〔アングル〕9月の日銀追加緩和、割れる市場予想 見送りなら円高リスクも

[東京 16日 ロイター] - 日銀が「総括的な検証」の公表と同時に追加緩和を行うか、市場では依然として見方が割れている。金利重視の手法に移行しそうだという予想は広がりつつあるものの、経済や市場が比較的安定しているなかで、いま実施する必要はないとの指摘も多い。ただ、事前の観測報道が相次ぐ中で、緩和への期待感もある程度高まっているため、見送りなら円高が進むリスクもあるという。

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1BS15Q

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来週の日銀金融政策決定会合で、いよいよ日銀の"総括"が明らかになります。
何度も"異次元緩和"で"バズーカ"を打ちながら結果の出なかったことに対して、日銀がどのような総括をするのか注目されます。

まずは発端となった7/29日銀金融政策決定会合後の黒田さんの会見です。

http://channel.nikkei.co.jp/businessn/160729boj/ 16分過ぎから

ここで初めて"総括"という言葉が出てきました。
寝耳に水の会見会場では、この言葉の意味について質問が飛び交います。

technoteはリアルタイムで会見を見ていましたが、カメラの角度の関係もあるのかもしれませんが、これまでの黒田さんの会見と違い、不敵な笑みはなく、"総括"も周りの委員からの声であって黒田さんの本意ではないように見受けられました。

実際に2%のインフレ目標には大きく届かず、バズーカを打つほどに市場のインフレ期待は縮小してきています。

BEI201609

http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata05.html

おそらく複数の委員から異次元緩和の効果に疑問が付され、黒田さんや緩和賛成派の委員も"総括"検証を受け入れざるを得なかったんじゃないかと思います。
1か月前に三菱東京UFJ銀行がプライマリーディーラー資格を返上したことも影響しているかもしれません。

しかし"総括"検証の結果、「異次元緩和に効果がなかった」という結論が出てくることは絶対にありません。

そんなことになれば、これまでの4年間はなんだったんだということになります。
安倍政権に大きな打撃となるばかりでなく、マーケットの崩壊になりかねません。
日銀は意地でも、「効果が出ている」データを拾い集め、異次元緩和で未来が開けるという総括を作り出すと思います。

大きな会社に勤めてる人は経験があるのではないかと思いますが、何らかの「事件」でも起きない限り、組織として非を認めることはありません。
しかしその間、どんどん事態は悪化します。
日銀は東芝と同じく、間違いと知りつつも手遅れになるまで、誤った金融政策を押し進めることになるのではないかと思います。


総括後の方向性と市場との乖離

今後の日銀金融政策の方向性については、マイナス金利の深堀などいくつかの案が報道されていますが、ボードメンバーの意見は割れています。
当日の決定会合は紛糾する可能性があり、どうなるかはわかりません。

しかし政府の意向もあり、結局は異次元緩和を推し進めることに変わりはなさそうです。
以下は西村康稔・総裁特別補佐のインタビューです。

──日銀は来週、大規模緩和の総括検証を行うが、マイナス金利を深掘りしていくことは国民の預金金利や金融機関の収益などに悪影響を及ぼしかねないが、どのように考えるか。

「プラス・マイナス両方の面があるが、私はプラス面の方が大きいと思う。ひとつは社債でも超低金利で調達でき、企業の設備投資を下支えしている。もうひとつは住宅ローンの借り換えが多く、負担が減ればその分消費に回ったり、住宅購入ローンを新たに組むこともある」

「マイナス面は金融機関にとって収益減となっている点だが、短期的にはそうなっても、長い目でみれば超低金利により消費や投資で資金需要が増えれば、プラス面も出てくる」

「預金金利にマイナス金利は適用しないと日銀も言っており、適切に判断してやるだろう」

http://jp.reuters.com/article/japan-economy-nishimura-idJPKCN11M0JW

どこまで本音を話しているのかはわかりませんが、現実が見えていないように思えます。

>ひとつは社債でも超低金利で調達でき、企業の設備投資を下支えしている。
→ゼロ金利がマイナス0.1、マイナス0.2になったからと言って、企業が設備投資を増やすだろうか?
設備投資は市場の需要を見て行うものであり、マイナス金利になったから生産ラインを倍増させようという企業経営者はいないと思います。
マイナス金利を深堀しても、これまで通り、設備投資が増えるとは思えません。
また、下支えであればゼロをマイナスにする意味もないと思います。

>もうひとつは住宅ローンの借り換えが多く、負担が減ればその分消費に回ったり、住宅購入ローンを新たに組むこともある。
→負担が減ってもこれまで通り消費に回らず、貯蓄に回り銀行の負担が増えると思います。
消費は人口が減少する中でもずっと堅調であり、これ以上増える見込みはありません。
住宅も2軒の家に同時に住むことはなく、購入がこれ以上増えることもありません。
ゼロ金利下で正社員じゃなくても住宅が購入できる世の中で、金利をマイナスに下げたら購入が増えると考えるのは適切ではないと思います。
また、投資用物件が増えれば家賃の下押し圧力となり、デフレにつながります。

金融緩和派・リフレ派は需要が無限と思い込んでいるようですが、ゼロ金利下で需要も雇用も既に最大の状態であることを理解していないのだと思います。

日銀総括より先に、一般企業による異次元緩和の総括(アンケート調査)が出ています。

surveyBOJ0916

http://jp.reuters.com/article/reuters-poll-sep-idJPKCN11L2XS

今後ますます、日銀の方向性と市場経済の実態は乖離していくでしょう。
そして最後は、日銀の意思によらず、市場によって"総括"されると思います。

今後も日銀金融政策決定会合で株価が跳ね上がったところは、ついていかない方が賢明じゃないかなと予想しています。

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