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おすすめ度: ☆☆☆☆☆ (Excellent)
フィリップ・ノイス監督、ハリソン・フォード主演の「今そこにある危機 (Clear and Present Danger - 1994)」。心温まる古い映画が好きな私ですが、アクション映画もやっぱり好きです。「ダイハード4.0(Live Free or Die Hard)」はこちらでも評論家を含めて、なかなか評判が良く、私も見に行くかもしれません。でもそんな中で、アクション映画のベストは?と聞かれたら、私は迷わずこの作品を選びます。

この映画は単にアクション映画として見ても、ストーリは少し複雑ですが非常によく出来ていて、何回観てもスリルを味わえます。でもそれ以上に私がこの映画が好きなのは、理想と現実を見極めた大人が直面し結論を下さなければならないテーマ(問題)が、実に上手く描かれていると思うのです(これは原作者のトム・クランシーの功績が大きいかもしれません)。

そのテーマは二つあり、まず一つ目は軍事力を行使するにあったての倫理観はどうあるべきか?そして二つ目は国に忠誠を誓うということはどういうことか?ということです。

この原題は「明白かつ現在の危険」と訳されている表現の自由に関する法律用語から来ています。言論の自由は法律で保障されていますが、これはもちろん何処で何を話してもいいという解釈ではありません。もしその表現行為が、現存する平和を揺るがす「(100%)明白な危険性が存在する」なら、その表現行為を刑罰によって制約してもよいという法律上の解釈です。

この映画に出てくる大統領はタカ派に描かれていますが、汚職とかはしていない、基本的にいい大統領なのです。選挙の時に麻薬組織の撲滅に貢献すると国民に誓ったにも関わらず、その公約を実行出来ていない自分に苛立ち、公約を実行したい気持ちが強いのです。そこに大学時代の無二の親友が麻薬組織団に殺される。彼はコロンビアの麻薬組織がアメリカ国家に対して「明白な危険性が存在する」と解釈して、秘密裏に武力行使で麻薬組織撲滅を図るのです。麻薬組織撲滅は表向きで、これは彼個人の復讐劇なのか?しかし麻薬組織の肥大化は明らかに国家に脅威を与えていて、麻薬組織撲滅は誰もが望んでいる事実なのです。(今では麻薬組織よりテロ組織撲滅の方が誰もが望んでいることになってしまったかもしれません。この映画は9・11のテロ以前に作製されましたし、麻薬の脅威が100%明白な危険性があるという、映画の暗黙の了解をして観る必要があります。100%明白な危険性があるかないか?を論議し始めたら、この映画が成り立たなくなってしまいますから。)

ジャック・ライアン(ハリソン・フォード)は国家に忠誠を誓う愛国心の持ち主。その彼が大統領の秘密工作の全貌を知ってしまう。アメリカは過去に数々のスキャンダルに傷つき景気後退と国民の失意を経験し、ようやく苦境を乗り越え立ち直ってきた。しかし、ここでまた大統領のスキャンダルが明るみに出れば、明らかに国家・国民に悪影響をもたらす。しかも大統領がとった行動は、結果的には麻薬組織の撲滅に貢献し、国民に対して公約を果たしたかたちになったのです。

大統領の側近としてこの工作に関与したCIAのロバート・リター(ヘンリー・ツァーニー)は、この裏工作がジャック・ライアンに見つかった時に、彼と口論します。
ロバート・リター「全てが白黒と思っているんだな。(You see everything is black and white.)」
ジャック・ライアン「違う、正しいか間違っているかだ。(No, not black and white. Right and wrong.)」
ロバート・リター「灰色だよ。ジャック。世の中は灰色。(Gray. The world is gray, Jack.)」

そう、世の中は灰色。でも我々はそれを見て、「白」か「黒」と判断を下さなければなりません。正義を行使して悪を撲滅させる。国に忠誠を誓う。この二つに解釈は何通りもあります。大統領とジャック・ライアンは各々の解釈があったのです。そして最後はジャック・ライアンの国への忠誠心に対する彼の解釈(回答)が明確になるのです。

ちょっとアクション映画を少しお堅い感じで説明してしまったかもしれませんが、以前に紹介した「真昼の決闘 (High Noon)」のゲイリー・クーパーと同じくらいの正義感を、私はこのジャック・ライアンに感じるのです。それがこの作品を私の大のお気に入りにしているのだと思います。