日本ではほとんどニュースを見かけませんが、このところ著名投資家から米株・債券に弱気の発言が相次いでいます。

'Sell everything,' DoubleLine's Gundlach says

Jeffrey Gundlach, the chief executive of DoubleLine Capital, said on Friday that many asset classes look frothy and his firm continues to hold gold, a traditional safe-haven, along with gold miner stocks.

Noting the recent run-up in the benchmark Standard & Poor's 500 index while economic growth remains weak and corporate earnings are stagnant, Gundlach said stock investors have entered a “world of uber complacency.”

The S&P 500 on Friday touched an all-time high of 2,177.09, while the government reported that U.S. gross domestic product in the second quarter grew at a meager 1.2 percent rate.

“The artist Christopher Wool has a word painting, 'Sell the house, sell the car, sell the kids.' That’s exactly how I feel – sell everything. Nothing here looks good,” Gundlach said in a telephone interview. "The stock markets should be down massively but investors seem to have been hypnotized that nothing can go wrong."

http://www.reuters.com/article/us-funds-doubleline-gundlach-idUSKCN1092BO

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上記はジェフリー・ガンドラック氏の7月後半のインタビューですが、他にも債券王ビル・グロス氏、ジョージ・ソロス氏、スタンリー・ドラッケンミラー氏、カール・アイカーン氏、ブラックロックのローレンス・フィンク氏なども弱気の見通しを示しています。

technoteも、ファンダメンタルズからはこれ以上買えないところまで来てるなあという気がしています。
しかし今すぐ崩壊するかというと、全く予想がつきません。
債券はバブルですが、株はバブルに差し掛かる手前あたりに位置しています。

通常は市場に任せていれば、お金の量は経済全体の需要によって自然と決まります。
時にそれを超えてお金が増えすぎるとバブルになり、はじけます。
しかし今回は日米欧の中央銀行が経済全体の需要をはるかに超えるお金を押し出してしまいました。
バブルを作っているのは中央銀行なのです。

中央銀行が行き過ぎた金融緩和を行っている間、目立った問題は起きません。というより、問題が先送りされます。
構造的に問題のある企業に低利で融資が継続されすが、その間問題は膨らみ続けます。

例えばシャープは世界金融危機のころ、工場拡張に打って出ました。
亀山工場に続いて堺工場を作り、国内需要の2倍の液晶生産力を備えてしまいました。
当然液晶は値崩れし、シャープは作れば作るほど赤字になります。しかし作らないと工場が遊休資産となり、投資が回収できません。
つまり、詰んでいます。原因は需要以上の生産力を備えてしまったことであり、作ろうが作るまいが赤字が膨らみます。こういう構造的に問題を抱えた企業に追い貸しして延命しても、赤字が膨らむだけで問題は解決しません。

日本はバブル崩壊以降、長期間不良債権問題に悩まされ、多くの企業が消えていきました。
消えれば問題は一応解消します。
しかし欧州の場合、2009年の世界金融危機以降、収支構造に問題のある企業に低利融資を継続するだけで、問題をさらに大きくして企業は生き残っており、不良債権処理はほとんど進んでいません。
ドイツやイタリアの銀行の株価が、先日、世界金融危機の安値を割り込んだのも、そういったことが背景にあります。

そしてその低利で危険度の高い融資を正当化するため、当時大量破壊兵器と呼ばれたクレジット・デフォルト・スワップの残高は膨らみ続けています。
リーマンショック当時世界全体で60兆ドルと言われたCDS残高は、現在、ドイツ銀行1行で75兆ドルを保有するまでになりました。世界の総GDPが65兆ドルくらいですから、それを超える額です。
欧州に関しては、2009年の金融危機は何も解決しておらず、問題を今日まで抱え続けています。

繰り返しになりますが、構造問題は金融緩和では解決しません。赤字構造の企業は、その収支構造が変わらない限り、時間が経つほど問題は膨れ上がります。
一方で、中央銀行が威信をかけて追い貸し体制を続けます。債券も買うので暴落のしようがありません。
債券バブルも、実力以上を追い求め、出口なき金融緩和に突き進む中央銀行の構造的な問題だと言えます。

この二つの矛盾した構造問題がどんな結末を迎えるのか?
何しろ初めてのことなので、ちょっと見当が付きません。


デフレか、バブルか?


構造問題を抱えた企業が生き残れば、社会全体の需要を上回る生産物が押し出されます。
量的緩和では供給>需要が拡大するので、人々がお金に価値があると思う限り、インフレにはなりません。

量的緩和でインフレになるのは中央銀行の無軌道さに人々が恐怖を抱いたとき。
人々がお金に価値がなくなると恐怖した時です。

つまり人々が正気を保つなら、デフレで株価は押しつぶされます。
起こるとすればハイパーなので、通常経験するような株バブルは起きそうにありません。
実際に日本が2001-2006年に世界に先駆けて行っていたゼロ金利・量的緩和では、ファンダメンタルズからかけ離れたバブルは起きませんでした。

一方で、貨幣経済始まって以来の大実験である今回の日米欧のマイナス金利や量的緩和が、バブルも起きずに縮むのかというと、それもちょっと違和感があります。
千年に一度の狂った金融緩和の最後には、理屈を超えて、頭がおかしくなりそうなバブルが来るんじゃないか?
そんな気がしなくもありません。


日本株の位置

日本株がまだ上がると考える人の理由の中には、日本株が欧米に比べて出遅れているというものがあります。
アメリカが史上最高値を更新し、ドイツもイギリスも年初来高値を更新している。
日本株も最低限、そこまではいくはず。というものです。

しかし円建てで考えればそうなのですが、ドル建てで考えると様子が違います。

N225USD_2Y

http://market.newsln.jp/apps/market/quotes?r=2y&c=1010&lang=ja&t=large

上記はドル建て日経平均の2年チャートです。
年初来高値はとっくに更新しており、昨年の高値をうかがう所まで来ています。
米株と遜色ありません。

株価の天井は特にイベントもなく訪れるので、実際にどうなるのかはわかりません。
8月はFOMCもなく、月末にイエレンさんのジャクソンホールの講演があるくらいです。

しかし理屈で考えれば、おそらくこのあたりまで。
デフレ方向に行くのであれば、NYダウは18900まで上がればいいところじゃないかなあと思います。
日経平均も今の為替だと17000に乗せればいいところで、それ以上は難しいような気がします。

バブルに向かうのか、天井か?
大きな分岐点に来ていると思います。

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