米政権、対中関税の解除を議論 貿易交渉の進展目指す
米政権内部で対中関税を引き下げる可能性が議論されている。世界経済に影響を及ぼしている貿易摩擦を巡り、市場の不安を和らげ、中国政府からさらなる譲歩を引き出す狙いだ。
政権内部の議論に詳しい複数の関係者によると、スティーブン・ムニューシン財務長官が一連の戦略会議で、対中関税の一部もしくは全てを解除することを提案。通商協議の進展や中国の長期的な改革への支援獲得が目的だとしている。
だが、米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表はこれに抵抗を示し、譲歩すれば弱腰とみなされかねないと懸念しているという。
https://jp.wsj.com/articles/SB11375737385870584191404585068044249806272
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中国、「6年で対米黒字ゼロ」提案 米報道
【ワシントン=鳳山太成】米ブルームバーグ通信は18日、中国政府が米国に対して6年間かけて輸入を増やす計画を提案したと報じた。中国は農産品やエネルギーなど1兆ドル(約110兆円)以上買い増す意向を示してきたが、期間は不明だった。トランプ大統領が大統領職を続ける可能性がある24年を念頭に、対米貿易黒字をゼロにする意図があるという。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40218240Z10C19A1000000/
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関連記事2本です。
最初の記事は1/17のアメリカ時間に出ました。
ムニューシン財務長官が、関税をゼロにするという報道。
これに対して即座にブルームバーグから否定記事が出たため、1/17の米株市場は乱高下となりました。
2本めの記事は今度はブルームバーグから。
ブルームバーグ日本語版からは記事が見つけられなかったので日経から引っ張ってきてますが、元記事はこれです。
China Offers a Path to Eliminate U.S. Trade Imbalance, Sources Say
2019年1月19日 0:19 JST
China has offered to go on a six-year buying spree to ramp up imports from the U.S., in a move that would reconfigure the relationship between the world’s two largest economies, according to officials familiar with the negotiations.
記事が出た日本時間1/19午前0:19から米株市場は上げ幅を広げました。
NYダウ、S&P500、ナスダックとも、最高値からクリスマスショックの安値の半値を取り戻しました。
市場は米中貿易摩擦の寛解を確信し始めたようにも見えます。
中国の対米貿易黒字がゼロになり、アメリカも対中関税をゼロに戻す。
本当であればすごいことです。
世界中の株価の全値戻しがあってもおかしくありません。
問題はそんな事が可能なのかどうか?
中国が対米貿易黒字を均衡させるほど買い物ができるかというと、それは不可能です。
人は必要のないものまで買いません。記事によればエネルギーと食料を中心にアメリカからの輸入を増やすようですが、そんな量使い切れるわけがありません。
もし本当にやったら、オイルショックや食糧危機が起こるような莫大な量です。
もちろんアメリカ国民が使う分も足りなくなり、アメリカは輸入せざるを得なくなるでしょう。
中国から輸入するんですか?笑
中国が第三国に輸出して、第三国からアメリカが購入すれば対中貿易は見かけ上均衡しますが、そんな小手先のことをやっても意味がありません。
世界中で大きな貿易赤字となっているのは、ほぼアメリカ一国です。アメリカの貿易赤字は他国に原因があるのではなく、アメリカ人の生活水準が事実上世界のトップであることが原因です。
他国はアメリカ以下の生活水準に甘んじ、安い賃金で労働を請負い、アメリカにモノを売ることにより黒字を稼ぎ、アメリカに追いつこうとします。
アメリカの慢性的な貿易赤字は、アメリカが世界のトップランナーであることから自然に起こるものであり、トランプさんが勘違いしているように「他国がずるいことをしている!」わけではないのです。
そしてもし中国が本当に買うとなれば、そのお金はどこから出てくるのか?
民間が買うわけがないので中国政府が買うことになります。そのためのドルをどうやって調達するのか?
米国債の売却しかありません。
中国は2015年のチャイナ・ショック以降、2年で1兆ドルの外貨準備を失いました。
以前記事にしましたが、これは人口動態上の景気減速のため、今後も外貨準備は減り続けるでしょう。
2018年は生涯一度のスーパー大天井?それとも・・
5年あれば、あと1兆ドルくらいは自然に減ると思います。
そこに今回の1兆ドルの買い物。
5年間で合計2兆ドルの米国債が売られるとなると、アメリカもただではすみません。
1兆ドルの米国債を保有していた日本の首相が「米国債を売りたい衝動に駆られる」と発言しただけで、「フーバー・ハシモトの大恐慌がやってくる」と大騒ぎしましたよね?
本当に中国が対米貿易黒字ゼロ提案をしたのなら、手柄のほしいトランプ大統領が乗る可能性はあるでしょうが、そもそもそんな提案が本当に中国から出たのかどうか?
記事のソースは両方共、得体の知れない「関係者」。
WSJが記事を書き、即座にブルームバーグが否定。
今度はブルームバーグが記事を出す。
なんだか空中戦でやりあっているだけのような気がします。
この手の記事に乗った場合、ろくなことがありません。
明日1/21の日経平均は20900円付近で始まりそうですが、20800-20900あたりはPBR1.1倍、PER12倍、12月高値と安値の半値などいろいろ重なってます。
買い方は欲を出して飛びつかず、素直に利益確定したほうがいいと思います。
もしもまだ上がるようなら。米中貿易戦争終結・対中関税ゼロ・対中貿易赤字ゼロ―そんな空想上の天国が訪れるようなら、そのときまた買えばいいのです。