[ワシントン 3日 ロイター] - 米労働省が発表した5月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が3万8000人増となり、2010年9月以来の小幅な伸びとなった。予想の16万4000人増も大幅に下回った。
http://jp.reuters.com/article/us-job-data-may-idJPKCN0YP1NW
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アメリカの雇用統計が発表されました。
失業率は4.7%で2007年11月以来の低水準。
雇用者数の伸びも極端に鈍化し、完全雇用の水準に到達したものと思われます。
通常、世界は地域ごとに経済状況は異なるのですが、日米欧とも極端な金融緩和を長期間続けたために、先進国経済がそろって全速力という珍しい状況が起こっている模様です。
日本はもともと完全雇用、そしてアメリカが完全雇用に到達。
欧州の失業率は10%程度と高いのですが、中身を見ると様子が違います。
ユーロ圏の失業率
ギリシャの25%を筆頭に高い失業率が並んでいますが、ドイツは4%半ばでほぼ完全雇用です。
ユーロ圏は特殊であり、各国の経済事情にかかわらず同一通貨ユーロが使われています。
経済基盤の弱い地域は割高な通貨を使うことになり、ドイツに雇用を奪われる運命にあります。
そして職のない地域の人は、ドイツに自由に出稼ぎに行くことはできません。
日本でもそうですが、農閑期の地方の人が出稼ぎに行けなかったり、埼玉県の人が東京への通勤を禁じられたらどうなるのか?
インフラの整った東京から商品だけ流れ込んできて、地方には十分な職がなくなります。
地方交付税などによる割り戻しも、ギリシャの人にはありません。
そしてその格差は、この制度を続ければ続けるほど広がります。
ユーロ圏の失業率は2011年レベルにしか戻っていませんが、ドイツが完全雇用に到達しており、供給が需要を上回るデフレ状態であることを考えると、ユーロ圏の失業率がここから大きく改善するとは思えません。
ユーロ圏も実質的にこれ以上は伸びない、完全雇用のような状態だと思います。
日米欧ともゼロ金利・完全雇用。
マクロ経済ではこれ以上、伸びしろはありません。
今の状態がフルスピードというのは感覚的に納得しづらいかもしれませんが、それはデフレのために過熱感を感じないからだと思います。
そもそも先進国の需要と供給は、供給能力の方がはるかに大きいのです。
そうでなければ人々は耐用年数の過ぎた商品を使い続けることになり、途上国に商品を供給することもできません。
全員が職を得るということはその大きな供給能力をフル活用することであり、全員が商品を手に入れ、全力の需要をさらに上回る生産物が押し出されます。
商店には欠品などあり得ず、モノがあふれます。
感覚的な過熱感はありませんが、今の状態が先進国経済のフルスロットルの状態ではないかと思います。
先進各国の株価チャートも、天井感の強いものとなっています。
日本
アメリカのみトレンドラインを少し上抜け、日本とドイツはトレンドラインを下回っています。
アメリカの利上げ後ろ倒しにより予定が狂い、為替がドル安に振れた分、日本と欧州が割を食っている様子が伺えます。
つまりここから先は為替による奪い合い。
日米欧がともに伸びる拡大経済ではなく、パイの奪い合いになりそうです。
先進国の需要はすべて満たしてしまっているので、理屈から言えばこれ以上の企業業績の伸びは、日米欧ともにありません。
途上国はまだ伸びますが、経済規模が小さいため、先進国株価をここから押し上げるのはちょっと難しそうです。
これ以上株価が伸びることがあればそれは企業業績を伴わないバブルであり、注意する必要があります。
バブルは来るのか?ですが、少なくとも日本では来ないような気がします。
2007年の高値でもPERはそれほど高くなく、業績の裏打ちの伴わないほどの水準には伸びませんでした。
デフレで閉塞感のある状況では、株のバブルは起こらないのかもしれません。
アメリカの利上げは緩慢なので景気が腰折れすることも考えにくいのですが、現状は先進各国が量的緩和で無理に作ったフルスピードの経済であり、供給過剰で生産物は滞留し、在庫はたまっていきます。
アップルの減産のような状況はこれから各方面で発生し、モノ余りの状況が続くものと思われます。
先進国の株価を買い目線で見るのは、かなり難しい状況になってきたように思います。