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おすすめ度: ☆☆☆☆ (Very good)
スタンリー・キューブリック監督の「現金に体を張れ (The Killing - 1956)」です。これは彼の監督2作目。50年代に作製されたこともあり、フィルム・ノアールのカテゴリに入れられています。確かに悪女が出てくるし、その要素が全くない訳ではないですが、これは単純に犯罪ドラマと言ったところでしょうか。

刑務所を出たジョニー(スターリング・ヘイドン)は、堅気の仕事につく気は全くなく、今回目をつけたのは競馬場の売上金を盗むこと。彼は5人の仲間を引き入れて、緻密な計画を練り、いよいよ決行の当日になる。計画は順調に進んだように思えたが…。

ナレーション入りのドキュメンタリータッチで、時間の流れが前後して最初しばらくはストーリを追うのに大変かと思いつつも、見続けると割合お話しは単純で、ストーリ展開はテンポよく、非常に楽しめる作品です。

でもひとつだけ言ってしまうと、最初から用意周到な計画だったのに、どうしてラストはあんなお粗末なプランになっちゃったの?と少しだけ疑問。もちろん最初に計画したとおりに事は運ばずで、苦肉の策だったという事でしょうか?それでもこれは…。とは言うものの、このラストのおちは映像的にはなかなか印象に残りますし、その後の最後のジョニーのセリフも映画を締めくくるうえでは、なかなかイキで良かったですよ。

お粗末ぶりと言えば、この制作過程がまた面白い。キューブリック監督は自分の制作会社を設立して、最初に映画化件を得たのはライオネル・ホワイトの「The Snatch」という小説。でもこの作品、幼児誘拐のお話し。当時は規制が厳しく、アメリカ映画製作配給業者協会 - Motion Picture Producers and Distributors Association (今のアメリカ映画協会-MPAAの前身)は、幼児誘拐の映画をご法度。それを知ったキューブリック監督は慌てて権利金の追加・変更なしに、彼の別の小説を交換要求。なんとか交渉がまとまり、「Clean Break」を得て、この映画が完成。ちなみに「The Snatch」は規制が緩和された60年代に「私は誘惑されたい(The Night of the Following Day - 1968)」として映画化。

と言った訳で、完璧を目指す彼の晩年の作品群とはスタイルが多少違うかもしれませんが、時間が前後してのストーリ展開はなかなか斬新なものがありますし、上映時間も長くなく(85分)、いっきに楽しめる上質の犯罪映画です。