英国EU離脱で市場は大荒れ、キャメロン首相「辞任の意向」


[ロンドン 24日 ロイター] - 英国で23日に行われた欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票は、開票が100%終了した時点の得票率が、離脱派が約52%、残留派が約48%となり、離脱派の勝利に終わった。英国の先行き不透明感が強まり、第二次世界大戦後の欧州統合の動きにブレーキがかかった。

http://jp.reuters.com/article/britain-eu-wrapup-idJPKCN0Z92P0

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歴史的な一日となりました。
EU離脱を巡るイギリスの国民投票REFERENDUMは、離脱BREXIT52%・残留BREMAIN48%となり、僅差で離脱が決まりました。

brexit

投票が締め切られる日本時間午前6時まで楽観ムードが漂い、ここ一週間はほぼ残留を織り込む形で世界中の株価が上昇。
そして投票締め切りと同時に発表された出口調査でも、残留優位の情勢でした。

しかし実際に開票が開始されると、離脱派が残留派を上回る地区が相次ぎました。
日本株も当初は上昇で始まりましたが、離脱派のリードが縮まらないことから10時前から暴落の様相となり、途中残留派が盛り返したことで一時的に回復したもののなかなか残留優位の情勢にはならず、最終的に離脱が決まると大暴落のまま取引を終えました。

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一時8%を超える大幅下落。
史上8番目の下落幅となり、2/12の安値を割り込んでしまいました。

地域ごとの結果を見ると、地域によってきれいに旗色が分かれていることが伺えます。

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http://www.telegraph.co.uk/news/2016/06/23/leave-or-remain-eu-referendum-results-and-live-maps/

スコットランド・アイルランドは残留支持ですが、伝統的イギリス?のウェールズ・イングランドはEUを歓迎していない様子が伺えます。
スコットランド・アイルランドは歴史的にイギリスの支配に納得していない部分があり、イギリス連合王国として離脱するよりはEUに残りたかったのでしょう。
それに対してスコットランド・アイルランドを飲み込み、世界に領土を広げ、それを縮小してきた旧イングランド王国の人々は、異文化との統合がいかに難しいかを知っています。
何度も分裂騒動を経験してきたイングランド・ウェールズの人々は、EUや移民と付き合うのはもううんざりだったのかもしれません。
そして大都市ロンドンは地方出身者や金融街の人々、世界と交易する人々が集まり、EUにとどまった方が有利と考える人が多かったようですが、イギリス全体としては離脱派が僅差で勝利を手にしました。

事前予測では10%程度態度を保留している人がいて、その人たちは直前でも態度を決められない人なので、離脱などという大それた選択は結局しないだろうという意見が多かったのですが、technoteはそれにはちょっと違和感を感じていました。
離脱派や残留派がそれぞれステッカーや風船をつけて街を歩き、いたるところで小競り合いが起きている。
移民系とわかる人には、すれ違いざまに罵声が飛んでくる。
そんな雰囲気の中で、簡単に自分の意見を正直に言える人はいないんじゃないか?
むしろ態度を保留している人の中には、「レイシストに見られると嫌なので大きな声じゃ言えないが、俺は離脱した方がいいと思ってる」という人が結構いるんじゃないか?
なんとなくそんな風に思っていました。

そして当日、日本市場が開いて開票速報を見ながら、次々と離脱派が票を伸ばしていくのを見て、これはまずいなと思いました。
残留となった場合でも日経平均は25日平均線を超えたあたりで下落に転じるだろうと予想していたのですが、届きそうにないため早めに売ることにしました。
イギリスの国民性などわからない部分は、イギリスの事情をよく知る友人達から助言をもらいました。感謝しています。

そしてこの後どうなるのか?

国民投票翌日のイギリス株価は-9%近い下落の後、-3%程度まで戻して終了しました。

FTSE20160624

一方ドイツ株は-10%を超える下落の後、-7%付近まで戻して終了しました。
DAX20160624


ユーロは他通貨に対して下落し、ポンドはユーロに対してもさらに下落しました。
EU離脱で影響を受ける外国資本がイギリスから撤退するため、ポンド売りになる。
ユーロは域内2位のイギリスが抜けることで売られる。
ユーロ・ポンドとも、為替はしばらく戻らないかもしれません。

しかしイギリス企業はチャンスです。
今まで同様これからもEU仕様の製品を作り、2年程度EUに留まります。
為替だけ下落したことにより、イギリス製品はEUやその他の地域でシェアを拡大するでしょう。
この2年間は逆に稼ぎ時です。

ドイツはEU内ではイギリス製品にシェアを奪われますが、域外ではユーロ下落によりシェアを伸ばしそうです。

ショックで大きく売られたものの、イギリス・ドイツの株価が戻ったのはこういう理由からでしょう。

以前「2016/6/3 アメリカが完全雇用に到達―先進国経済はフルスピード」で書きましたが、異常低金利を長期間続けたため、現在の先進国経済はどこも伸びしろのない状態になっており、パイの奪い合いになります。
奪い合いの中為替が大きく変動するため、アメリカや日本はシェアを奪われる立場になります。
今回のイギリスの離脱で最も影響を受けるのは、実は日本かもしれません。

イギリスやドイツは実のところ、通貨が多少下落してくれるのは交易条件の改善につながるので、本音では協調介入は望まないかもしれません。
日本はイギリスのためではなく自国のために介入したいところですが、イギリスが求めなければイギリスを助けるためという大義名分を失います。
イギリスのEU離脱確定後にG7は緊急電話会談を行い、「市場動向を注視していく」と共同声明を出しましたが、この土日にはこれ以上の動きは出ないかもしれません。

さらに目線を長期的な方向に移すと、イギリス・EUとも分裂の危機が訪れるかもしれません。
特にEC時代から四十数年続いてきた欧州統合の動きは、方向修正を迫られそうです。

もともと経済状況の違う国で同一通貨を導入するのは無理があります。
ユーロはユーロ圏の平均値の強さとなるため、ドイツにとっては割安、ギリシャにとっては割高となります。
下位国は上位国に雇用を奪われることになり、ユーロ圏の失業率は基本的に経済力の順番に並びます。

euJobless

ユーロ体制を続けたいのなら、ドイツはギリシャを同一国とみなして、無制限にギリシャからの出稼ぎを受け入れ、地方交付税交付金のようにギリシャにお金をあげ続けなければなりません。
そうしないとギリシャは何度でも破綻します。

ギリシャ支援が嫌なら、ユーロ体制は崩壊するしかありません。
分け与えず吸い取るだけというのは不可能なのです。

マイナス金利は一部デフォルト。
ユーロ圏のマイナス金利は、ギリシャ国債のデフォルトをユーロ諸国で分担しあうという意味合いがあります。
しかしお金に価値があると人々が考える限り、マイナス金利には整合性がありません。
マイナス金利を長期間続けるのは無理があります。

体制を維持し、ギリシャ人をドイツ国民の税金で養い続けるのか?
それとも体制を崩壊させるのか?

マイナス金利やイギリスの離脱は、現行のユーロ体制の維持が限界にきていることを意味しているように思えます。

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