首相がサミットでデータ提示、リーマン級下落と主張 一部で異論

[伊勢/志摩 26日 ロイター] - 安倍晋三首相は26日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の世界経済を討議するセッションで、コモディティ価格が「2014年以降55%下落しており、リーマン・ショック前後と同様」とするデータを各国に提示した。

http://jp.reuters.com/article/g7-abe-summit-idJPKCN0YH0XX

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リーマンショック前?
本当にそうなのでしょうか?

WTI10Y

上記はWTIの10年チャートです。
確かに洞爺湖サミットの頃に145ドルの高値を付け、リーマンショック後に30ドル付近まで下落しています。
そして今回も110ドルから20ドル台まで下落。これを需要の弱さという考え方はできますが、ちょっと違和感があります。

リーマンショックの経緯は、欧米で住宅バブルが膨らみ、サブプライムなどの隠れ不良債権が売られ、実体経済に悪影響を及ぼし始めても原油の高騰が止まらず、その原油の高騰が米経済に最後のとどめを刺したという流れです。
原油の高騰は車社会のアメリカの家計を圧迫しました。
個人消費は不況であっても安定していますが、最後の砦であった世界最大のアメリカ家計が原油高騰によって崩壊したためとどめを刺されたのです。

しかし今回は流れが違います。
原油の下落は台頭してきたシェールオイルに対抗するためにアラブ諸国が増産を続けたのが原因です。
原油安によりシェール企業とアラブ側が共倒れとなり、オイルマネーが中国から引き上げざるを得なくなり、チャイナショックが起こりました。
実体経済としては良好であり、アメリカは利上げをしようとしていて、NYダウは高値圏で揉み合いを続けています。

ウォールストリートジャーナルでも、安倍首相の発言は、消費税を巡る日本の有権者に向けた発言だろうと一蹴しています。
http://www.wsj.com/articles/g-7-summit-kicks-off-in-japan-1464224610

一方でおかしなところが全くないかと言えば、そうでもありません。
中国とユーロ周辺国では住宅バブルが起こっています。
アメリカもバブルではありませんが、住宅価格の高騰が勢いを増しています。

株価でおかしいのは、中国を除けば日本だけですね。
日本は高値からほぼ30%下落しました。
一連の経済イベント「平成バブル」「ITバブル」「小泉劇場」等々の途中で、30%下落したことはありません。
つまり途中ではなく、日本株に関して言えば、既にピークアウトしている可能性が高そうです。

2008年の金融危機と順番は違いますが、お互いに影響を及ぼし合ってスパイラルになってしまう可能性も否定はできません。
おかしな予兆がないか、今後も注意深く経済指標を見ていく必要があります。
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