焦点:政府・日銀、ヘリマネ「検討せず」 市場に「広義」の思惑

[東京 15日 ロイター] - 政府・日銀は、市場の関心が高まっているヘリコプターマネーの導入について、検討していないと明確に否定している。永久国債の発行や日銀の国債直接引き受けなど極端な政策に踏み出せば、かえって日本経済が混乱しかねないとみているためだ。ただ、市場の一部では、積極財政と金融緩和の組み合わせを長期間実施する「広義」のヘリマネはあり得るとの声もあり、政府・日銀の対応に注目が集まっている。

http://jp.reuters.com/article/helicopter-money-market-idJPKCN0ZV0EB

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前週から一転、ここ一週間は右肩上がりの相場となりました。
BREXITのショックが落ち着いてきたこと、参議院選挙が与党の勝利に終わったこともありますが、それ以上に材料となっていたのがバーナンキ前FRB議長が来日し、11日に日銀・12日に官邸を相次いで訪れたことです。

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バーナンキさんは"ヘリコプター・ベン"の異名をとり、ヘリコプターマネーの研究で知られていることから、財政ファイナンスを勧めに来たのではないかという思惑が働いたようです。

ヘリコプターマネー、永久債。
なんだか末期的な禁断の手段のようにも思えますが、行き詰った日本財政を復活させることができるのでしょうか?


ヘリコプター・マネー

ヘリコプター・マネーというのはそのままの意味で、ヘリコプターからおカネをばらまくような行為を言います。
ばら撒き方やお金の作り方でいろいろバリエーションがあるようですが、今回標準的に考えられているのは日銀に国債を引き受けさせて、そのお金で経済対策を行うという方法です。

ちなみに国債を日銀に引き受けさせる方法ですが、直接引き受けさせることは財政法で禁じられています。

財政法
第四条  国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
○2  前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。
○3  第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。
第五条  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。


財政法第五条に「公債は日銀に引き受けさせてはならない」と規定されています。
まあ国会の議決があればいいのですが、そんなことをしなくても、「日銀が買い取る予定で」民間銀行に新発国債を引き受けさせ、民間銀行が引き受けた直後にその国債を日銀が買い取ればいいのです。
今やってる日銀トレードと何も変わりませんね。
量的金融緩和が実質的な財政ファイナンスと言われる所以です。

財政ファイナンスを行うとハイパーインフレになるなどの弊害が発生すると言われています。
例えば今回の経済対策10兆円を実質的に日銀に引き受けさせた上で、全額を商品券にして全国民にばら撒いた場合どうなるのでしょうか?

結論から言うと、デフレになると思います。

実際のところ日本はすでに長い間、「実質的な財政ファイナンス」と呼ばれるものをやっています。
それは年金です。

日本では年金保険料を十分に集めずに、国債を発行して年金を支払っています。
子供手当も商品券もそうですが、財源を用意せずに行うこれらのばら撒きはすべて性質は同じであり、経済をデフレに導きます。

債券は、「誰から借りたか?」というのは本質ではありません。
債券は自由に売買でき、債権者は変わることができます。
「国債の発行時に民間金融機関が引き受け、次の瞬間日銀が買う」行為と、「初めから日銀が国債を引き受ける」行為に本質的な違いはありません。
なぜ財政法5条がそれを禁じているかと言えば、「歯止めが利かなくなる」という部分であり、誰から借りるかは債券の本質ではないのです。
つまり、日銀の直接引き受けだからインフレになるわけではなく、歯止めが利かなくなるから(ハイパー)インフレになるわけであり、直接引き受けか間接引き受けかによってインフレに導く力が変わるわけではありません。

それに対して、債務者は変わることができません。あたりまえですが。
国債の債務者とは国であり、国は税金で運営しているため、債務者は国民になります。

こちらは本質的なところであり、国債というのは、国民が強制ローンを組まされるようなものです。
強制ローンを組まされて年金だとか商品券だとか現金を渡されても、使うわけがありません。
期限付きの商品券などは使うでしょうが、その分自分のお金で買うものを減らします。
消費はいつも一定であり、余計なものを買うことはありません。

「国債の債務者は国民」
これをきちんと理解できるかどうかで、見通しが変わってくると思います。
年金という巨額のばら撒きを長年続けているところに、単発で10兆円のヘリコプターマネーをやったところで、何も変わりません。
国民が借金を背負うこのやり方では、今まで通りデフレになると思います。

なぜデフレになるかというと、お金が多すぎるからです。
こう言うとリフレ論者は反発するでしょうが、インフレを考える際には、ヒト・モノ・カネの何が余剰なのかを見極める必要があります。
先進国ではヒト(需要)に対してモノ(供給)が大きい状態にあります。
そうでなければ自国需要を満たして途上国に商品を供給することはできません。

そしてそこにカネを押し出すと、潤沢な資金により供給能力はフル活動します。
一方需要は変わりません。必要以上のものは買わないので、余剰のお金は使わずにおいておきます。
そして供給>需要の差が拡大し、デフレとなります。

お金を増やせばインフレになるというのは、社会資本が未整備であった時代の経済学。あるいは人口が増加を続けていて、時間がたてば需要が供給を追い越してしまう人口ボーナス期の経済学であり、現在の日本には当てはまらないと思います。


永久債

報道によれば、4/1にバーナンキさんは本田元参与に対して、市場性のない永久債のアイデアを話したと言われています。
市場性のない永久債を日銀が引き受け、国は借りっぱなしにする。償還がないため実質的な債務が減少するというアイデアです。
これがもしうまくいった場合、どうなるのでしょうか?

