先日TVの宣伝で、AEONがiAEONというQRコード決済の利用でポイント付与が3倍になるというものが出ていました。
え?AEONってWAONというFeliCa決済が有るにもかかわらず。なぜQRコード決済を促進するような宣伝をするのだろうって、その宣伝を見た瞬間は思いました。
しかしどうも気になりその後直ぐにアプリをインストールし、AEONカードと紐付けました。
すると、既にそのアプリを入れましたスマホに設定しているモバイルWAONとポイントなど紐付けされました。
いやぁ、本当にこういったことに飛びつきやすい性格ですね。
さてこのキャッシュレス決済ですが、利用率では昨年5月にQRコード決済がFeliCaを上回ったと言われているようです。
キャッシュレス決済の第1世代はカード決済。
第2世代はFeliCa。
第3世代はWAON。
第4世代はQRコード決済と言われているようですね。
ただカードやFeliCaを最も利用される年代は60~69歳で、ブランドデビットやBNPLは若年層の利用率が高く、QRコード決済は若年層から60歳代迄と幅広いユーザー層があるようです。
しかし、新たなQRコード決済が続々登場しています。
「100億円還元」で有名になった「PayPay」、LINEのユーザー数を背景にした「LINEペイ」。
携帯電話キャリアもNTTドコモが「d払い」、KDDIは「auペイ」を始めています。
さらに、ゆうちょ銀行が「ゆうちょPay」を始め、今年秋には1000行以上もの銀行が参加する「Bank Pay」が始まります。
ECサイトもアマゾンが「Amazon Pay」、楽天市場が「楽天ペイ」。コンビニでは、セブンイレブンが「7pay」、ファミリーマートが「ファミペイ」を始めます。
もう「ペイ」だらけで、ここまでくると「QRコード決済のゴリ押し」とすら思いたくなる人も多いのではないでしょうか。
なぜ、こんなにもQRコード決済が乱立するのだろう。
Suicaならタッチするだけ完了ですし、クレジットカードでも差し込んでPINコード(暗証番号)を入力するだけで終わります。
日本は技術を持っているのに、わざわざQRコード決済に逆行していると思っている人も多いと思います。
しかも、多くの人が疑問に感じると思いますのが、Suicaに代表されるFelicaというタッチするだけ決済ができる素晴らしいテクノロジーが日本にはあるのに、なぜわざわざセキュリティも弱く、ユーザー体験も悪いQRコード決済ばかりが増えていくのか?ということですね。
QRコード決済をするには、事前にスマホのアプリを起動して、QRコードを表示してからレジのスキャナーにかざさなければなりません。あるいは、逆にアプリを起動して、カメラを起動し、店舗側のQRコードを自分でスキャンし、金額を入力して支払わなければならなりません。
なぜ、続々とQRコード決済がゴリ押しされるのでしょうか。
鍵になっているのは決済手数料のようですね。
多くのキャッシュレス決済では、3%から5%の決済手数料を取って、それで利益を出しています。
例えば、クレジットカードで100円の買い物をすると、お店の実入りは97円で、3円はカード運営会社に手数料として取られています。
本当は違反ですが、店によってはカード支払いなどではこの手数料分高く決済を要求する所も有ります。
わずか3%程度と言え、これは大きい。
例えば、私がカフェを経営して、1日50万円の売上があったとします。
月30日営業して、月の売上は50万×30日=1500万円となります。これらすべてキャッシュレス決済だとしますと、1500万円×3%=45万円が手数料として取られることになります。
よく「キャッシュレスの利点は、現金を扱う不要な業務コストを削減できること」と言われますが、現金を数えたり、釣り銭を用意したりという作業は、店長の1日の労働時間のうち10%程度ではないだろうか。
多く見積もって20%とし、店長の人件費が月50万円だとすると、現金扱いコストは50万円×20%=10万円となる。
つまり、現金オンリーにしたらコストは10万円、キャッシュレスオンリーにしたらコストは45万円となり、現金の方がコストが抑えられます。こんなパラドクスも生まれてしまう。
個人経営のカフェではどうしようもないですが、体力のある小売チェーンなどでは、この手数料による利益の流出をなんとかしたいところでしょう。
解決策は自分でキャッシュレス決済を運営してしまうことですね。
よその会社に取られるぐらいだったら、自社あるいは自社グループ内に還流させたいというところだと思います。
かといって、クレジットカードやFelica決済という本格的なキャッシュレス決済はコストがかかりすぎます。そこで、決済システムもシンプルで、アプリで対応できるQRコード決済を始めることになると思います。
体力のある小売チェーンは、このような防衛的な理由で、QRコード決済を立ち上げています。
非小売業にとっては、手軽に決済業務に参入できるチャンスになります。
キャッシュレス決済業を始めるには、システムだけあっても意味がありません。
決済方式に対応してくれる加盟店を集める必要があります。
しかし、この加盟店開拓業務が大きな参入障壁になっています。なぜなら、基本的には街中の商店を1軒1軒回って、店主を口説いていくという伝統的な営業手法を取らざるを得ないからです。
膨大な人数の営業部隊が必要になり、継続的に営業活動をしていかなければならないです。
既存のクレジットカード会社は、長年、この加盟店開拓業務を地道にしてきた蓄積があるため、多くの店舗で利用できるようになっています。
クレジットカードのビジネスは、大雑把にいって、加盟店から手数料を3.5%取り、このうちの1.5%が加盟店開拓と管理を行うカード会社(アクワイアラー)の収入となります。
残りの1.5%がカード発行会社(イシュアー)の収入になり、さらにネットワーク接続料などに消えます。つまり、クレジットカード手数料の半分弱が加盟店開拓、管理コストなのですね。
QRコード決済では、この加盟店開拓コストも大きく削減できます。QRコード決済の加盟店になるには、スマートフォンかタブレットがあればよく、特殊なカードリーダー端末やPOSレジといった設備は必要ありません。
そのため、開拓営業をしなくても店主自らアプリをダウンロードして、セットアップして加盟店になることができるからです。
もちろん、従来的な加盟店開拓営業もしていますが、1軒1軒回るなどというやり方よりも、商店会などで店主を集めて説明会をして、その場でアプリをインストールして加盟店になってもらうという手法もよく行われているようです。
つまり、QRコード決済が雨後の筍のように登場して乱立している理由は、企業側の都合ですね。
「アプリを起動してQRコードを表示し…」という消費者側の利便性は置き去りにされてしまっているようなところがあります。
さらに乱立しすぎて、どの店でどの決済方式が使えるのかをいちいち確認する必要があり、「現金の方が便利なんじゃないか?」と思うことすらあります。
LINE、NTTドコモ、メルカリの国内3社と「アリペイ」「WeChatペイ」の中国2社は、統一したQRコードを開発することを表明しました。これが呼び水となり、他のQRコード決済も統一の動きが進んでいくものと思われます。
一方で、QRコード決済の本家である中国では、QRコードを脱して、顔認証決済やNFCを利用した決済に移ろうとしています。
数年後、日本だけがQRコード決済を使っているガラパゴスになっているなどということはまさかないですよね?