の絶妙なバランス、チュイルやチョコレート、フレークやパウダーの食感のアクセント、と愉しみ処満載
凄いのは、これだけのパーツを組み合わせて、攻めまくっているのに、見事にマリアージュするところが、さすがプロ
実は、店頭のミニャルディーズ達は、ヨックモックさんの数週間に及ぶ厳正な審査を経て並ぶのに対し、ある程度現場に任されるシェフズカウンターは、旬の食材を使って思い通りのアシェットデセールを創造出来るチャンスなんだそう
挑戦や実験、確認や発見が混ざったラボ的要素もあって、昆布シェフも生き生きされているようにみえます
焼菓子
手前は
サブレエピス
5種のスパイスを使い、カソナードやブラウンシュガーを使ってジャリジャリした食感のサブレ
奥は
パート ド フリュイ グリオット
直前のアシェットデセールと同じグリオットのゼリーで最後まで流れを途切れさせない演出
真ん中が
コーヒーマカロン
昆布シェフの拘りががぎゅっと詰まった薄焼きマカロン
昆布シェフが考える、美味しいマカロンのキーワードは“水分移行”
水分移行が過ぎると、マカロンの皮は柔らかくなり過ぎ、逆にクリームは水分が取られて硬くなってしまい、アーモンドとクリームのハーモニーが生まれません
薄焼きマカロンならなおさら難しくなるわけで、生地の甘みの加減やクリームとマカロン生地のバランス調整などの試行錯誤を経て産まれたスペシャルマカロン
"CAFE FACON" のコーヒー豆UN GRAINブレンドを砕いてマカロン生地に入れ込むことで、中のガナッシュクリームに負けないコーヒーのストレートな味わいを引き出しています
最後までチャレンジングな昆布シェフの熱量を感じる素晴らしい1時間半
前回の参戦から10ヶ月を経て、ようやく2回目の訪問が叶ったわけですが、
前回の金井シェフの、シンプルな組み合わせの中にひと手間ふた手間かけて差別化を図るシェフズカウンターとはまた趣の異なる、多数のパーツをチャレンジングにかつ理論的に組み合わせて見事なマリアージュを完成させた昆布シェフのシェフズカウンター、大いに堪能させていただきました
次は半年以内にお邪魔したいものです