年末にいきなり刺激的なタイトルですみません。
しかし、煽りでも何でもありません。
 
古くから株式投資をされている方は1989年の平成バブルが歴史的大天井かと思いますが、それ以降に投資を始めたtechnoteのような世代にとって、今年2018年の日本株はいつもの景気循環による大天井とは異なり、実質ベースでは生涯一度のスーパー大天井になったかもしれないなと思っています。
 
 

経済は人間の行動量

ここから日本株にスーパーネガティヴな話が続きます笑
ただ、誤解のないように申し添えておきますが、technoteは長期投資派であり、株式投資に関しては基本的にスーパーポジティヴな考え方を持っています。
 
すべての金融商品の中で、永遠に右肩上がりを続けるのは株式だけです。
人間の毎日の奮闘努力が株価を押し上げます。
人間の生活に必要なものはすべて、会社で作られます。
雨が降ろうが雪が降ろうが、リーマン・ショックが起ころうが、人は会社に行きます。
たとえリストラされたって、人は職を見つけ、生産活動を再開します。
リーマン・ショックの底で株を買うのに、勇気なんていりません。
ノーリスク・スーパーハイリターンなのですから。
 
心の底から、そう思います。
 
しかし買うべきその株は、日本株ではありません。
日本は人口が減っています。
株価上昇の原動力は人間の行動量なので、人口減少は株価下落に直結します。
日本株だけが失われた30年になったのは、当然と言えます。
 
お金は関係ありません。
お金は交換の媒をするだけです。
日本中を紙幣印刷工場で埋め尽くし、輪転機をいくら回しても、人間の社会が進歩するわけではありません。
リフレ派の考え方には、致命的な誤りがあります。
 
ウォーレン・バフェット氏の言葉に「今日米国で生まれた子供は、歴史上でもっとも幸運だ」というのがあります。
人は働き、社会を作ります。
昨日より今日、今日より明日、社会のインフラは整備されていきます。
リーマン・ショックのその日も、人は会社に行き、付加価値を積み上げて帰宅しました。
株価と違って後戻りなどしません。
毎日必ず、人間の社会は進歩します。
 
世界の首都であり、世界中の知能が集まるアメリカ。
移民により着実に人口の増えるアメリカ。
あと何百年も、それは変わらないでしょう。
ウォーレン・バフェットさんが世界一の資産を作ったのには、理由があります。
次の景気後退の底では、アメリカ株を買ったほうがいいと思います。
 
 

46歳人口と株価

前置きが長くなりましたが、人口動態と株価には密接な関係があります。
 
アメリカの人口
 
アメリカはこの先もずっと、順調に人口が増えることが予想されています。
右肩上がりの人口は右肩上がりの社会インフラを要求し続け、定量のパイを奪い合うのではなく、膨張するパイの恩恵を受け、どの企業も業績を伸ばすことができます。
アメリカ株が永遠に右肩上がりを続けるのは、これが原因です。
リーマン・ショックのような一時的な凹みがあっても、必ず過去最高値を更新し続けます。
 
日本の人口
 
日本は人口が既に減少に転じています。
こういう社会では株価は歴史的な高値をつけ、それを超えられないということが起こります。
無限にカネを発行できる日銀が株を買い支えても意味がありません。
実態の業績と株価が現実味を失うほど乖離してしまい、いつか買い支えられなくなります。
日銀のやっていることは、人間が働いて社会を作っているという現実を無視した、愚かな行為だと思います。
 
中国の人口
 
中国はこれから人口減少社会に突入します。
一人っ子政策の影響ですね。
日本と同じく、こういう国の株価は、超えられない歴史的高値を付けると思います。
 
それでは株価はいつ歴史的な高値をつけるのか?
人口経済学の理論に「人生のうちで一番お金を使う年代である46歳人口が最も多くなる時期に、景気は最も良くなる」というものがあります。
1992年にハリー・S・デント・ジュニアという人が提唱したものですが、1989年および2018年の日本株のピーク、あるいは2015年の上海株のピークは、これでうまく説明できます。
 
2015年の中国の人口ピラミッド
 
中国の46歳人口がピークを迎えたのは、ちょうど2015年です。
2015年のチャイナ・ショックは起こるべくして起こったということができます。
日米欧の株価は今年2018年にピークを付けていますが、上海株は2015年のピークを超えることができていません。
人口動態を見る限り2035年頃にもう一度ピークが来そうですが、そこもやはり歴史的な高値になりそうです。
 
1989年の日本の人口ピラミッド
 
3年ほどずれてますが、1989年は団塊の世代が40歳代。
まあ理屈から言って46歳ジャストに景気のピークかというとそんなこともなく、数年のずれはあるでしょう。
理論の骨子からは外れてないと思います。
 
そしてもう一つ、1989年には株式市場に大きな変化がありました。
土曜日の立会がなくなり、立会日数は1988年の273日から1989年は249日と大幅に減少しました。
完全週休二日制への移行です。
 
日本人が働き蟻、ワーカホリックと言われていた昭和の時代。
欧米が既に週休二日の労働体制だった時代に、日本はこの1989年前後まで土曜日も半日働いていました。
高度経済成長は、何かの奇跡ではありません。
 
戦後焼け野原になった日本にインフラを再構築するため、日本人は働きに働きました。
欧米より多い行動量。
この行動量が高い株価上昇率と経済成長率をもたらし、アジアの奇跡と呼ばれた源泉です。
 
それが1989年のこの頃を前後して、日本も欧米と同じ週休二日制に移行していきました。
普通の国になったのです。
1989年のバブル崩壊の原因を総量規制など金融政策の失敗に求める人が多いのですが、これは当たっていないと思います。
人口動態と週休二日移行による行動量の大きな変化が、経済成長率を鈍化させた主要因だと思います。
 
