【解説】 ファーウェイ副会長逮捕、米中ハイテク貿易戦争の「人質」

 

中国の情報通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が、米国の要請を受けたカナダの捜査当局に逮捕された。このことの象徴的な意味合いと重大性は、いくら強調しても強調し足りない。

 

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-46478153

 

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ファーウェイのCFOが逮捕されました。

ことの重大さを最もよくまとめているのが上記の記事だと思います。

全文を読んでいただくことをお勧めします。

 

本文の最後はこう結んでいます。

「両国ともグローブを脱いだ。遠慮はおしまいで、本気の戦いが始まる。」

 

投資において、リスクの見積もりは重要です。

どのくらいの影響度合いなのか?

数学の証明ではないので、証拠は不要です。証拠がなくても確からしいことは取り入れていかないと正しい見積もりができません。

証明されるまで待っていては間に合わないのです。

かといって妄想の類まで入れると、見積りを誤ってしまいます。

未確認情報も含めて、慎重に適切な大きさまでリスクを想定する必要があります。

 

例えばtechnoteの場合、ロシアゲート疑惑は、今のところリスクとしてはあまり考慮していません。

票数を直接書き換えたのならともかく、ロシアがアメリカ社会の分断を企図してサイバー攻撃に及んだとして、なぜそれがトランプ氏を大統領選勝利にまで導けるのか?動機という面でかなり無理があると思います。

 

一方米中貿易問題については、これは単なる貿易不均衡を巡る交渉事ではなく、覇権をめぐる全面戦争まで考慮する必要があると思っています。

米中当事者の誰の口からも「覇権」という言葉は出ておらず、「覇権戦争である」というのは未確認情報ですが、習近平氏がオバマ氏に言った「太平洋で世界を分けよう」という不遜な言葉や、先日のペンス副大統領のハドソン研究所の演説などから考えて、軍事力を使った交戦状態に至るかまではわかりませんが、いずれ全面的な経済戦争になることは避けられないだろうと思います。

 

それでは今回のファーウェイCFOの逮捕はどうなのか?

案外あっさり釈放されるかもしれませんが、場合によっては十年に一度の大事件。経済史に残る疑獄事件に発展する可能性があるのではないかと思っています。

 

 

事件の経緯

逮捕が報道当日12/6ではなく、12/1であることを真っ先に報じたのはBBCだと思います。

Huawei finance chief Meng Wanzhou arrested in Canada

https://www.bbc.com/news/business-46462858

 

”Meng Wanzhou, Huawei's chief financial officer and deputy chair, was arrested in Vancouver on 1 December.”

 

12月1日・・?なんで5日間も報道されなかったんだろう?誤報じゃないのか?と思っていろいろ調べたのですが、その時点で12/1逮捕を報じているのはBBCだけでした。

その後の報道をまとめると、やはり逮捕は12/1。報道が遅れた理由は報道規制がかかっており、規制がかかっていた理由はCFO自身が報道を望まなかったからとされています。

おかしいですね。辻褄が合いません。

 

12/1は米中首脳会談が開催されていましたが、報道によればこのときボルトン補佐官は逮捕を認識していたが、トランプ大統領は知らなかったとされています。そんな事がありえるのでしょうか?

 

一方、相手方の中国は知らなかったのでしょうか?

報道がなくても逮捕の知らせはすぐに中国政府当局に届きそうなものですが、CFOは一人で行動していたのでしょうか?

一人で行動していたとして、5日間誰とも連絡を許されず、飛行機で到着する予定のCFOが行方不明になっているのに、ファーウェイ側でも何も把握できなかったのでしょうか?

これもよくわかりません。

 

しかし現実を見ると、米中会談後に中国はリップサービスに努め、「米中の信頼醸成にとって良い会談だった」「90日で合意形成できるようロードマップを決めて鋭意作業を進めていく」などと発言しており、アメリカ車の関税を先に引き下げ、ブッシュ元大統領の逝去に追悼のメッセージを送っています。

そしてその後CFOの逮捕報道を受けて中国政府側から「事実無根だ」との発言がありましたが、その後は黙ってしまいました。

中国はアメリカを信じ、頑張れば関税を取り下げてもらえると思っていたフシがあります。

中国側の行動を見る限り、報道が出るまで知らなかったというのが妥当なところだと思います。

 

しかしよくやりますね、トランプさんは。

対中貿易赤字はアメリカ国民がアメリカ製品より中国製品を望んだ結果なのですが、それを中国側の責任に転嫁し、中国を攻撃した上で改善を要求。

中国は恭順を示し、140項目の改善リストを作成。

外で一緒にご飯を食べて仲直りをし、「良い会談だった、頑張って改善するよ!」と相手が言っている裏で、平身低頭している相手の家に火をつけたようなものですからね。

なんというか常人では考えられない裏切り戦略です。

 

トランプ氏は裏切り戦略を得意としており、不動産業でもこういった手法で相手を潰しながら成り上がってきました。

トランプさんらしいやり方とも言えます。

 