うまくいった場合というのは、財政が今の状態で維持していけるという意味です。
日本は今まで通りプライマリーバランスを達成することなく、借金を重ねてカネを押し出し続け、デフレの中人口は減り続けます。
日本の人口は2100年ごろ、5000万人まで減少する可能性があります。
そうすると人口5000万、GDP200兆、税収20兆、累積債務5000兆のような社会になってしまうことになります。
そんな社会が実現するはずがありません。
その前に財政維持に現実味がなくなり、ギブアップすることになります。

また、日銀が市場性のない永久債を保有することは、金融政策上のリスクを抱えることになります。
日本売りが起こったとき、キャピタルフライトが起こったとき、対抗手段として日銀は金融引き締めを行う必要がありますが、永久債を市場に放つことができないため、引き締めが弱くなります。

実質的な債務が減少するということですが、どれほど国民が安心するかも疑問です。
むしろこのあやしい方法を取り始めたことで、財政維持にますます疑念が高まることになるでしょう。
永久債は弊害が大きく、メリットのほとんどない方法だと思います。


イカサマは通用しない


バーナンキさんの人物評には「誠実だが現実が見えていない」というものがあります。
リフレ理論・貨幣数量説は需要と供給を無視し、貨幣とモノの量でインフレデフレが決まるという極端な理論であり、まさに現実が見えていない理論だと思います。

管理通貨制度において、貨幣そのものに本来的な価値はありません。
貨幣は、通貨管理当局が適切にその量をコントロールするであろうという人々の信用から、その価値を保っています。
人々が貨幣に価値があると信じている限り、供給>需要の状態でインフレになることはありません。
人々が貨幣に価値があると信じなくなったとき、ハイパーインフレが起こります。

この二つは二律背反であり、ほかの選択肢は起こりえません。
つまりバーナンキの背理法が示すインフレとはハイパーインフレのことであり、マイルドインフレで落ち着くことはないのです。

古来から通貨を無軌道に増やすとハイパーインフレになることは、誰でも知っています。
そこに敢然と挑戦し、通貨の価値の安定という本来の業務を放棄し、通貨価値を故意に棄損してマイルドインフレを作り出そうという試みは、愚かな行為だと思います。

そんなことが可能であれば、好き放題借金して無軌道に財政運営していれば、幸せなマイルドインフレが訪れて経済発展することになります。
経済規模など無視して、5000兆でも1京円でも借金していいかというと、そうはいきません。
日本の場合、借金の額は身の丈をとうに越えています。

管理通貨制度で本来的な価値を持たない貨幣を増やそうが減らそうが、何かが起こるはずがありません。
お金は相対的に価値を変えるだけで、借り方にとっても貸方にとっても同じように働きます。
借り過ぎたからといって後付けでお金の量を増やしてインフレにして借金を減らそうとしても、思うように都合のいいインフレにはなってくれません。
使われないお金は存在しないのと同じ。無視されてしまいます。
経済規模を超えたお金を押し出しても、都合のいい効果は示現しません。
金融政策はすべて偽薬であり、どんなイカサマも本質的な解決に導いてくれることはないのです。


株は上がるのか?

最後に株価ですが、これは為替陣がどのくらい騙されてくれるかによると思います。
アベノミクス・量的緩和は誤った経済理論を採用したためもともと失敗する運命にあるものでしたが、為替が期待を伴って3年にわたって上昇したため、その間は為替の恩恵により日本企業には現実に利益が発生しました。

今回の経済対策10兆円がすべて企業にわたったとして、どのくらいの押し上げ効果があるのか?
上場企業時価総額は約500兆ですが、既に平均株価は10%上昇し、50兆程度かさ上げされています。
10兆のインプットで50兆のかさ上げは行きすぎです。

あとは為替がどのくらい上昇してくれるのか?
今回のヘリマネが実現したとしても、実際はデフレ効果しかありません。
それをインフレ効果だと、再び為替が騙されてくれるかどうか?
マイナス金利が2-3日で見破られたことからすると、あまり長続きはしないんじゃないかなという気がします。

個人的にはポケモン効果の方が長そうな気がします笑
海外ニュースを聞いてる人は、ここ数日朝から晩までPOKEMON!POKEMON!言ってるのを知ってると思います。
一時期RPGが一世を風靡したように、GPSを使った宝探しゲームは、新しいジャンルとして定着するかもしれません。

パズドラもなんだかんだで3年近く持ったし(株価のピークは1年程度)、POKEMONGOもそれくらい持つかもしれません。
そうするとオリンピックで来日した外人が、日本中でご当地ポケモンを探し回る・・?
夢は広がります笑

technoteはほとんどゲームをやらないので、まるっきり見当違いかもしれません。
投資はご自身で判断してくださいね。


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