2018年の日本の人口ピラミッド
 
そして今年2018年の日本の人口ピラミッド。
今年2018年は団塊ジュニア世代が46歳を迎え、やはり人口のピークとなりました。
今年の日本株の高値も、起こるべくして起こったと言えそうです。
総じて右肩下がりだった日経平均は2007年のピークも、2000年のピークも超えました。
2009年からの景気回復は、株式投資家にとってこれ以上はない順調な資産形成期間になったと思います。
 
しかし今年2018年を最後に、このあと人口のピークはありません。
永遠とも思える長い人口減少期間に入ります。
理屈から言えば今年を超える景気の山は、もう生涯来ないと思われます。
今年日本株で高値を掴んでしまった人は、塩漬け作戦は止めたほうがいいと思います。
 
まあ数年のずれはあるでしょうから、仮に来年あたりに株価が反転できれば、再来年以降にもう一度ピークを付けてもおかしくはありません。
しかし2018年も2020年も、人間の行動量や社会のインフラの充実度、技術レベルに大きな差はありません。
株価が高値を更新したとしても、今年のピーク日経平均24448円からそう大きく跳ね上がることもなさそうです。数年のズレは、理屈の本筋には影響はありません。
 
今年も日本の出生数は過去最低を更新しました。
アベノミクスの6年間、時間はあったのに、出生数を増加に転じさせることはできませんでした。
安倍首相は人柄は嫌いではありませんが、取り巻きが悪かったですね。
リフレ派の間違った理論にそそのかされ、「デフレは貨幣現象」と言い放ち、金融政策しかやりませんでした。
お金を刷っても人間の行動量が増えるわけではないのですが、そこに考えが及ばなかったのは残念だと思います。
 
日本株を買うのであれば、出生数が順調に増え始めてからで十分間に合います。
子供が育って労働力になるまで、十数年から二十年以上かかります。
それからでも遅くありません。
 
 

半値戻しは全値戻し?

日経平均の史上最高値は1989年の38957円。バブル後の最安値は2008年の6995円。
アベノミクスの上昇では、その半値22976円を超えました。
「半値戻しは全値戻し」という相場格言もあり、史上最高値の奪回を期待する人も多いかもしれませんが、おそらくそうはならないと思います。
 
半値奪回はトランプ減税によるものであり、ルール変更によって半値戻しを達成しただけです。
このルール変更がなければ、半値に届いていませんでした。
 
全員が働き、人手不足と言われる中で、現行技術の社会インフラをすべて使い、マイナス金利になるほど潤沢な資金を用意しても半値に届かなかった。
ルール変更前の日本経済のフルスロットルの株価は、2015年6月の日経平均20953円でした。
トランプ減税というルール変更でやっと半値を奪回したというのが現実です。
人口減少は需要供給両方に影響を及ぼし、経済規模を縮小させます。
よほどのことがない限り、マンパワーの減少には勝てないと思います。
もし、高値を奪回することがあるとすれば、それは大幅なルール変更があったときでしょう。
 
しかし実際のところ、2018年の高値が24448円、10年後の高値が18000円、20年後の高値が15000円・・などと、一生涯単純に右肩下がりになる展開も、ちょっと考えにくいです。
おそらくそんなことになれば、その前に財政破綻するでしょう。
 
政府は今回、いくらお金を刷ってもばらまいても、インフレにならないことを学びました。
供給が需要を上回り、お金に価値があると人々が考える限り、人々はお金をセーブしようと考えます。
インフレにはなりません。
だったら人気取りのために、いくらでも国民にばらまく政策をとったほうが有利になります。
 
現実に年金保険料を大幅に超える年金を国民に支払っていますが、インフレにはなりません。
みんな口座残高を眺めてニコニコしているだけです。
お金持ちは収入より支出が少ないからお金持ちになるのであり、国民全員にばらまいても全員がお金持ちになるだけです。
人は必要のないものを買ったりはしません。
 
しかし「いつまでも」ということも、またありません。
「あれ?家族の資金を集めたら、この辺の土地建物が買えてしまうな・・」「でも待てよ、うちだけがお金持ちってことはないよな。お隣さんも同じはずだよな」「どういうことだ・・?」
 
いつか人は気づきます。
目の前の日本円の口座残高がおかしいことに。
 
バーナンキの背理法は結局正しいのです。
「通貨当局は貨幣を好きなだけ発行することができる。だから、もし本当に物価水準が貨幣の発行と関係なければ、通貨当局は、財や資産を無制限に得るために貨幣を作って使える。これはあきらかに矛盾であり、貨幣を発行し続ければいつかは必ずインフレになる」
 
ただしこのインフレは、バーナンキ氏の想定したようなマイルドインフレではありませんでした。
市場を歪めてまで金利を押し下げ、潤沢なマネーを供給した結果、生き残るはずのない企業まで生き残り、需要を上回る商品が供給され、デフレ圧力となりました。
 
人はお金に価値があると信じる限り、必要のないものまで買おうとはしません。
人がそれを超えて買うときは、お金の価値に疑問を持ったとき。
バーナンキの背理法の中で語られてたインフレは、マイルドインフレではありません。
リフレ派が提唱するこの方法で実現できるのは、ハイパーインフレだけなのです。
 
もし人口減少の中、日本円が価値を保ちつづけるなら、株価は今年2018年の高値を超えることはないと思います。
これを超える事が起こるのは、人口が増加に転じた場合。
あるいは通貨価値が大きく歪められるような事態が起こったとき。
どちらかだと思います。
 
冒頭で言った「日本株は実質ベースでは生涯一度のスーパー大天井かもしれない」という言葉の「実質ベース」とは、そういう意味です。