盛大に面子を潰され、トランプさんのやり方を理解した中国は、今後トランプさんを信用することはもう無いでしょう。

米中貿易交渉がまとまるとは思えません。

トランプさんもそれは承知であり、逮捕後、呼応するようにイギリス・日本などが矢継ぎ早にファーウェイ製品の締め出しを発表するなどしており、事前に根回ししていた可能性があります。

 

ファーウェイCFOの逮捕は、事実上の宣戦布告。アメリカ流の真珠湾攻撃だったのかもしれません。

手札をオープンしたら、あとは足を止めて殴り合うだけ。

遠慮なく相手を叩き潰すまでやると思います。

 

「トランプさんの言動は駆け引きだから、中国とは妥当なところで手を打つだろう」

「中間選挙向けのポーズだろう」

「航空機や大豆をたくさん買ってもらえば、関税はやめるだろう」

こういった甘いリスク見積は、もうやめたほうがいいと思います。

 

株価はどう動くのか?

個人的には、もしかしたらファーウェイ・ショックは、2007年の相場下落の起点になったパリバショックに相当するのかもしれないなという予感がしています。

株式投資をしていた母親が当時、2007年8月の株価急落の際に、「どうせまた18000円まで戻るわよね?」と同意を求めてきたのを覚えています。

「うーん、でもこれ何年かに一度の出来事だからなあ。戻るんだろうか?」と返事した記憶があります。

そしてその後、株価は戻りませんでした。

ファーウェイショックが米中覇権戦争の宣戦布告なら、30年戦争の幕開け。

もしそうなった場合は、今回も株価は戻らないと思います。

 

12/6のNYダウは長い下ヒゲとなりました。

 

前日比800ドル下落のあと、700ドル戻るという、あまり見たことのない長大な下ヒゲとなっています。

長い下ヒゲはテクニカル的には買サインですが、今回は当てはまらないかもしれません。

 

なぜ買いサインになるかというと、様々な思惑で売買している投資家が集まって相場を形成した結果買い戻されたのであれば、多数の人の合意が形成されたことになります。

しかし今回は本当に合意が形成されたのかが問題になります。

 

まるで逮捕がフェイク・ニュースだったかのように大きく買い戻されていますが、こんなに大きく買い戻されたのでは前日から仕掛けていないと利益が乗らないはずです。

実際、DAXは買い戻されずに終了しています。

 

逮捕前日はアメリカは休場だったため、更に前日の12/4から仕掛けていないと今回の相場で利益を上げることはできなかったはずです。

実際にNYダウは12/4に800ドルの大きな下落となっており、逮捕を事前に知っていた関係者が仕掛けたのではないかという見方も出ていますが、真偽は定かではありません。

 

フェイク・ニュースでもないのに、なぜこんな思い切った買戻しが出来たのか?

ニュースが流れてから売った人は、全員損をしています。

「ニュースが流れる前にあらかじめ売っておいて大きな儲けが確定した人」でないかぎり、こんな買戻しは出来ないはずです。

事前に情報を得ていた人から見れば「知ったら終わり」ですが、事前に予想されていた事柄でない限り、材料出尽くしにはならないはずです。

 

先物手口などから見て、12/4に大きく売って12/6に大きく買戻したのは、やはり米政権に近いあの投資銀行でした。

情報は漏れていたと考えるのが自然じゃないかなと思います。

もしかしたら数年後、BigShort2として映画化されるかもしれません笑

 

そして一番影響を受けるはずの上海市場は、なぜか下がりませんでした。

もしかしたらノーダメージを装う中国政策当局のPKOが入っているのかもしれませんが、これも憶測です。

 

衆人合議でない不自然な投資家がいる市場では、テクニカルはうまく機能してくれません。

日本株も日銀ETFによって日経平均の波形は崩れており、TOPIXを見たほうが実態を反映しています。

今回のファーウェイ・ショックも、実態を見るのであれば、仕掛けの入ってなさそうなDAXを見たほうがいいと思います。

DAXは1月以降、坦々と安値を切り下げています。週末の株価もほとんど戻さず終了しました。

来週以降、全員が同じ情報を得て衆人合議のマーケットになりますが、日本株も底割れしないで済むとは考えにくい状況だと思います。

 

震源地アメリカでは12/1の米中首脳会談後に株価が高騰。

12/3のNYダウは25980-25670となっています。

中国は会談後に「関税全廃も協議していく」と発言。

中国当局も、12/3に買った人も、騙されたことになります。

 

12/3の値段帯に戻るには、見通しがもとに戻ること。

具体的には中国がアメリカの条件をすべて呑み、CFOが釈放され、製造2025と覇権の夢を諦め、米中関税が全廃される見通しにならない限り、この25670を奪回するのは難しいのではないかと思います。

12/3の値段帯を最大リスクとして、坦々と売っていくのがよさそうです。

 

事件が広がりを見せるかどうかまだわかりませんが、とりあえず表題は「ファーウェイ・ショック1」にしておきます。

 

 

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